ステ振りの王様

高戸

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12話 来客

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 朝起きると………冷蔵庫が暴走していた。



 厳密に言えば、冷蔵庫の内部にしか行き渡らないはずの冷気が外部へと湧き出ていたのだ。

 恐らく冷蔵庫を木製にしたために保温効果が薄くなり、冷気が外に放出されたと考えられる。

 冷気が外に流れたために温度自動調節機能が働いて、魔石の内部にたまった魔力の5分の1を1日で使うというコスパの悪さを発揮した。
 俺の【アイテム詳細鑑定】では1ヶ月は持つはずだったのだが。


 魔石とは基本的には大きさと濃度で価値が決まる。大きければそれだけ書き込める命令量が増え、濃度によって残りの魔力残量が解る。

 濃度に関しては紫に近いほど、残量が多いと言う事らしい。

 これを踏まえた上で魔石の命令内容を変更したことで問題は改善出来た。

『保温』『回転』と『温度管理』『空気圧縮』に書き換える事で今度こそ完璧に冷蔵庫を再現できた、勿論木製だ。『回転』はファンに取り付ける魔石だ。
 空気圧縮時に発生する高温はファンから外に出る仕組みにしたが、ここは魔石ではなく構造による事なので金属を使う事で完成させることができた。

 【魔石加工】のスキルで命令を書き込むのだが、文字数によって消費する魔力量が違う事や、命令を連動して動かすには同じ魔石にいくつも命令した方が良い事などが解った。

 次に【魔力回路作成】だが、この能力は魔石どうしを繋げて効果を重複させたりすること。
 恐らく見えない魔力線を使うよりも魔力伝導率の高い鉱石などで銅線のような物を作った方がうまくいくのでは、と思い始めている。

「じゃあエリス、このリンゴ触ってみてくれ」

「うん」

 リンゴはこの世界でもリンゴという名前だそうだ。そして冷蔵庫が暴走していたとはいえ、冷蔵庫の中は一定以下の温度が保たれていたはずなので、問題無く冷えたリンゴを食べる事ができる。

「冷たい、」

「ああ、これで保存とかの問題はクリアだ」

「ネイト、凄い」

 今日の朝食は冷えたリンゴになった。
 一応料理人の能力も使えるが、使う必要も無く、うまかった。


「それじゃ、今日中にやっておきたいことを確認しよう」

「うん、何が有る?」

「取り敢えず、ここら辺の地形の把握だな。村長に貰った地図によれば北には山が西には森がある、これを確認する必要があるだろう、それに資源の確保は必須だろうしな」

「山と森ね、どっちから行く?」

「取り敢えず山かな、集落で使った鉄を補充したいし、ゴーレムがいればラッキーなんだけど」

「分かった、山ね。出発は何時にする?」

「そうだな、午前中に出た方が良いと思う。時間かけて夜になると事故る可能性増えるし」

「じゃあ、早く行こ」

「ああ、」

 家をもぬけの空にするのは少し不安だが、この際だ仕方ない。それにここは獣人領土と人間領土の境い目だから、変な盗賊に住み着かれることも無いと思う。
 もしかすると、危険な場所でも俺と同じ様にここに居れば人間も獣人も近づかない安全領域と考えた奴がいるかもしれないが、好き好んで敵対種族に近づく可能性は低いと思う。

 地図を見た感じだと山までは歩いて5時間ほどの距離だったのでAGLに振ってさっさと移動する。



「いたね、ゴーレム」

「そうだな」

 山には相当数のゴーレムがいた。
 見た感じ身体は鉄製のゴーレムだと思う。

 鉄ゴーレムって事はSTR+400でワンパンだ。

 パアーーン!!

 殴るとボクシング選手がミットに当てるような気持ちのいい音が出た。もしかするとゴーレム殴りまくったせいで、弱点とか殴り方とかが解って来たのかもしれない。
 ゴーレムは、勿論後方5m程に押し飛ばされて倒れた。

 運に700振って魔物用ナイフを当てる事で解体完了。尋常じゃない鉱石が出て来てエリスがまた驚く。
 このやり取りにも慣れて来た。

 でもシロナとやったことをたどっているようで怖くなる。

 鉄鉱石が500kgほどとれたところでお昼時になったので魔法の鞄に入れて置いたリンゴを数個食べてこの日は家に戻った。


 通常5時間かかる道のりを1時間で戻って来て、此処からはクラフトタイム…だと思っていたのだが。

 山に行く前に立てたフラグを回収してしまった。

 家に何か居る。

 人数は確認できないが、かなりの人数が家を包囲するように家の周りにたむろしている。
 そして人間ではない。獣人と言うにも少し違う気がする。

 小人? トンガリ帽子をかぶってて髭が長い、ちっさい爺さんがいっぱいいる。

「あれはノーム」

「ノーム?」

 そんな妖精が日本にも都市伝説のような形でいた気がする。外国だったか?よく覚えていない。

「妖精種の一種で器用で博識な種族」

 なるほど、獣人も人間も居ない場所。そこに居るのはどちらでもない種族って事か。

 ここで見てても仕方ない、出ていくか。

「お前らここは俺の家だぞ、何してるんだ?」

 俺の声に反応して殆どのノームは俺に注目して、その中から1人が出て来た。この中の代表なのだろう。

「すいません、食料を分けていただけませんか?」

 食料か、良かった。ここから出て行けとかだったら、超多人数でリンチされるかもだし、完全に俺の転生人生が詰む。

「理由と、あんたらが何人でどこを拠点にしているか教えてくれるのなら、構わない」

「解りました。ワシたちは元々もう少し獣人側に住んでいたのですが、獣人に見つかって追い出されてしまいました。急いで獣人から逃げている内に食料もごくわずかになり、ここへ来ました。なので拠点はありません。人数は43名です。理由はこれでいいですか?」

「ああ、事情は分かった。食料を提供したいのはやまやまだが43人となると手元にある分では足りない、あんたらの中で釣り師や木こりの者達から先に食料を配り、魚と木を取ってきてほしい、釣り竿を作れる者も先に食料を配ってくれ、食料はあそこの木の箱の中にある、俺は果物をもう少し探してくるから」

「ありがとうございます!。そのようにさせていただきます」

 駆け足で説明を終えた俺はある実験をしにエリスとリンゴの木に向かった。



「ここのリンゴは昨日全部取ったからもう無いはず」

「まあ、見てろ」

 ピコン♪
________
回復魔法
INT+600
________

 日本化学では植物も生命活動を行っている、と言うのが一般的だ。なら回復魔法で植物の活性も促せるのではないか。

 回復魔法を無理矢理理論ずけて説明するなら、細胞を増やして傷を塞いでいるか、活性させて自然治癒力を上げているかの、どちらかだ。

 可能性はある。

 回復魔法を木に対して発動すると木がどんどん大きくなって行き、実が生って行った。
 成功だ。

「凄い…」

「どうやっているのか問い詰めたりしないのか?」

 エリスは俺のやっていることに驚くが説明を求めたりは極力して来ない。
 それが気になっていた。

「それは、ネイトのやっていることは凄いし説明も欲しいけど、話してくれるまで待つって決めたから」

 そんな事を考えていたのか。俺もいつまでもシロナの事を引きずってばかりじゃだめだな。

「いつか話してくれればいい」

「ああ、いつか話す」

 その後はリンゴを適当に配って、スタミナが戻ったノームたちに木を切らせたり魚を取らせたりと働いて貰った。

 この後は俺の国への勧誘と家作りだな。
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