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【椿独白】最低だった
しおりを挟む俺たちは子供の時からの幼馴染だった。
ああ、もちろん自分たちが『人間』だって疑いもしなかったし、実際、産んだのはそれぞれの母親で、タネは父親だしな。
立場も家庭環境も違う俺たちは、偶然、その小さな公園で遊ぶ『仲間』だった。
俺たち7人の中で、アキは特に小さくてさ。みんなで弟みたいに可愛がってた。小さいくせに走り出したらめちゃくちゃ早くてさあ……追いかけっことか大変だったよ。
そのうち、俺たちはそれぞれの家の問題でその公園に行けなくなった。一人減り、二人減り……いつのまにか俺たちは『子供』じゃなくなってた。
それぞれの抱える問題で、俺たちは毎日必死だった。
たまに学校で見かける幼馴染が酷い顔色でも、包帯だらけでも、脚を引き摺って歩いてても、おかしな噂がまことしやかに流されていても。俺たちは互いに無関心だった。
無関心であり続けないと。
自分が壊れそうだった。大丈夫。まだ、大丈夫。そう誤魔化してた。
俺じゃなくても、誰かがあいつを助けてやれる。
………最低だよ。俺たちみんな、最低だった。
それぞれの『世界』が壊れた瞬間に、俺たちは『親父』の管理する空間に転移(とば)された。
もうね、みんな見事にボロボロだったよ。
特に酷いのが ーーー アキだった。
素っ裸で、血塗れで、刃物を握りしめて座り込んでた。目はぼんやりと、何も見てなかった。駆け寄って、抱きしめたら……血だけじゃなくて、精液とか髪の毛にくっついてたり。
その時気付いた。
アキは ーーー 子供に戻ってた。
学校でチラッと見たアキは、俺たちと同じようにちゃんと背も伸びてたのに。
この世界に来たアキは、俺たちと転げ回って遊んでた頃の姿だった。
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