【7人の魔王 終】白の恋と、黒の愛

とうや

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終わり

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その世界の終わりは呆気なくきた。

《駒》を屠り《神》を狩り尽くした大地は瞬く間に荒廃し、崩壊していく。


「ある者は始祖を騙し、ある者は知恵を与え、ある者は終焉に現れる……よう言うたものよのう」


爺さんが歌うように言う。情夫の膝に乗ったままだからいまいち締まらない。

俺たち兄弟は1000年前と同じようにこのヴァルハラに集まった。あの時と違うのは、俺たちはそれぞれの家族を得たことだ。大家族だ。特にアヴァロンうちモールドレアキのとこが多い。全員住めるのか?とドキドキしたが、ヴァルハラは1000年かけて空間を大拡張して改装してた。魔術で亜空につなげて空間を拡張したのはレイブンたちで、住みやすく改装したのは交代で出張してたうちのドワーフたちらしい。いつのまに…。

このヴァルハラはさながら方舟だ。《古き時代》に生息していた種族を乗せて、遠い遠い故郷へ帰る。行く先々で《神》が作り散らした世界を潰してだけを回収していくという大仕事が待っているんだけど。


「クロシロー?嫁たちが嫁会するらしいから俺らもあっちで飲もうぜ?」

「えっ…アキ、お前んとこ引越し整理終わったのか?来るの一番遅かっただろ…」

「えー、そんなのあとあと!早く!」

「あっくんは相変わらずフリーダムだねえ」


まあその辺は眷属に任せりゃ良いのか。アキの眷属はお世話したがりだからな…。


ああ、みんな笑ってる。


「いこっ、椿」


凛が俺の手を引く。あの時とは反対だな。


「凛」

「んんー?」

「俺は……ちゃんとお前を愛せてたかな?」

「ええ~、もー…そんな可愛いこというと今夜は寝かせてあげないから」


いや、普通に寝たい。


「大丈夫だよ。椿の愛はちゃんと感じてるから。もうすっごく!」


蕩けるように凛が笑う。


「おじいちゃんがねえ、愛と恋が違うって言ってたから、ちゃんと椿は僕を愛してくれたよ。僕はいまだに恋してると思うけど」


なるほど。よくわからん。わからんが……


「……これからもよろしくな、凛」

「…………………」


凛が目を見開いて俺を見て ーーー 笑った。







「うん!よろしくね!これからも、ずっと!ずっとずっとよろしくね、椿!」








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