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ルーカス・フェリエーラと狐狩り
しおりを挟む王都中の、いや国中の鐘塔の鐘が打ち鳴らされ、夜空いっぱいに美しい巨大な女神が現れる。半透明の女神と目があって小さく手を振れば、彼女は頬を染めて蕩けるように表情を緩めた。気を良くしたのか、女神ザリエルは祝福の花びらを風に舞わせる。誰も彼もがその幻想的な光景に目を奪われている間に、溝鼠たちは捕獲されているだろう。
さて、狐狩りの始まりだ。
俺は指定された時計台を上へ上へと登っていく。狐の他に溝鼠が3匹。まあ妥当な数だろう。
「こんばんは、先生」
「こんばんは、ルーカス。妹さんは?」
「……今日は、その…大公邸に…」
「ああ、王弟殿下の…」
校医は痛ましげな顔をしてみせた。ロゼマリアには王弟アレクシスの愛人になったという噂がまことしやかに流れている。実際は兄の俺がアレクシス様と結婚していて、ロゼマリアは義娘なんだけど、誰もそこに思い至らない。アレクシス様や陛下が肯定こそしないが否定もしないからだ。
「まあ貴方だけでも良いんです。いいえ、貴方だけの方が我々も都合がいい」
「われ、われ…?」
扉を塞ぐように鼠が姿を現す。狐が笑う。ああ、素敵な笑顔だ。醜悪で。とてもあの美男子だと思えないほど歪んでいる。学園のみんなにも見せてやりたいね?
「私と一緒に来ていただきましょう、ルーカス・フェリエーラ子爵」
「え……な、なに?なんですか、彼らは?先生!?」
「初めはあのロゼマリアという小娘で良かったのですよ?けれど貴方が現れた。その『獅子の瞳』を持つ貴方が」
「……っ!せん…せい……!」
「女が子を孕み産み落とすまでの時間は長いけれど、貴方は男だ。一晩で複数の女に種をつけることができる。ああ、心配しなくていい。きちんとそれなりの血筋の、若く美しい令嬢を選びましょう」
「何故ッ!?何が目的で、そんな…っ」
「首尾よく生まれた紫色の瞳の男児に我が国の教育を施し、レーヴァンシュタインに戻す。気の長い話ですが、なに、国王ルドヴィックはもう余命幾許もなく、ロゼマリアはまもなく病死するでしょう」
「……っ、それでも!獅子の血を引く王弟殿下と王太子殿下がいらっしゃる!貴様らの思うようにはならない!!」
「ふっ…くく……アハハハ!知らないのか!悪逆王弟も、王太子の小僧も、王家の血など一滴も流れていない!終わりだよ、この国は!温情として貴方の子を王にしてやると言っているんだ!傀儡の王に!全ては我が祖国ファーゲルリーンの為に!!」
俺は笑いながら記録装置を止める。
「はい、丁寧に自白ってくれてありがとう。良い映像が取れたよ、ドミニクス・ファーゲルリーン。お礼にパーティーにご招待しよう」
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