ステ振りの王様

高戸

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32話 ゴーレム戦記

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前書き
サブタイはあんまり関係ありません。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


















「了解した」

 魔石から聞こえてくるネイトの声に了承の意を示した白樹は、魔石を白衣に付いている無数のポケットの一つに入れる。
 彼の白衣は戦闘用の装備でありポケットにはその数以上の兵器や魔石が入っている。一つ一つのポケットの容量は100cm×100cm×100cmにまで拡張されており、それに加えてマジックバックまで持っているのだから、彼はどこに居ても研究道具を持っている訳だ。

「アリア君、私達の相手は【錬金術師】の男のようだ。迂回して来ているようだから待ち伏せが適切だな」

「はい」

 アリアは12歳である。
 それは白樹も理解しており、彼女の力を借りなければならないこの状況に唇を噛み締めていた。
 アリアは白樹の口から伝う赤い液体に覚悟を決めた目を見せていた。







 ゴーレム6体に、他の兵と代わりのない装備をつけた者達が11名、それに研究員のような服装で丸メガネを掛けた【錬金術師】を含めた18人が、ターゲットである。
 通過するであろう地点に到着し、白樹は光学迷彩を発動させる。
 魔石に加え、様々な科学技術と自然現象を合わせて作りあげられた技術だが、今は説明している暇は無いようだ。

(こちらの戦力はゴーレムが5体に私とアリア君、エリス君にはもしもの時のために村に残って防御を任せているからこちらを手伝って貰う訳にはいかない。 さてどう対処した物か)

 【錬金術師】が人と人形を着飾って歩いて来る。
 息を潜めた白樹とアリアは、彼らが歩いて来るのをじっと待つ。

 18人が立っている場所を中心に半径5m程が青く輝いた。パチパチと音を立てる光は音を越えた速さで檻を形成する。
 さらに何もなかったはずの場所に色付きゴーレム5体が現れ、檻を取り囲んでしまう。

「罠か、小賢しい真似をする。 破壊しろ」

 【錬金術師】がゴーレムに出した命令に返答はなかったが、ゴーレムは適切に理解したようで青く光る檻に近づいてゆく。

 振り上げられたゴーレムの両腕が光に当たる瞬間、光が強くなり腕を焦がし完全にゴーレムは起動を停止してしまった。

(雷の檻に閉じ込めてからの、安地遠距離攻撃。 これで何人倒せるか)

 ここまでは全て白樹の作戦通りの展開だった。
 青く輝く檻は『放電』を込めた魔石と避雷針の理屈とを組み合わせて作られた物だが、物理的な檻ではなく通りぬける事は可能だ。

(なに、無理矢理出たとしても全身が炭化するだけの話だ)


 閉じ込められた18、いや17名に向け色付きゴーレムたちからの魔石攻撃が開始される。
 青く輝く人形が地面を水で満たしていく、兵士の1人がそこに足を付けたとき……彼の心臓は止まった。

「水に足を浸けるな!」

 危険を感じ取った、【錬金術師】は直ぐに指示を出すが、かといって地面にはどんどん水が侵食してくる。
 この状況をどうにかするには、檻を壊すしかない。
 【錬金術師】は迫る制限時間の中、檻を観察し続ける。

 どんどん迫ってくる水に、3体のゴーレムが沈んだ。それを足場にして兵士たちは無事である。
 だが、色付きゴーレムの攻撃は、火球、石つぶて、風刃、と怒涛の攻撃力を見せている。更に兵の1人が燃え上がり、1人は石にぶつかり水に浸かった。風の刃も負けじと連撃を繰り出し避けようとした兵士2人が水に落ちた。


「これか!?」

 地面からでた12本の雷は真上で交差しているように見えるが、実は逆U字の雷が何本も発生しているのだ。
 だが基本的に雷とは直線を行く。それを逆U字に曲げている何かを【錬金術師】は発見した。

 頭上に鉄でできた虫のような何かが浮いていた。
 それが何かは解らないが、自分たちが設置した物でない以上敵に有利な物だろう、破壊に迷う事は無い。

「頭上の塊を撃墜しろ!」

「はっ! 『ファイアーボール』」

 返事をした兵士は魔法を発動して、謎の飛行物体を撃墜する。
 すると、雷の方向性が変わり地面から多少のスパークが放たれるだけになった。さらにスパークしているのは6か所だけになり次々と兵士は檻から抜けていく。



(抜けられてしまったか。結局倒せたのは4体と4人、だけか)

 白樹は次の策に頭を巡らせていく。そもそも彼の職業は【考古学者】スキルはどんな言語も読めるという物であり、どう考えても最前線で戦えるスペックではない。ではなぜ彼がこんな場所に居るのか。
 相性と称すのが適切だろう、アリアのゴーレムを作ったのは白樹である。
 仮にゴーレムが故障したとしても、原因を突き止め解決するのに5分といったところか。それが出来るのは白樹だけだったのだから2人がペアになる事は必然だった。そして人数を揃えて来た敵に対してエリス1人では相性が悪いと判断した、手数ならば文字通り12本持っているアリアが行くのが最適、少しでも補助をと白樹も同行したという訳だ。

 白樹にしてもアリアにしてもネイトから無理をする必要は無いと、予め言われていた。それでも来たのは少しでも貢献したい活躍したいという自己満足の先走りでしかない。
 それでもそれはアリアにしても白樹にしてもエリスだってシリアやノーム達ですら抱えている感情だ。

(だから負ける訳には行かない)

(だからちょっとでもネイトさんの力に)

 白樹は自らの光学迷彩を解く。
 光学迷彩には幾つかのデメリットがあるのだが、道具が重すぎて走れないデメリットが今回は脱いでしまうほどに邪魔だったのだろう。

「ここからだ」

 白樹は気が付かれる事無く、色付きゴーレムの後ろに回り込み、マジックバックから道具を取り出していく。

 連続的な破裂音が鳴り響いた。
 それを聞いて、音の方を振り返った兵士たちは、既に体に風穴が開けられていた。痛みに体が反応する、それは命が終わる合図となった。

「残りは1体と7人」
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