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最終話
しおりを挟むあの後、モールドレ軍はエイリヒサを瞬く間に飲み込み、近隣諸国をも蹂躙した。
この世界全体で同様のことが起こっている。この世界をグルリと取り囲んでいた魔王たちが一斉に世界を飲み込んだ。千年も大人しくしていた魔王たちがまさかいきなり牙を剥くとは思わなかったのだろう。世界征服は意外とすぐだった。
魔王の伴侶と養い子たちは、愛と覚悟を見せるためにそれはもう努力した。頑張った。手を緩めずに壊して殺して鏖だ。
俺たちのことを「ひとでなし」「裏切り者」と罵る者も多かったが知ったことか。これは生存競争だ。《古きものども》と《7支族》が争いあって共倒れし、《神》が漁夫の利で世界を支配したように。《星辰》の為に俺たちが手を組んで世界を奪い返してなにが悪いんだ?
奴隷になるなら生かしてやる、といえば下る者も少なくなかった。
その中に、ユスティアの娘イレーヌが居た。
俺の娘だからって贔屓はいかんと無視していたら泣かれた。内心あわあわしてたらワンさんが爆弾発言。
「婿くん、私の嫁を泣かさないでくれ給えよ」
…………は???
思考停止した俺に、イチがちゃんと説明してくれた。
どうやらワンさん、俺をコレクションにできなかったから、ハイヒューマンの血を俺の次に濃く受け継いでいたイレーヌに「コレクションにならないか?」とオファー。娘承諾。…‥なあ、もうちょっと悩もうよイレーヌ。面白い娘だなあとワンさん、ちょくちょくイレーヌの様子を見に行ってたら気に入っちゃって、まあそれなら短い人間の一生くらいの時間、人間の嫁がいても良いのか…ってなったらしい。
「お、お……お父様…ごっ…ごめ……ごめんなさ…い、おと…うさま……おとうさま…ご…ごっ……めっ…………!」
ああ…もう。涙と鼻水で綺麗な顔がグッチャグチャじゃねえか。
アキも嫌がってないみたいだし……と、とりあえずギュッて抱きしめたらさらに泣かれた。えーと、イレーヌ?仮にも元令嬢が「ウバアアアアアアアアアア」みたいなギャン泣き……あっ、いいの?そう?…いいんだ……。
さらに奴隷の中には旧ヴェルミア領の私兵たちもいて、そっちはニィヤが気に入って軍に組み込んだ。
こっちの世界の征服が終われば、俺たちは次元を渡り歩く。殺して壊して、かなり殺伐とした生活になるんだろうが、まあ……アキがいれば大丈夫だと思う。
《古きものども》はこの地でそれぞれの伴侶を見つけるようにと《星辰》たちに命じて千年も待った。あの子たちには7支族を引っ掛けろとは一言も言っていない。
まあ、そういうことだ。
これから血腥い戦いに身を投じる息子たちの癒しとなるように伴侶を持たせた。まあそれが7支族の末裔たちだっただけなのだろう。デレが過ぎるわ《古きものども》。
転生したら悪役令嬢の父だったらしいけど、色々あって魔王の伴侶になりました。
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『強欲の魔王編』終了です。ありがとうございました。次回はここから時間が遡っていくことになります。
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