奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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7.ただの共同生活ですからこれは!

7-4

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たしかにあずき先輩の言う通りだ。そんな時間があるなら私は勉強するか、睡眠をとりたい。

「でもあずき先輩夜は家にいる方が多いですよね?」
「経営ったって、俺売上の管理とか数字弄るのしかしてねーもん。店自体の管理は弟にさせてるし。」
「先輩のお店なのに?」
「建てたのは俺だけど俺のじゃない。」

あずき先輩が建てたけどあずき先輩のお店じゃない?
頭にハテナを浮かべる私に、栗生先輩が説明してくれる。

「亜主樹が年中反抗期の弟クンのために建てたお店だよ。」

なるほど。だから、お店の管理をしてるのが弟くんなんだ。

「兄弟揃って学生なのによくやりますね……高校生って結構大人なんですね。」
「弟は中学生だけど。」
「中学生に何やらせてるんですか?」

責任が重すぎやしませんか? あずき先輩の考えてる事はやっぱりよく分からない。

「だからまだ俺名義の店なんだって。」
「不思議な兄弟ですねぇ……」
「アカネは中学生感無さすぎるけどねー。」

先輩の弟はアカネくんっていうのか。

「俺だって中学ん時荒れてたし?」
「今も荒れてますよ。」
「これでも大人しくなった方なんですー。」

先輩が私の髪をくしゃくしゃにする。

「ちょっと」
「お前には分かんねぇだろーけどさ、学校とか、普通の社会じゃ自由に生きられねぇ奴もいんだよ。」

そう言って笑った先輩の顔はどこか寂しそうで、でも何か言う前に1年生の方の玄関へと背中を押された。

あずき先輩のことを積極的に知ろうと思ったことはないけど、それでも共同生活……そう、あくまで共同生活をしていれば多少は見えてくるものがある。
なのにあの先輩ときたら、新しいことが分かると余計先輩のことが分からなくなる。得るものが断片的過ぎるってのもあるんだろうけど。

クラスの子が先生の発問に答えるのをぼんやりと聞きながら、あずき先輩のことについて考えていた。

どうして弟くんのためにお店を建てたんだろう。

ふとした時に見せる、あの感情の抜け落ちた表情はなんなんだろう。

目の前に分からないものがあれば知りたくなるのが人間で、不躾に聞けばある程度はあずき先輩でも答えてくれるのかもしれないけど。

考えて、やめた。それを私が知る必要がないから。無闇に踏み込んで、自分と他人との境界線を超えてしまいたくない。









所詮私とあの人との関係は、身体だけのものでしかない。


それ以上にも以下にもなり得ない。したらいけないんだ。
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