奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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7.ただの共同生活ですからこれは!

7-3

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「ねみぃ……」

私の横で大きな欠伸をするあずき先輩。学校があるにも関わらず朝帰りしてるんだから、自業自得だ。
いつにも増して気だるそうなその姿は、物憂げな色気を放っているけど本人はただただ眠くて不機嫌なだけだ。

ていうか、変な誤解を生みたくないからできれば一緒に登下校したくないんだけど。

「ちよこちゃんおはよー」

ふにゃっとした笑みを浮かべながら、栗生先輩が手を振って歩いてきた。
あれ? 私栗生先輩に名前教えたっけ?

「亜主樹ー、そろそろ店の表顔出したら? 皆寂しがってるよ?」
「皆って誰」
「おれとか」
「今会ってんじゃん」
「アカネとか」
「あれが寂しがるかよ」

眉尻を下げて話しかける栗生先輩に、寝不足で機嫌が悪いらしいあずき先輩はだいぶ素っ気ない。

「あとお前の舎弟たちとか」
「いたっけ。」
「あとは女の子たち?」
「知らねェ」

まったく会話する気のないあずき先輩から、私に焦点を変える栗生先輩。

「ちよこちゃんはお店来ないの?」
「何のですか?」
「亜主樹が経営してるクラブ。」

…………は?

あずき先輩が? 経営してる?

「どういう事ですか?」
「そのまんまの意味だよ」

詰めよれば、欠伸をしながら面倒臭そうに言う先輩。そういう事じゃない。私が聞きたいのは、そういう事じゃない。

「私にバイトのことで脅しといて、自分はお店経営してるってどういう事ですか?」
「別に俺が働いてるわけじゃねーもん。」

何をしれっと。

「卑怯ですよ! 卑怯!! また騙しましたね!?」
「またって何。」
「心当たりが無いなんて言わせませんよ!? 一度ならず二度までも!! ほんっっとに最低ですね!!」

怒り心頭の私とだるそうなあずき先輩を見比べて、栗生先輩が困惑している。

「え? 亜主樹何も言ってなかったの?」
「言う必要ある?」
「だっていつも女の子店に連れて来てたじゃん。」

栗生先輩の言葉に、あずき先輩が私を見る。何よ?

「そういう場所とは無縁の人間連れてってどーすんだよ。後々面倒起きたら俺がだるいじゃん。」
「そりゃ、オーナーはまだ亜主樹なんだから責任取るのも亜主樹でしょ。」
「な? 俺がだるいし後でアカネが不利益被るような事も避けたい。氷榁と一悶着あったらさすがに親父も関わってくるしな。」

また、一瞬だけあずき先輩の顔から感情が抜け落ちる。すぐに元の不機嫌を貼り付けたけれど。

「だから千夜子は連れてかない。」
「何のお店なんですか?」

栗生先輩を見上げて尋ねる。

「クラブ聞いたことない?夜に若者が集まって騒いでるとこ。」
「な? お前が行きてぇような場所じゃねーだろ。」
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