9 / 13
パーティ? 行きませんよ
しおりを挟む「ダニエルをお休みにしておいて正解だった。こうして、のんびりできるもんね」
「そうで、す……あっ! きょっ、今日は、大事な舞踏会じゃないですか!?
朝早くから準備に時間を取られるから、休んでいいと言われて」
「そう、卒業記念パーティーね。もちろん、私は行かないけど」
ダニエルったら、慌ててベッドから出るのはまだ早いっ! そう簡単には行かせはせぬぞ。だいしゅきホールド発動! これで私の腕の中から逃れられはしまいっ。
あれ? ダニエルのおひげが伸びてジョリジョリする。よし、はむはむしちゃお。
ふむ、不思議な感触だのぅ。あう、この手っては何ですか? そんな軟な防御じゃ私を止められはせぬぞ。ほっぺをふにふに、なでなでされようと、そんな事で……
えっ、その動きはキスをご所望? そうなの? それは、ご期待にお応えせねば!
「んー、ちゅっ!」
ふふふっ。私の扱いを心得ておるな。ダニエル、お主もなかなかやるではないか。
うん、あれ? このままラブタイム突入じゃないの? 真面目な顔しちゃ、めっ!
「本当に参加されないおつもりですか?」
「はぁー。あんな面倒くさそうな集まり、お断り」
もぅ、ダニエルったら。そんな困った顔で心配してないで、ラブラブしようよー。
「ですが、邸にドレスや装飾品などの贈り物もたくさん届けられていましたし、
エスコートのお誘いを受けられたのではないのですか?」
「ああ、アレねー。本当、どうして奴らは聞く耳を持たないんだか」
貴族の男性は同伴者に自身の瞳や髪と同じ色合いのドレスや宝飾品を贈り、女性はそれを身に付けて参加するとか、財力自慢みたいなアホな伝統があるんだっけ?
KY(空気読まない)キラキラ男子どもにパートナーに誘われたが、全てズバッとキッパリ断った。
それはもう、何の誤解も生まれる余地がない程、歯に衣着せぬ言葉ではっきりと。
そ・れ・な・の・に! 頭の中お花畑なあいつらは問答無用で送り付けてきた。
『保護者の金銭的援助を受けられないのを知っていて、放っては置けない』とか。
うっせぇわ! 余計なお世話だし、どうして私の家庭事情を把握してんのよ!? 男爵家の金なんて、はなっから当てにしてないわっ! それに、あんたらの世話になるような仲でもないし、施しがしたいなら教会や孤児院にしてろや。
エスコートを断ったのに『パーティー会場で待っている』とか『遠慮はいらない。これを身に付けた貴方の姿が見たい』などのメッセージカード付き。
だ・か・ら! 行かねぇーつってんじゃん!?
なんなの? 話が通じないにも程がある。これこそ迷惑行為でしょう!
思い出したらイライラする…… ダニエルのおっぱいで癒されよう。すりすり。
はうぅぅ…… 絶妙な弾力。それに、すーはー…… いい匂いぃ~。好きっ!
よーし、落ち着いた~。おっと、ダニエルが困惑顔。
「気にしなくて大丈夫。一つ残らず婚約者経由で突き返してあげたから」
今頃、どうなっているか。ざまあ味噌漬け! ざまりんクッキー、さっくさく~。
え、何、どうしたの? ダニエルったら何でそんなポカーンとしてるの?
私はただ、してやったりとニヤッと笑っちゃっただけなのに……。変顔だった?
「ダニエル?」
「あ、申し訳ありません。お嬢様の――」
「もーぅ、『エリス』でしょう? それに、さっきから敬語になってるし」
ぶーぶー。ラブラブ中は砕けた口調で、愛おしくて仕方ないって感じで何度も名前を呼んでくれたのに。そんな態度だと、またエッチな悪戯しちゃうぞ~。
「うっ。エリスのそんな表情は初めて見たのに、なぜか既視感があって……」
ああ、なるほどっ! ネタばらしがまだだった。答えが解らずモヤモヤしてる顔をしちゃって。親切な私がその眉間のシワを伸ばして差し上げよう。なでなで。
まあ、変身魔法の使い手は希少だし、『リース』と『エリス』が同一人物だとか、説明されなきゃ分からないだろうなー。さて、どうしようかなぁ……。
エリスとリースが同一人物だという事を①明かす。②隠す。
②の隠すのは無理だな。絶対にどこかでボロを出す自信しかない。
それなら早めに言っちゃった方がいいのかな? あれ、ちょっと待って。
ダニエルはきっと相手がリースだから、恋愛相談とか気兼ねなくしてたんだよね。それが実は想い人のエリス本人だったって分かったら、どう思うかな?
うーん……チッ、チッ、チッ、チーン! ここは、③様子を見る。これに決定!
そうなれば、素知らぬ顔で話題を変えるに限る。目が泳いでなんていませんよ。
ははっ、今日はよく晴れてお出掛け日和だし、洗濯物も気持ちよく乾きそうだね。
まあ、二人とも裸で言うのもなんだけど。
いい加減、なにか適当に着…… あっ、そうだ!
「今ならダニエルの好きなように、私を着飾れるチャンスだよ?」
ダニエルの普段着と合わせたカジュアルでも、お嬢様スタイルを貫くエレガンスやフェミニンでも、いっそセクシー路線でも両手離しで受け入れますよ。
ダニエルの性癖全開でコーディネートしちゃってOK。
ありのままの素顔をさらした私を、ダニエル好みにして愛でてください!
「いや、エリスはそのままで」
ダニエルったら、ずっと私の素肌のどこかにちょっと触れたままだし、見たくても我慢しているのを隠しながらも視線が度々顔以外のところを彷徨っているし――
「えっと、それは…… ずっと裸でいて欲しいってこと?」
もちろん、私だって何も着なくてもダニエルが愛おしいし、今なら好きなだけ裸を拝み放題なのは嬉しいし、こんな状況じゃなきゃその曲線美を目に焼き付ける機会はないから、同意するけどね。
「ち、違っ! エリスは着飾らなくてもキレイだって、あ、いや、だから……」
はぅぅっ、可愛いっ! ダニエルったらリースの前じゃ私を褒めまくってるのに、こういう時に言葉につまって、女性を褒め慣れてない不器用な感じが凄くいいっ。
「なるほど。容姿がいいってお得だね」
「そうかも知れないが、俺はエリスお嬢様の見目がいいから惚れた訳じゃない。
そんな表面的なものじゃなくて……」
ふふっ、やっぱり焦ってる顔も可愛いなぁ。
うんうん。ダニエルがそんな軽薄な人じゃないのはよく知ってるよ。ちょっと遊び過ぎちゃったかな?
何とか説明しようとして、上手い言葉が見つからなくて焦れて頭を掻きむしっちゃってるし、ストレスになるのは良くない。
とりあえず、ハグしちゃる! これでストレス軽減しなくちゃね。
「エリス?」
「ダニエルは私の全てを愛してるってこと?」
「……そうだな」
あーもう、そんなに照れないでよ。可愛すぎてこっちまで心拍数が上がっちゃう。
さっきのお詫びにキスもしてあげよう。ハグが30秒、キスが20秒で私が与えちゃったストレスの分は解消できたかな?
おまけのおまけに、ぎゅ~っとしながら、ちゅうしてあげちゃおう。
これはダニエルのためっていうより、私がしたいからねっ!
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる