側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

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洗って揉んで擦り込んで飾り付け、まるでお料理ですね

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成婚の儀の日。わたくしは前日から寝かせてもらえませんでした。

洗って揉んで擦り込んで飾り付け。これだけ聞くとまるでお料理なのですが、わたくしの話です。マダムサティンやアトリエのお針子たち、番記者のメアリー、そしてなぜかアリサまでやってきて、公爵邸で徹夜作業です。

内緒ですが、わたくしお風呂で揉まれている時にちょっぴりうとうとしてしまいました。内緒ですよ?


「このウェディングドレスは露出を最大限まで抑え、かつ!エマお嬢様の華奢なお体のラインを強調するように計算しております。先日ののようにリボンやフリルは使わず、銀糸を編み込んだ繊細なレースを幾重にも重ね……」


ドレスの最終調整をしながらマダムサティンの蘊蓄……いえ、セールストークが止まりません。先日のあれとは、あれですね。王太子妃様のウェディングドレスです。予算も製作期間もなかったので、既製品を大胆にカットしてリメイクしたそうです。

髪を編み込み、高く結ってベールを被ります。今日は爪は塗りません。花嫁の手袋は貞淑の象徴だそうで。仕上げは大粒の真珠 ーーー 月のように純白にけぶる花珠です。シーグローブ邸で保管していたものを侍女が恭しくマダムサティンに差し出しました。慎重に数粒をドレスに縫い付けると完成です。

鏡の中にキラキラと白く輝く花嫁。あらあら、まあ…馬子にも衣装ですわね?


「お嬢様…!!お美しいです……!!」


あら、パティが泣いてますわ。そうですわね、パティに出会ったのはわたくしが6歳、パティが17歳ですもの。娘を嫁に出す心境かしら?一度、パティは結婚しないのかと聞いたことがありますが、「お嬢様が妊娠したら適当な男を見繕って妊娠します。ああ、でもお嬢様のお世話を誰かに任せるなんて…」とブツブツ言っていました。あれですか。前世で言う「子供は欲しいけど男はいらない」、と。パティはご実家が没落した際に酷い目にあったようですからね。男性不信気味なのでしょう。

アリサとメアリーが手を取り合って泣いています。この2人は言い争いばかりしていますが実は仲良しですね?


「エマお嬢様のお支度は終わりましたか?」


扉の外からセバスの声がします。わたくしはこの公爵邸から西の離宮まで馬車で参ります。パレードはございませんが少々飾り付けた馬車と、『シーグローブの狗』と呼ばれる私兵たちが騎乗しゆっくりと離宮を目指すのです。わたくしの輿入れのために、国内外に散っていたわたくしとお父様の私兵が集まっています。国外の親戚たちも数人貸してくださいました。窓から見える真っ黒な戦時服の集団は中々壮観な眺めです。


ゆっくりと階段を降りると、満面の笑みのお父様とケイレブが立っていました


「…ああ、エマ。綺麗だ。月の女神のようだよ」

「まあ、お父様ったら…」


親バカ炸裂でございます。


「じゃあ行こうか、エマ」


お父様が手を差し出します。







「はい、お父様」








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