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ごきげんよう、シャーロット様。もうお会いすることはないでしょう
しおりを挟むシャーロット様の産んだ子供はセオドア様の子供ではないことが広く知られてしまいました。では誰の?と思いますが、わたくしは過去の資料から、お相手の見当はついています。
「目の覚めるような青い髪に、暗い紫色の瞳。45年ほど前に一族全て平民に落とされて、絞首刑になったニューランズ男爵家がそのお色ですわ。処刑を逃れた生き残りがお相手なのでしょうね」
久しぶりにお会いしたオブライエン様にそうお伝えしました。嘘ではありません。けれど、公開する情報は少しずつ。でないと盛り上がりません。
「ではまたお会いしましょう、エマ王太子側妃様」
ニヤリとオブライエン様は笑いました。まあ素敵。わたくしの意図を即座に汲み取ってくださるのね。頭が良いオジ様も大変魅力的ですわ。あと20年もすれば、セオドア様とケイレブもこんなふうに素敵になるのかしら。待ち遠しいですわ。
シャーロット様は産後の肥立ちが悪く北の離宮で療養することとなりました。見送りの際、セオドア様を見て「違う!」「貴方の子」「寂しかったの!」と縋り、わたくしを見て「お前が仕組んだ」「悪役令嬢」「悪魔!」と罵りました。
あらあら、まあ……お元気ですこと。とても療養に行く病人には見えませんわ。
わたくしはシャーロット様の言うように『悪女』なのでしょう。けれど、その悪女のてのひらで踊る方々は愚か者です。シャーロット様は、赤い靴を履いた愚か者のように踊って踊って足を斬り倒されたのです。貴女は赤い靴の愚か者のように悔い改めることができるのでしょうか?
ごきげんよう、シャーロット様。もうお会いすることはないでしょう。
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