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終わり【凛独白】
しおりを挟むねえ椿、この世界ではいろいろあったねえ。
僕はこの世界でいっぱい椿に貰っちゃったね。楽しいとか嬉しいとか、大好きとか。椿の初めても貰っちゃったしね。『家族』もいっぱいできた。血の繋がりがなくても家族ってできるんだよね。
ねえ椿。僕ねえ、『家族』って初めてできたんだ。地球でのあの教団の教義は、『信者は全員家族』とか言ってたけど全然家族なんかじゃなかった。僕みたいに下っ端信者の女が産んだ、誰の種かもわからない子供たちは奴隷も同然だった。みんなと遊んだあの公園での時間だけが、奇跡みたいなものだった。
僕はさ、ほら、顔は割と整ってたからあんまり酷い客は取らされなかったんだよ。『商品』だからね。……ああ、もう…そんな怖い顔しないでよ。痛いだけじゃなかったんだから。素質はあったみたいでね?好きじゃなくても気持ちいい事は気持ちよかったし……えー…その、ね…?『これがクロだったらなあ…』って思ったらめちゃくちゃ感じたり……あっ、ごめんって!もう言わない!もう言わないから!!
辛いのはおつとめの次の日でね。決まって熱が出て、吐くし下すしもう大変でね。数日はお客を取れない有様だったんだけど、まあそれが『限定品』ぽくて良かったらしくてね?テレビで見る芸能人とか政治家さんとか予定がぎっしりでさあ。いつまで苦しい思いするんだろ?って思ってたらこの世界に来てた。
『クロ』が僕を忘れてたのはショックだったけど。もうほんと、すっごい悲しかったけど!!……でもねえ、僕、そんなに悲観してなかった。だってクロは忘れちゃってもきっとまた僕を好きになってくれるって思ってたし。え?自惚だよ?だって椿、椿は僕のこと初めから好きだったでしょ?僕ねえ、椿の…クロの一番であり続けるためにすっごいすっごい努力してたんだあ。気付かなかったでしょ?あっくんもちーちゃんも、ひーちゃんもあおくんもしーちゃんもみんなクロが好きだったからね!僕がんばったよ!……えー?そんなわけないって…もう、椿ったら、自覚してよ!椿は僕たち兄弟の中でもすっごい人たらしなんだからね!僕が睨みを効かせてなかったら絶対あっちこっち大惨事なんだからね!!
むー!えー…と、そうそう、家族、家族だ。僕ねえ、友達もいなかったし教団では浮いてたし、椿だけでいいと思ってた。でもねえ、正宗くんがアヴァロンに来て、福郎くんが来て、クリスが来て、ルーカスとアレクとロゼちゃん、他のみんなも居てね……。なんかね?血の繋がりなんかなくても、あっ、これが家族なんだ、て…。僕の狭い狭い世界を変えてくれたのは椿なんだ。家族をくれたのは椿で、嬉しいとか楽しいとか、大好きを教えてくれたのも椿だよ。
ありがと、椿。僕だけじゃきっと、ヴァルハラに引きこもって寝て過ごしたよね。こんなにあたたかくて優しい気持ちも知らずに1000年も。
僕を、僕にしてくれてありがとう、椿。
大好きだよ。これからも……よろしく、ね?
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