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【近衛騎士視点】
しおりを挟む信じられない事が起こった。
魔王軍との交戦中、陛下が何事かを叫びながら駕籠から飛び出した。
「…わた… わた、しの……! が…! わ た、……あ… ああああ!! わ たs…の、つ がい… が…!!」
つがい?
……いいやそんなはずはない。陛下に番は遂に現れなかった。だから狂った。壊れた。ああ、陛下はもう……脳まで壊れかけているのか。陛下の体がドロリと溶け、真っ黒なマグマのようなソレが大地に広がり……巨大な竜になる。
GYAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOUUUUUUU!!!!
けれど、その姿はドロドロと崩れ、再生し、足元の兵士の死体を取り込み、また崩れていく。我が国の精鋭たちを切り裂いて、陛下の前に魔王が立つ。
「……ははっ!良いザマだなあトカゲ野郎。ほら、さっさと立てよ?遊ぼうぜ?」
返り血で真っ赤に染まった魔王は傲岸不遜に笑った。鼓膜を破るような竜の咆哮。立ち上がり、翼を大きく広げた陛下であったなにかは魔王に突進 ーーー
できなかった。
信じられない。足元に、取り込まれた筈の兵士の死体が無数に縋り付いていた。
ズ……ズ、ズズズ…………ン!
その巨体が倒れ伏す。
なんだ、これは!?死者が…動いている…!?
御伽噺では死者が動いたりする事がある。だがこれは現実だ。陛下の足に縋り付く彼らは、四肢が捥げ内臓をぶち撒け、首が無い者までいる。生きているはずがない!!
「………ああ、うちの嫁がやったな…」
魔王が笑う。楽しくて堪らない、といった風に。嫁……?…まさか…!?まさか、あの蓮花色の瞳のあの子供、か?あの子供が、死者を、蘇らせた!?そんな事ができるのは御伽噺の…あの……
「………《聖龍》、なの…か?」
「動けねえなら歯応えねえけど……まあいいや。寸刻みに削ってやるよ」
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