側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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本気で言っている意味がわからないわ

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東の国に珍しい『月のしずく』という宝石があります。美しく柔らかい光沢を放ち、色は乳白色から黒、桃色ピンク、青にオパール色と様々です。貝の中で生成される生体鉱物バイオミネラル ーーー 要するに真珠ですね。

その真珠、真円であればルネライトの王都に屋敷が買えるようなびっくりお値段ですが、楕円や歪み、へこみ、傷があるものは『神の失敗作』として捨ててしまうのだそうです。

あらあら、まあ?勿体ない。

わたくし、前世日本人ですから、基本ケチ……いいえ、勿体無い精神を持っています。それに淡水真珠大好きだったんですよね。可愛いじゃないですか!安かったし。

なので東の国に直接赴き、真円の花珠とは完全に差別化するというお約束で交渉を重ねて、我が商会で少量だけ独占輸入しております。もう少し信頼が築けたら養殖方法のお話をして良いと思っています。

その歪んだ真珠バロックパールをアクセサリーにどうか?と、マダムサティンと打ち合わせ中にお客様がいらっしゃいました。先触れもなかったですし、お客様と呼んでいいのか怪しいですが。


「だからエマを出しなさいよッ!!ちょっ…触らないで痴漢!変態!!私は王太子妃よ!!」


あらあら、まあ。王太子殿下のお相手の令嬢ですね。ご令嬢?あなた様はまだ男爵令嬢では…?

わたくしが出ていくのは迷惑ですよね。主に門番や警備兵に。それに今日はオブライエン様の取材が予定されていますし。

そっとそこから離れようと静かにきびすを返すと


「あー!見つけたわ!エマ・シーグローブ!!」


あらまあ……呼び捨てでございますか。

あまりの衝撃に門番の手が緩んだのでしょう。ご令嬢は門番と警備兵を振り切ってわたくしのところまで駆けてきました。パティとケイレブがわたくしを隠すように庇ってくれます。


「このっ…!悪魔!ひとでなし!悪役令嬢!!」


えっ…


「雑誌に嘘書かせて悲劇のヒロイン気取り!?セディーにフられたからって仕返しにしてもひどすぎるわ!!」


なんのお話でしょう???


「そこをどいてよケイレブ!!エマが悪いのよ!!どうして!?なんで私がお城でヒソヒソされなきゃならないのよ!!あんたのせいで!あんたのせいで私いじめられてるんだからね!?お茶会にも呼んでもらえないしパーティーでも無視される!セディーは笑ってるだけで庇ってくれないし!!」


あらまあ……大変なのね?でもそれってわたくしのせい?相変わらずこの令嬢の言葉は難しいわ。どこを取って深読みすれば良いのかしら…。


「みんなに嘘だって言いなさいよ!!今からでも良いから、あれは嘘ですって取り消して!!あんたは学園に通って私をいじめたって言ってよ!!だいたいあんたが学園に通って婚約破棄されなかったのが悪いんじゃない!!私は王妃になるの!!お妃様にならないとハッピーエンドじゃないでしょ!そんなのおかしいよ!!この世界は私のためのストーリーなんだから!私は誰よりも幸せにならないといけないの!!!」


ごめんなさい……本気で言ってる意味がわからないわ。


「ケイレブだって本当は私のものなんだから!!ケイレブだって私のこと好きでしょ!?それなのに無理矢理『悪役令嬢』の護衛にされてひどいわ!!ケイレブは私の護衛になるはずだったのに!!ねえケイレブ、私がセディーに言ってあげる!ケイレブが可哀想って!エマなんかのイケニエにされて可愛そうって…!!」

「黙れ淫売女!!」


あっ……


あらあら……まあ…



ケイレブが本気で怒ってしまいましたわ…。







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