17 / 92
本気で言っている意味がわからないわ
しおりを挟む東の国に珍しい『月のしずく』という宝石があります。美しく柔らかい光沢を放ち、色は乳白色から黒、桃色、青にオパール色と様々です。貝の中で生成される生体鉱物 ーーー 要するに真珠ですね。
その真珠、真円であればルネライトの王都に屋敷が買えるようなびっくりお値段ですが、楕円や歪み、へこみ、傷があるものは『神の失敗作』として捨ててしまうのだそうです。
あらあら、まあ?勿体ない。
わたくし、前世日本人ですから、基本ケチ……いいえ、勿体無い精神を持っています。それに淡水真珠大好きだったんですよね。可愛いじゃないですか!安かったし。
なので東の国に直接赴き、真円の花珠とは完全に差別化するというお約束で交渉を重ねて、我が商会で少量だけ独占輸入しております。もう少し信頼が築けたら養殖方法のお話をして良いと思っています。
その歪んだ真珠をアクセサリーにどうか?と、マダムサティンと打ち合わせ中にお客様がいらっしゃいました。先触れもなかったですし、お客様と呼んでいいのか怪しいですが。
「だからエマを出しなさいよッ!!ちょっ…触らないで痴漢!変態!!私は王太子妃よ!!」
あらあら、まあ。王太子殿下のお相手の令嬢ですね。ご令嬢?あなた様はまだ男爵令嬢では…?
わたくしが出ていくのは迷惑ですよね。主に門番や警備兵に。それに今日はオブライエン様の取材が予定されていますし。
そっと庭から離れようと静かに踵を返すと
「あー!見つけたわ!エマ・シーグローブ!!」
あらまあ……呼び捨てでございますか。
あまりの衝撃に門番の手が緩んだのでしょう。ご令嬢は門番と警備兵を振り切ってわたくしのところまで駆けてきました。パティとケイレブがわたくしを隠すように庇ってくれます。
「このっ…!悪魔!ひとでなし!悪役令嬢!!」
えっ…
「雑誌に嘘書かせて悲劇のヒロイン気取り!?セディーにフられたからって仕返しにしてもひどすぎるわ!!」
なんのお話でしょう???
「そこをどいてよケイレブ!!エマが悪いのよ!!どうして!?なんで私がお城でヒソヒソされなきゃならないのよ!!あんたのせいで!あんたのせいで私いじめられてるんだからね!?お茶会にも呼んでもらえないしパーティーでも無視される!セディーは笑ってるだけで庇ってくれないし!!」
あらまあ……大変なのね?でもそれってわたくしのせい?相変わらずこの令嬢の言葉は難しいわ。どこを取って深読みすれば良いのかしら…。
「みんなに嘘だって言いなさいよ!!今からでも良いから、あれは嘘ですって取り消して!!あんたは学園に通って私をいじめたって言ってよ!!だいたいあんたが学園に通って婚約破棄されなかったのが悪いんじゃない!!私は王妃になるの!!お妃様にならないとハッピーエンドじゃないでしょ!そんなのおかしいよ!!この世界は私のためのストーリーなんだから!私は誰よりも幸せにならないといけないの!!!」
ごめんなさい……本気で言ってる意味がわからないわ。
「ケイレブだって本当は私のものなんだから!!ケイレブだって私のこと好きでしょ!?それなのに無理矢理『悪役令嬢』の護衛にされてひどいわ!!ケイレブは私の護衛になるはずだったのに!!ねえケイレブ、私がセディーに言ってあげる!ケイレブが可哀想って!エマなんかのイケニエにされて可愛そうって…!!」
「黙れ淫売女!!」
あっ……
あらあら……まあ…
ケイレブが本気で怒ってしまいましたわ…。
326
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます
ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。
しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。
ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。
セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる