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いつもダドリー家まで馬車で送ってくれるのはクライフ家の御者マルセン。
齢五十を過ぎた中老の男性で私が産まれる前からクライフ家に仕えている信頼できる男性です。
私はマルセンにも協力してもらおうと思い、この前、見聞きしたことを包み隠さずマルセンに話したところ、彼は何の疑いもなく信用してくれました。
婚約破棄といっても何の確証もない今の状況では私の我儘になるだけ。クライフ家の面子も潰してしまうことになりますし、そう簡単に応じてくれるわけがありません。
なので、まずは情報収集から。
私が聞き取り担当、マルセンが見張り役として、これからしばらく浮気調査を行うことにしました。
マルセンの話によるとダドリー家の敷地内には正門のほかに二つの裏門があるそうです。
事件現場(例の離れ)は片方の裏門のほうが近い。出入りするとすれば、そこが怪しいんじゃないかとのことでした。
さすがマルセン。仕事が早い。
私も早速ロータスに探りを入れてみることにしました。
「来週は木曜日にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わないよ。事前に連絡さえしてくれれば何も問題ない。」
とは言うものの、少し嫌そうな顔をした瞬間を私は見逃しません。
事前に連絡の部分が若干強調されていたように聞こえたのも、決して気のせいではなかったと思います。
「ダドリー伯爵もご在宅でしょうか?お邪魔する時はご挨拶しておきたいのですが、」
「火曜と木曜は公務で外出していることが多いかな。父に何か用があるなら私から伝えておくよ。」
私は訪問する時にはなるべく伯爵にも一声かけるようにしています。伯爵は恰幅がよく、穏やかで笑顔の絶えない優しい方。
優しいという部分ではロータスも父の性格を受け継いだのかもしれませんが、優しさの意味を履き違えているのは大きな問題です。
「いえいえ、ご挨拶だけですので。何かあれば、まずはロータスさんにご相談しますね。」
木曜日の午後、ダドリー伯爵はやはり公務で不在でした。おそらくロータスは前からそのような頃合いを見計らって同じことを繰り返しているのでしょう。
齢五十を過ぎた中老の男性で私が産まれる前からクライフ家に仕えている信頼できる男性です。
私はマルセンにも協力してもらおうと思い、この前、見聞きしたことを包み隠さずマルセンに話したところ、彼は何の疑いもなく信用してくれました。
婚約破棄といっても何の確証もない今の状況では私の我儘になるだけ。クライフ家の面子も潰してしまうことになりますし、そう簡単に応じてくれるわけがありません。
なので、まずは情報収集から。
私が聞き取り担当、マルセンが見張り役として、これからしばらく浮気調査を行うことにしました。
マルセンの話によるとダドリー家の敷地内には正門のほかに二つの裏門があるそうです。
事件現場(例の離れ)は片方の裏門のほうが近い。出入りするとすれば、そこが怪しいんじゃないかとのことでした。
さすがマルセン。仕事が早い。
私も早速ロータスに探りを入れてみることにしました。
「来週は木曜日にお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わないよ。事前に連絡さえしてくれれば何も問題ない。」
とは言うものの、少し嫌そうな顔をした瞬間を私は見逃しません。
事前に連絡の部分が若干強調されていたように聞こえたのも、決して気のせいではなかったと思います。
「ダドリー伯爵もご在宅でしょうか?お邪魔する時はご挨拶しておきたいのですが、」
「火曜と木曜は公務で外出していることが多いかな。父に何か用があるなら私から伝えておくよ。」
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優しいという部分ではロータスも父の性格を受け継いだのかもしれませんが、優しさの意味を履き違えているのは大きな問題です。
「いえいえ、ご挨拶だけですので。何かあれば、まずはロータスさんにご相談しますね。」
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