側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや

文字の大きさ
59 / 92

アリサの恋愛観は多分普通じゃありませんわ

しおりを挟む


妊娠しても簡単なお仕事はできます。というか、わたくし、お仕事していない方が気を揉んでしまってストレスなのです。

朝起きて簡単に湯浴みをし、暖かい服装をして食堂へ向か……


んっ?


わたくしは足を止めます。今、見てはならないものを見た気がします。側妃宮の侍女と使用人たちはマダムサティンのデザインした、シンプルながらも可愛らしい制服です。このお仕着せが着たくて就職希望、ということもよく聞きます。

その可愛らしい白黒モノトーンの制服が明らかにパツパツの侍女が…。はち切れんばかりの雄々しい胸元、サイズアウトのブラウスから見える割れた腹筋シックスパック。太く逞しい首と、わたくしのウエストくらいある腕。

二度見して、淑女の鍍金メッキが剥がれかけました。いけないいけない。わたくし、最近弛んでますわ。


「おかえりなさい鬼哭丸?随分と窮屈そうですわ」

「はっ!?もうバレた!?オレの変装は完璧だったはず…っ!」


いいえ、どうやっても隠し切れない筋肉マッスルでございますわ。


鬼哭丸は『武者修行』という名の情報収集に出したわたくしの私兵です。鬼哭丸はとある件でセバスに挑み、半殺しどころか瀕死にされて転がっていたのをわたくしがました。わたくしの私兵になってからも強い方と戦いたいというので、境界地域という非常に危険な場所の調査を任せています。時折、絶滅したと言われている巨大トカゲの鱗や牙、何かわからないけれど美味しいお肉が届きますの。


「だってよお…オジョーサマに子ができたっていうからよぅ…(ぬぎぬぎ)」


廊下ここで脱がないでください鬼哭丸。


「安産祈願で一角兎キラーラビット狩って帰ってきた」


汚い麻袋から出したのは境界地域の絶滅危惧種ですね。確かに兎は多産と安産の象徴ですが、Sランク冒険者数名でも討伐失敗するような危険動物を独りソロで狩りましたか…。


「これの肉を食えば子供は魔力で覆われて絶対って聞いたし、毛皮はあったけぇし、真っ白だからオジョーサマに良いなって思ってよお」


ニカッと少年のように笑いますが、そろそろ上着を着なさい。侍女たちが赤くなって目を逸らしているではないですか。


「キャアッ!?」


あらあら、ほら、ご覧なさい?わたくしを迎えにきたアリサが悲鳴を上げました。


「えっ……あ、あ…え…エマ、様………こ、こちらは…?」


真っ赤になりながらアリサは鬼哭丸を凝視しています。前世で言うとガン見です。


「アリサ、わたくしの私兵の鬼哭丸です。鬼哭丸、こちらはアリサ・アーミテイジ嬢。わたくしの秘書で伯爵令嬢です」


「おう、別嬪さん、よろしくな!」

「は…はひ……よ、よろしくお願いします…」


こうしてアリサと鬼哭丸のボーイ(三十路越え)ミーツガール発生。その日のアリサはアリサらしくないミスの連発でした。


「べ…別嬪、さん……なんて…は、初めて言われました…それに、かっこいいし、む、むきむきしゅごい……ああああ…エマ様、わたくしわかりましたわたくしに足りないのは筋肉でしたのね褐色の肌に傷跡だらけの体もお顔も素敵だしあの大きな手!はあぁん素敵笑顔もそこらのモヤシとは大違いどうしようどうしようどうしましょうもうこれはプロポーズするしかありませんね!!」


アリサ、落ち着いて…!


「でもね、アリサ?鬼哭丸はわたくしの私兵で、境界地域を調査しているから滅多に帰ってこれないのよ?」

「良いではありませんか!!最高です!エマ様の私兵で長期出張!ということはわたくしがエマ様第一で行動しても「俺と仕事どっちが大事だ」なんてうざいこと訊かれませんし普段は家にいないって、わたくしがバリバリ仕事して帰りが遅くなっても泊まりになっても大丈夫!そういうことですわ!!」





あらあら、まあ……アリサの恋愛観は多分普通じゃありませんわ。











しおりを挟む
感想 385

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

あなたが捨てた花冠と后の愛

小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。 順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。 そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。 リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。 そのためにリリィが取った行動とは何なのか。 リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。 2人の未来はいかに···

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

妻よりも幼馴染が大事? なら、家と慰謝料はいただきます

ぱんだ
恋愛
公爵令嬢セリーヌは、隣国の王子ブラッドと政略結婚を果たし、幼い娘クロエを授かる。結婚後は夫の王領の離宮で暮らし、義王家とも程よい関係を保ち、領民に親しまれながら穏やかな日々を送っていた。 しかし数ヶ月前、ブラッドの幼馴染である伯爵令嬢エミリーが離縁され、娘アリスを連れて実家に戻ってきた。元は豊かな家柄だが、母子は生活に困っていた。 ブラッドは「昔から家族同然だ」として、エミリー母子を城に招き、衣装や馬車を手配し、催しにも同席させ、クロエとアリスを遊ばせるように勧めた。 セリーヌは王太子妃として堪えようとしたが、だんだんと不満が高まる。

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...