【7人の魔王2】してもない婚約を破棄された聖女の兄なのだが、なんだかんだで魔王の嫁になっていた。

「してもない婚約を破棄してまで結婚したかったんだろう？」

「なにが解決なんだよこのクソバカ王太子？」

「わ…私とシャーロットが結婚すればお前は帰ってくるんだろう？お前はシャーロットをまるで恋人のように大事にしている。シャーロットが幸せになれば文句はないのだろう？ああ…だがエレオノーラは公爵家の娘だからシャーロットは第二妃になるが、元平民の男爵令嬢としては破格の扱いだ。心配するな、私はシャーロットを愛してはいないが正妃であるエレオノーラと同じように閨にも訪れてやろう。そうすればお前は今まで通り私の世話をし、シャーロットは聖女としてもう一度メンドゥサ王国に結界を張るんだ！これで全ての問題が解決する！」

「………忘れてたよ、お前が修正不能なくらい馬鹿だってこと…」


このバカ…頭湧いてんじゃねえか！？俺たちに利益が欠片もねえ！！シャーロットが聞いたら「きっも！きっも！！」と鳥肌を立てて叫ぶだろう。あいつが自分の部屋に下がっていて良かった。


「シャーロットは私の妻になるんだよ、ジェームズ？」


どこにいたのかニコニコしながらサイラスが立っていた。


「……にい、さま…？」


そう、10年前、生贄として沈んでいくサイラスをバカ王太子はそう呼んでいた。歳も近かったし、容姿も似ていた。……まんまるで。今のサイラスは栄養失調から回復して筋肉もついている。肌も髪も海の魔女謹製の石鹸と洗髪剤で女子かと思うほどツヤツヤしている。とどめに妹との婚約で幸せオーラ全開だ。


「サイラス・メンドゥサは死んだよ？生贄になって王家に殺されたんだ。私はただのサイラス。海の魔女の弟子サイラスだよ。ハルフォード国王女のシャーロット殿下との結婚の報告に来たんだ。……で？私の愛しいシャーロットを第二妃にしてやるというのはどういうことだい？」

「は…？え……あ、あの…どう、とは………」

「正妃を迎える前に第二妃を迎える算段をするなんて、いつか背中から刺されるよ？ええと…ほら、君の隣に居る……なんといったかなあ…スタ…スタバ？スタンドプレー？タンス貯金令嬢？だっけ？お前にはあの子くらいで良いんじゃないかなあ？シャーロットから聞いてるよ？してもない婚約を破棄してまで結婚したい恋人なんだろう？」


ウワア怒ってる怒ってる…。サイラスがブチ切れてるのは初めて見た。いつも「ござるよ～」って言ってるイメージしかないからなあ。


「ではリアム様はわたくしと結婚すると良いですわ！」

「？？？」


さっきまでションベン漏らしてたクソ売女がなんか言い出した！？この流れでなんでそういうことになるんだ！？