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「たとえ世界を壊しても」
しおりを挟む目が覚めたら大変なことになっていた。
碧海の声が聞こえて。歌っているんだと気付いた時には恐ろしい地響きが襲ってきた。
「……!?碧海!」
「あっ、おはようリアム!見て見て、これ!」
碧海の手の中には青い石。
「えっ……」
ああいや、ちょっと待て。なんだかいっぱいいっぱいだ。何がどうなってるんだ!?
ズボンだけ穿いて外に出る。碧海は「外なんかどうでも良いじゃない」って言ってたが……良いわけあるかバカ旦那め!!
結果。
………海の向こうが荒れに荒れていた。大荒れだ。きっとメンドゥサ方面。荒れ狂う波と風の音と、麗しい人魚たちの歌と嬌声が入り混じる。
「…………」
碧海の機嫌が治ったから終わったんだと思ってた。荒れるなんて杞憂だったよな…って。
「え…えと……あのね、リアム?僕その…嬉しくて……つい、ね?」
要するに、だ。
昨日の子作りで、俺と碧海の卵ができたらしい。……うん、まあそれはいいんだ。すごく喜ばしい。俺も碧海の心的外傷を1日でも早くに取り除いてやりたかったし。碧海も喜んでくれてすごく嬉しい。
だがうちのポンコツ旦那、嬉しすぎて歌ってみたら歌えた…と。その後で自分の歌がこの異世界でどんな力かも知ったらしい。
深い溜息を吐くと、眉尻をこれでもかと下げまくってる碧海がいる。
こんなに酷い所業に『仕方ないな』で済ませようとしている俺は、もう人類としてはおかしいのだろう。《星辰》である碧海と生きていくのは問題ないから良いのか。
「………仕方ないな、次は気をつけような?」
両手を広げてやると、碧海は泣きそうな顔をして抱きついてきた。バカだなあ…このくらいで俺がお前を嫌うはずないじゃないか。
なあ碧海?なんだかんだで流されて魔王の嫁になった俺だけど、俺はお前と生きていくのを選んだんだ。
生きていこう。
たとえ世界を壊しても。
**********************************************
次回最終話です。
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