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私、実はすごいんです
しおりを挟む「さて、面倒に巻き込まれる前に出発しないとね」
ああ、でもまだダニエルの筋肉を堪能していたいなぁ……。すりすり、ふにふに。
「はぁー…… 今頃、邸ではエリスが居なくて大騒ぎで捜索してるだろうな。
追っ手に見つかる前に、一度、大人しく邸に戻った方がいいんじゃないか?
二人でどこかへ逃げるにしても、ある程度は旅の装備を整えないと。
それに、人目につきにくい夜中に抜け道を通って街を出た方が……」
「ダニエルって、心配性だよね。レムちゃんが代役をしてるから大丈夫」
「レムって、土属性の下級精霊だったよな。あの石人形が代役?」
「あれでもレムちゃんは頼りになるし、代役だってバレたこと一度もないよ。
計画があるって言ったでしょう」
「そうなのか? だが、逃げるのにしくじったりしたら……」
あぁ、そんな迷子の子猫みたいな目をして…… 可愛いぃっ!
そんなダニエルには、ちゅーしちゃう。ほっぺに、おでこに、お鼻、唇にもね。
チートで魔女っ子のエリスちゃん(爆)が、失敗なんてするはずもないのに。
でも、そんな事を知らないダニエルには死活問題だもんね。よしよし。
おや? ダニエルの髪ってダークグレイに黒だから金属を連想させて硬そうに見えたけど、こうして触ってみると結構やわらかくてふわふわ~。触り心地がいいっ!
「エリスはたまに俺を子供扱いしてないか?」
「うん? そんな事ないけど、ちゃんと大人扱いもできるよ」
頭をよしよしは子供扱いなのか。では、ふにゃっと脱力してるこの子をよしよし。
「うわっ、ちょ、ちょっと待て――」
「うん、待つ」
「いや、その位置で待たれても……」
「え、ダメ?」
「だ…… 今はダメだ。エリスの計画っていうのは、どういうものなんだ?」
あらら、タイーホですか? そんなガッチリ両手を捕まえなくてもいいのに……。
この子は少し寂しそうだし、感触が変わってモミ心地が良―― あ、ダメですか。そうですか。ちぇっ。
「エ・リ・ス?」
ダニエルったら、そんな困った子に手を焼かされているみたいな顔しちゃって。
分かりましたよ。説明すればいいんでしょう。まあ、説明する程でもないけど。
「人の住んでいない場所に、誰にもバレないようにパッと瞬間移動しちゃって、
そこに隠れ家を建てて二人で暮らすつもり!」
「あー………… それが、エリスの計画か?」
むむぅ、何? その呆れたような、困惑したような顔は。
「もう、どこから突っ込めばいいんだか。その場所に心当たりはあるのか?」
「国境の魔の森の結界が弱まっている所! あそこなら誰もいないでしょう?」
「まさか、魔物警戒区域の事じゃ……」
「正解っ! 資源が豊富だし、国の管轄外だから住むのも自由っていいよね!」
「はぁー、あんな強い魔物がうろつく場所に人が住める訳がないだろう」
「大丈夫っ! ダニエルならワンパンだから」
「は? わんぱ…… いやいや、いくら何でもそれほどの実力は――」
「あるよ。気付いてないみたいだけど」
「…………どういう事だ?」
「狩猟大会で私を助けてくれた時に、ダニエルが倒した魔物のこと覚えてる?」
「ブラック・ウルフの群れだろう。戦闘の経験があれば、あれくらいは――」
「ブッブー! あれは闇魔法も操れる、ダークシャドー・ウルフでした~。
ダニエルったら相手に攻撃させずに瞬殺しちゃって、気付かないんだもんなー」
「それはない。ブラック・ウルフの最上位種があんなに弱い訳がないだろう」
ダニエルの魅力を知るのは自分だけでいいって、ダークシャドー・ウルフの痕跡をちょっぱやで証拠隠滅したのが裏目に出るとは……確認してもらえば良かった。
「だから、ダニエルが強いんだって」
むむぅ、その顔は信じてないな。私の作ったピアスのチート効果は抜群ですよ?
両手が自由だったら、頬っぺびよーんの刑にしてあげたのに……。
「……そうだとしても、あんな危険な場所にエリスを連れては行けない」
「私が瞬間移動でダニエルを一緒に連れて行ってあげるんだってば。一瞬だよ。
そこに結界を張っちゃえば、絶対に魔物が近寄って来ないから心配もないし、
半刻もあれば、希望通りの家も作ってあげちゃうよ!
そんでもって、ダニエル用にここへの転移門も作ってあげるからね」
「はぁー…… そんな夢物語みたいな事が実現できたら凄いけどな。
そういった強力な魔道具は、金やコネで何とかできるものじゃないんだぞ?」
まぁ、ワープ魔法が使える魔道具を入手しようとするだけでも、近衛騎士団クラスの権限がなくちゃ無理だし、個人で手に入れられる物ではないね。
私が自分で作れば関係ナッシングだけど、作らん。
ピアスよりは簡単に作れるけど、私の魔力に耐えられる魔石の採取が面倒臭いし、魔力を注いで動かす魔道具なんかあっても、二度手間でしかないんだよね。
大体にして、そんなもの必要ないし。
「道具なんて必要ないよ。魔法でちょちょいのちょいだから」
あははっ。ダニエルの変顔なんて、ちょー貴重。何で急に笑わせにきてるの?
「あー…… エリス、もう少し現実的な話を―― うわっ! エ、エリス!?」
人を残念な子を見る目で見た罰です。空中アトラクションの刑をご堪能ください。
きっと今は自由に部屋も飛べるはず~。
「ちょ、うわっ、怖っ…… ちょっ、危なっ! おい止めてくれ――」
涙目のダニエルも可哀そ可愛いから、もうちょっと見ていたいけど、仕方ないな。ここらで勘弁してあげよう。
「もう目は覚めた? 現実へようこそ」
「う゛うぅ……」
あらら、酔っちゃった? まぁ、こんな狭い場所でやる遊びじゃなかったか。
知ーらんぷいっと。信じてくれない、ダニエルがいけないんだもーん。
「ふぅー…… エリスは、うぅ、魔力がほとんどないんじゃ、ないのか?」
「よくぞ聞いてくれました!」
ん? あ、そうじゃん。ダニエルは私が全属性の高魔力持ちだって知らないよね。魔法で全部何とかするって、冗談だと思っても仕方ないじゃんねぇ。
あー…… なんか、ごめんね? 私はダニエルの素晴らしい肉体を全方位から観察できて楽しかったけど、ダニエルは……顔色も悪いし、楽しくはなかったよね。
えっと、裸じゃ寒そうだしお布団でもかけて、背中も優しく撫でてあげようね。
な~でなで、ポンポン。
もう大丈夫? 話を進めてくれって? ダニエルがそういうなら、説明しよう。
平々凡々などこにでもいる美少女に見える私ですが、実は凄い人なのだよ!
〇〇しないと出られない部屋に二人で閉じ込められても、軽く三年は快適に生活できるだけの物資を、某未来のロボあおだぬき張りに異空間にストックしてあるし、どんだけ進化するん!? って驚く某幻のエスパー〇ケモン並みに強いのですよ。
わーはっはっはっ! これでダニエルにも私の凄さが―― え、分からない??
えっと、つまり……脱出準備は万端で、この国一番の魔導士なんかより、万能ってことなんですが? あっ、良かった。これで通じた? ふぅ、ビックリした。
あれ、その顔はもしかして半信半疑ですか、ダニエルさん?
それじゃあ仕方ない。とっておきの品をお見せしましょう!
「ダニエルには特別に私のお気に入りを見せてあげる。よいしょっと!」
「うわっ!? 一体、どこから? これは鉱石、じゃ、ないな。魔石……か?」
「えへへっ。候補地の下見で各地を回ってた時に手に入れたんだー」
「こんなにデカい魔物の核を見るのは初めてだ……」
そうでしょうとも。寝る間を惜しんで良い土地を探し回り、寒がりの私には丁度いいかもなんて甘っちょろい考えで火山まで行って、即「あっ、これはないわ」って思ったけど、折角だからお土産をゲットしようと戦ったドラゴンの核だもの。
魔物の持つ魔力に比例して核の大きさは変わるって授業で聞いたけど、この辺では直径30cmもある物なんて私も見たことなかったもん。熱々のマグマがそのまま巨大なビー玉になったみたいで、ピカピカでキレイなんだぁ。つい、うっとり。
これだけ大きな魔石なら、オール電化ならぬオール魔道具化のお家でも五年は問題なく快適生活を送れるし、蓄電池みたいに使えるから、私が定期的に魔力を注げば半永久的に燃料にできて便利でお得! 予備として、もう一つ欲しいくらい、良いアイテムだよね~。
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