婚約破棄することにしたので、私は悪役令嬢になります。

1.

「ロータスをあの女に取られるなんて耐えられないわ。」

「心配するな。アレーナ。この結婚は両家の親同士が勝手に決めたこと。私にあの女への愛情など微塵もない。愛してるのは君だけだ。」

私は婚約者の浮気現場を目撃してしまいました。

さっきから何度もあの女呼ばわりされているのは間違いなく、エミリア・クライフ、私のことです。

そして、アレーナと呼ばれている女と話している男は婚約者のロータス・ダドリー。

私は侯爵令嬢であり、クライフ家唯一の継承者。私以外の子宝に恵まれなかった父は跡取りとして、裕福なダドリー伯爵の令息ロータスとの婚約を進めています。

最初は乗り気でなかった私もロータスと出会ってから二年が経ち、最近ではお互いの家を気兼ねなく出入りできる間柄になったことで、少しずつ気持ちが変わってきたところでの、この仕打ち。

私の抱き始めていた幸せな将来は見事に打ち砕かれました。信じようとしていた人に裏切られたショックと自分の愚かさに涙が止まりません。

ロータスは背が高く、顔立ちも整っていて、そのうえ裕福、女性に人気があることは前から知っていました。そんなこともあり、結婚には不安もありましたが、女性に対する扱いに慣れているのか、私に対しても常に優しく接してくれていました。

今思えば、彼の手の上で踊らされていただけだったのね。

どうせ、アレーナとかいう女もそんなところなのでしょう。

私の中での糸は完全に切れてしまいました。
こんな人と結婚なんてしたくない。
そして、この人にも自分の愚かな行いをしっかりと分からせてやりたい。

私は今日、婚約破棄することを決意しました。