婚約破棄することにしたので、私は悪役令嬢になります。

7.

晩餐会から数日後。
私が貴族学校の庭園に置かれたベンチに座り休んでいると、サネット嬢が話しかけてきました。

「エミリアさん！隣座るね。」

「あら、サネットさん！どうぞ。」

晩餐会以来、私とサネットはとても仲が良くなりました。前から悩みであった兄ロータスの女性問題をなんとか改善できるかもしれない、そんな使命感なのか彼女は積極的に協力してくれています。

「この間、言ってたアレーナっていう浮気相手のことなんだけど、、」

サネットは周囲の様子を確認しながら、小声で言います。

「誰だか分かったよ！」

「本当に？！どこの人なの？もしかして有名な名家のご令嬢とか？」

「そんなわけないじゃない。名家のご令嬢がロータスの相手なんかしないわよ。あの子は準男爵ポートマン家の二女。住まいはダドリー家から歩いて三十分くらいのところにあるみたいね。しかも、この学校にいるんだって。エミリアさんがいるのに信じられない！」

アレーナという名前だけでこれほどのことを調べあげるなんて、サネットの情報収集能力には驚かされます。

「そうだったのね。それにしても、どうやって知り合ったのかしら。」

「それは分からないけど、ロータスは昔から誰にでも優しくするから女友達が多いのよ。それに、あの女もどうせダドリー家の財産目当てでしょ。」

確かにダドリー家はこの辺りで一番羽振りの良い名家。それだけでも女性にとっては十分魅力的です。

「有益な情報ありがとう。サネット！お礼にこのラズベリーパイをあげるわ。母が好きで良く作ってくれるの。」

「ホント？晩餐会でも出してほしいなぁ。あんなやつ一緒にやっつけてやろうね！」

私は微笑んで頷きました。

ポートマン家か。こんな近場でそんなことしてるなんて最低。
結婚する前に気づいて本当に良かったわ！

私はすでにロータスへの情は一切なくなり、あの場に居合わせたことを神に感謝していました。