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雪祭りの思い出からの緊急通信
しおりを挟む《八雲》 ーーー サヴァレーゼのヴァッサロ夫妻の公式訪問は雪祭りに合わせることになった。「お祭りあるからゆっくりしていったら良いんじゃね?」って言ったらめっちゃ喜んで1月くらい遊びに来るんだと。マジか。フリーダムだなサヴァレーゼは。
雪と氷に閉ざされるナイトレイの冬は、昔は凍死者餓死者出るわ魔物は出るわで超陰鬱だったらしいけど、今は生活環境も変わってお家でほっこりor外でお祭りの賑わいだ。12歳くらいの俺がその辺のホームレスのオッチャンたち集めて『雪祭り』を始めたのがきっかけだ。でかい中央広場にかまくらとか雪だるま作って、手伝ってくれたオッチャンたちに食べ物と酒を振る舞って日当まで出す。要するに炊き出しと除雪の公共事業合体技。ホームレスのオッチャンたちの中には彫刻家だか建築家だかが居て、女神とかなんとか神殿とか、なんかすっげえ感じの雪の彫像が並んだ。おかしいな?雪だるまとか雪うさぎとかの、もっと可愛い感じの子供のお遊びだったはずなのに…。
その雪の彫像を見に雪の中を街の人が見にくる。見にくるだけじゃあ、なんかもうごめんなさいって言いたくなったから炊き出しのおにぎりと豚汁を配る。漁師のオッチャンたちの差し入れの、売り物にならない魚介類も海鮮汁にしたらめっちゃ人が並ぶ。パン屋の出来損ないのパンとか切れっ端とかもらったから、適当にキッシュっぽく焼いたら人が並ぶ。そしたら近所の酒屋がワインの出店始めて、うちもうちもと出店が並ぶ。中々帰ってこない俺を心配して兄ちゃんが迎えにきたら焚火とか除雪とか近隣住人がもうやっちゃってて、おかしな感じで祭りが始まってた。
雪祭りは年々規模が大きくなり、レイが独立して俺のお遊びに付き合ってくれるようになってからはナイトレイ全域の名物になった。参加者に協賛企業の名前の入ったノベルティグッズの販売を始めたら協賛が増えた。めっちゃ増えた。タダじゃないのに。企業の宣伝入ってるのに。なんでか売れに売れた。ノベルティって言っても可愛いもんで、クズ魔石をセットして使うカイロみたいなやつ。俺開発。回路自体は簡単だから量産してもらって、まあ値段は本体銅貨1枚。日本円で言うと1000円くらい。クズ魔石別売り。しかも1年で壊れるソ●ータイマー付き。壊れたカイロを次の祭りに持ってきてもらったら新しいのと交換してあげるシステム。でも交換してくれって持ってきてくれる人は少なかった。毎年違うデザインだからコレクションとして取っておくんだって。ちなみにカイロを毎年デザインしてくれてるのは、あん時ホームレスだったオッチャンの1人。
売り上げと協賛金は冬中行われる祭りで配られる無料の食事代になる。焚き火も除雪もしてあるから、これで凍死と餓死は格段に減ったらしい。生きていくお金がないっていうなら運営スタッフとして働け。働けば仮宿舎で寝起きできて三食食える。風呂も作業着も貸し出す。酒は日当で買え。あとは祭り期間中は馬車馬みたいに働け。サボる暇なんか与えねえ。そういうシステム。
なんだかんだで初期雪祭りメンバーはナイトレイ家関連に就職するか、レイモンド商会にスカウトされている。
そのスカウトされた初期メンバーの1人が今、レイモンド商会ドーン王都支店の店長。神経ナイロンザイルの癒し系のっそりクマ。身長2メートルは優に超えてるクマ。本当のクマじゃなくってクマ系青年。名をテッド。ただのテッド。姓なし。通称テッド兄ちゃん。会った時はギリ10代だったけど、もうアラサーだからそろそろオッチャン。
王都で瀕死の重傷を負ったって、今し方緊急通信が入った。
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