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【眷属(紅葉)視点】
しおりを挟む千早様が伴侶を連れてきた。
喜ばしい!何という僥倖!!奥手だとかいう前に、恋愛感情をいと尊き御方々が入れ忘れたのかと思うような千早様。どんな美姫を贈られても、絶世の美女が命乞いをしても笑って首を刎ねる我が主。その主がまさかの一目惚れ!!
ご自身の上着で包んだのだろう。千早様の伴侶は黒いコートに包まれて眠っていた。履物を履いていないところをみると、裸…もしくは裸同然の姿で攫ったのか。あの戦闘以外に興味を示さない千早様が……誰かに優しくしている…だと!?
千早様の腕に抱かれて眠っている伴侶は、絶妙な色合いの薄紅色の髪。伏せられた睫毛は長く、まだ小さく細い足がゆらゆら揺れていた。べったりと他の雄の匂いが付いていたが、そのうち千早様の匂いしかしなくなるだろう。流石は千早様。奪ってきたのか。こんな上等な雌を。
部屋に連れて行くとハンドサインをもらったが……ちょっと待て。千早様の部屋というのはあそこだ。このバベルの最上階……腐海じゃないか!?
「千早様…っ!」
慌てて呼び止めたが聞こえてない。当たり前だ。千早様は聞こえない。それが界を渡る代償だったのだから。
大変だ、こうしてはいられない…!
「大至急倉庫を空けさせろ。千早様の部屋のガラクタ……じゃない、私物を一時保管するんだ。料理人は雌の好みそうな料理と飲み物の準備!」
伴侶を連れてくるなら事前に言ってくださいよ、千早様!!
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