【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

とうや

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【国王視点】「平民を2人売り飛ばしただけで」

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息子の世話係をさせていた平民を魔王に売り飛ばして2日目。辺境領に婿に行かせた弟が血相変えて登城してきた。


「なんということをしてくれたのですか、兄上!?」


弟はあの平民を気に入っていた。男でありながらあれほどの美貌だ。稚児にでも欲しかったんだろう。弟は事あるごとに「大切にしないなら養子にくれ」と言っていたのだから…。


「アレは《古代種ラナー》ですよ!?生まれながらに『大海の女帝ラン』の加護を持つ血族です。1代限りではない加護を持つ、希少な血だったのに…!!」


なんと!加護持ちの血族とは…!弟はどうやら娘と結婚させて『らなー』とかいう血族の加護を引き込もうと画策していたらしい。何故それを早く言わんのだ!?


「それなら奴の親を捕らえればい。港街オウルの平民であろう」

「とうの昔に調べさせました。そうです」

「……む…」

「23年前、街にふらりと流れてきた女が産んだ子供。教会の記録など漁らずとも、街の人間の殆どが知っていましたよ。『身重の女ばかり拾うお人好しのブライアン』とね」

「その ーーー 、女は?」

「死んだそうです。遺体はオウル式で海に流した…と」

「なんということだ…!」


平民を2人売り飛ばしただけで、大損ではないか!?


「陛下、私もお話が御座います」


いつのまにか入室していた神官長が頭も下げずに私を睨んでいた。


「聖女様を売った、とはどういうことですか?聖女様は我が国の結界を維持するために、毎日魔力を捧げてくださっていました。治療院にも足繁く通っていただき、傷を負った聖騎士や民たちを分け隔てなく癒しておいででした。次代の聖女や聖騎士を育成するために神殿直轄の孤児院への慰問も行って頂いておりました。それを売った、とは…?」

「あっ…新しく聖女に任命したスタンスフィールド公爵令嬢がおるではないか?スタンスフィールドの娘は先読みの聖女だと……」

「先読みなど、とうの昔に聖女様が書き記して下さっております。聖女様が先読みし、兄上様がそれを読み解き、私たちにもわかるよう丁寧に教えてくださり、共に数多の災害や人災を乗り越えて参りました。あのご兄妹きょうだいは救国の聖女と騎士様ですぞ?それなのに、あのお二方を ーーー 売った!?なにをお考えですか!!」

「ヒィッ…!ど、ど…怒鳴るでない!」

「魔王が聖女様と兄上様を連れ去ってから、信託の巫女に降りていた神の神託が途切れております。これがどういうことかご理解されておられますか?スタンスフィールドの娘は聖女に任命されながらも一度も神殿を訪れておりません。結界も弱まり、あと10日もつかどうか……」

「わ…わかった。スタンスフィールド公爵令嬢を早急に神殿に向かわせよう」


スタンスフィールド公爵の娘はなにをしているのだ!?


「陛下、俺もこのままリアムが戻らぬようなら ーーー この国を出ようと思います」

「………は?」


弟の隣に立つ魔道部隊長が口を開く。


「お忘れかも知れませんか、俺は10です。サイラス王弟殿下の穴を5年…いや3年でいいから埋めてくれ。その後は1年刻みの更新でいい。そういう契約で雇われただけの冒険者です。契約が切れればすぐに去ろうと思いました。メンドゥサ国はあまりにも魔導に対する認識が低い。そして俺の魔導研究を理解する者は皆無だった。そんな時にリアムが現れた。見習い騎士だったリアムは魔法と魔導の成り立ちを教えると砂のように吸収していった。俺の元を訪れるリアムが楽しみで、1年、また1年と契約を長引かせてしまった。リアム以外に俺の魔導理論を理解する者はいないのに…」


忘れていた。魔術に長けた末の弟のサイラスの抜けた穴を埋めるためにのがこの男だった。


「俺は、今年こそリアムを連れてもう一度冒険者に戻るつもりだった。それが…それが……!!………もう、いい!俺がかつての仲間を集めて魔王を討伐する!!斃せなくともリアムを取り戻す!!!」






思い出した!此奴、勇者パーティーの魔道士だった!!










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