チートの無駄遣い? いいえ、これこそ有効活用です!

白狼 ルラ

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パーティ? 行きませんよ

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「ダニエルをお休みにしておいて正解だった。こうして、のんびりできるもんね」

「そうで、す……あっ! きょっ、今日は、大事な舞踏会じゃないですか!?
 朝早くから準備に時間を取られるから、休んでいいと言われて」
「そう、卒業記念パーティーね。もちろん、私は行かないけど」

ダニエルったら、慌ててベッドから出るのはまだ早いっ! そう簡単には行かせはせぬぞ。だいしゅきホールド発動! これで私の腕の中から逃れられはしまいっ。
あれ? ダニエルのおひげが伸びてジョリジョリする。よし、はむはむしちゃお。

ふむ、不思議な感触だのぅ。あう、この手っては何ですか? そんな軟な防御じゃ私を止められはせぬぞ。ほっぺをふにふに、なでなでされようと、そんな事で……
えっ、その動きはキスをご所望? そうなの? それは、ご期待にお応えせねば!

「んー、ちゅっ!」

ふふふっ。私の扱いを心得ておるな。ダニエル、お主もなかなかやるではないか。
うん、あれ? このままラブタイム突入じゃないの? 真面目な顔しちゃ、めっ!

「本当に参加されないおつもりですか?」
「はぁー。あんな面倒くさそうな集まり、お断り」

もぅ、ダニエルったら。そんな困った顔で心配してないで、ラブラブしようよー。

「ですが、邸にドレスや装飾品などの贈り物もたくさん届けられていましたし、
 エスコートのお誘いを受けられたのではないのですか?」

「ああ、アレねー。本当、どうして奴らは聞く耳を持たないんだか」

貴族の男性は同伴者に自身の瞳や髪と同じ色合いのドレスや宝飾品を贈り、女性はそれを身に付けて参加するとか、財力自慢みたいなアホな伝統があるんだっけ?
KY(空気読まない)キラキラ男子どもにパートナーに誘われたが、全てズバッとキッパリ断った。
それはもう、何の誤解も生まれる余地がない程、歯に衣着せぬ言葉ではっきりと。

そ・れ・な・の・に! 頭の中お花畑なあいつらは問答無用で送り付けてきた。

『保護者の金銭的援助を受けられないのを知っていて、放っては置けない』とか。

うっせぇわ! 余計なお世話だし、どうして私の家庭事情を把握してんのよ!? 男爵家の金なんて、はなっから当てにしてないわっ! それに、あんたらの世話になるような仲でもないし、施しがしたいなら教会や孤児院にしてろや。

エスコートを断ったのに『パーティー会場で待っている』とか『遠慮はいらない。これを身に付けた貴方の姿が見たい』などのメッセージカード付き。

だ・か・ら! 行かねぇーつってんじゃん!?

なんなの? 話が通じないにも程がある。これこそ迷惑行為でしょう!

思い出したらイライラする…… ダニエルのおっぱいで癒されよう。すりすり。
はうぅぅ…… 絶妙な弾力。それに、すーはー…… いい匂いぃ~。好きっ!

よーし、落ち着いた~。おっと、ダニエルが困惑顔。

「気にしなくて大丈夫。一つ残らず婚約者経由で突き返してあげたから」

今頃、どうなっているか。ざまあ味噌漬け! ざまりんクッキー、さっくさく~。

え、何、どうしたの? ダニエルったら何でそんなポカーンとしてるの?
私はただ、してやったりとニヤッと笑っちゃっただけなのに……。変顔だった?

「ダニエル?」
「あ、申し訳ありません。お嬢様の――」
「もーぅ、『エリス』でしょう? それに、さっきから敬語になってるし」

ぶーぶー。ラブラブ中は砕けた口調で、愛おしくて仕方ないって感じで何度も名前を呼んでくれたのに。そんな態度だと、またエッチな悪戯しちゃうぞ~。

「うっ。エリスのそんな表情は初めて見たのに、なぜか既視感があって……」

ああ、なるほどっ! ネタばらしがまだだった。答えが解らずモヤモヤしてる顔をしちゃって。親切な私がその眉間のシワを伸ばして差し上げよう。なでなで。
まあ、変身魔法の使い手は希少だし、『リース』と『エリス』が同一人物だとか、説明されなきゃ分からないだろうなー。さて、どうしようかなぁ……。

エリスとリースが同一人物だという事を①明かす。②隠す。

②の隠すのは無理だな。絶対にどこかでボロを出す自信しかない。

それなら早めに言っちゃった方がいいのかな? あれ、ちょっと待って。
ダニエルはきっと相手がリースだから、恋愛相談とか気兼ねなくしてたんだよね。それが実は想い人のエリス本人だったって分かったら、どう思うかな?

うーん……チッ、チッ、チッ、チーン! ここは、③様子を見る。これに決定!

そうなれば、素知らぬ顔で話題を変えるに限る。目が泳いでなんていませんよ。
ははっ、今日はよく晴れてお出掛け日和だし、洗濯物も気持ちよく乾きそうだね。
まあ、二人とも裸で言うのもなんだけど。

いい加減、なにか適当に着…… あっ、そうだ!

「今ならダニエルの好きなように、私を着飾れるチャンスだよ?」

ダニエルの普段着と合わせたカジュアルでも、お嬢様スタイルを貫くエレガンスやフェミニンでも、いっそセクシー路線でも両手離しで受け入れますよ。

ダニエルの性癖全開でコーディネートしちゃってOK。

ありのままの素顔をさらした私を、ダニエル好みにして愛でてください!

「いや、エリスはそのままで」

ダニエルったら、ずっと私の素肌のどこかにちょっと触れたままだし、見たくても我慢しているのを隠しながらも視線が度々顔以外のところを彷徨っているし――

「えっと、それは…… ずっと裸でいて欲しいってこと?」

もちろん、私だって何も着なくてもダニエルが愛おしいし、今なら好きなだけ裸を拝み放題なのは嬉しいし、こんな状況じゃなきゃその曲線美を目に焼き付ける機会はないから、同意するけどね。

「ち、違っ! エリスは着飾らなくてもキレイだって、あ、いや、だから……」

はぅぅっ、可愛いっ! ダニエルったらリースの前じゃ私を褒めまくってるのに、こういう時に言葉につまって、女性を褒め慣れてない不器用な感じが凄くいいっ。

「なるほど。容姿がいいってお得だね」

「そうかも知れないが、俺はエリスお嬢様の見目がいいから惚れた訳じゃない。
 そんな表面的なものじゃなくて……」

ふふっ、やっぱり焦ってる顔も可愛いなぁ。

うんうん。ダニエルがそんな軽薄な人じゃないのはよく知ってるよ。ちょっと遊び過ぎちゃったかな?

何とか説明しようとして、上手い言葉が見つからなくて焦れて頭を掻きむしっちゃってるし、ストレスになるのは良くない。

とりあえず、ハグしちゃる! これでストレス軽減しなくちゃね。

「エリス?」
「ダニエルは私の全てを愛してるってこと?」

「……そうだな」

あーもう、そんなに照れないでよ。可愛すぎてこっちまで心拍数が上がっちゃう。
さっきのお詫びにキスもしてあげよう。ハグが30秒、キスが20秒で私が与えちゃったストレスの分は解消できたかな?

おまけのおまけに、ぎゅ~っとしながら、ちゅうしてあげちゃおう。
これはダニエルのためっていうより、私がしたいからねっ!



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