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仲直り
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「一体なにがどうなったらこうなるの?」
「分からないです、はい」
物憂げな表情は一転、眉をつり上げてお怒りモードだ。可愛いけど。そりゃ自分ん家の近くの地形が変わればそう思うよね。
「えっと、ケイは何か目的があるって言ってたわよね。これがその目的だったの? それなら一言欲しかったのだけど」
「いや、まさかこうなるとは夢にも思わなかったよ。
最初は湧き水を浄化して、みんなでお風呂に、温かい水浴びができたらいいなって思ったんだ」
こんなことなら、びっくりさせてやろうとか思わずにちゃんと言っておけばよかったよ。
「で、浄化しているうちにこうなった?」
「そうです」
「うーん」
納得できないようだ。僕もまだよく分かってないからね。いやほんと、申し訳ない。
「ベス、ケイの話は本当だ。私も全部見てたし。途中までは普通だったんだ。
でも中央の湧き水のがうまく浄化できなくて近くでやろうって話になってな」
プテュエラが援護射撃してくれる。うう、ありがたい。フレイムベアステーキニンニクマシマシにしてあげよう。
「あっ、違うのよ。ケイの話を疑ってる訳じゃないの。まあ最初は驚いたけどね」
「そうなの?」
「ええ。それよりなんで急に水が吹き上がったのか詳しく教えてちょうだい」
僕は言われるがままに話した。
「つまり、中央の湧き水を浄化するとき妙な手応えを感じたのね?」
「うん。何か押し戻されるというか変な感覚だったよ。それで潰れるような音がしたあと吹き上がってきたんだ」
「なるほどね」
ベステルタは黙り込んでしまった。
「あ、あのベステルタさん?」
「ああ、ごめんなさいね。
その話、たぶんシュレアが訊きたがると思うわ」
「そうなの?」
シュレアさんは研究狂いなんだっけ? いやそれはあんまりだから研究気質とでも言おうか。なんか調査でもしてるのかな。
「あの子はね、絶死の森について一人でずっと調査してるのよ」
「一人で?」
一人で調べるには広すぎないか、この森。
「何度も協力を申し出たけど突っぱねられちゃったのよ」
うーん、癖が凄そうな人だな。
「でもよかったわ。あの子ひねくれてるから来ないって言いそうだったけど、その話なら絶対訊きにくるはずよ」
ひねくれてるけど、使命感ある感じか。あーいるね、そういう人。気難しいけど頭よくて、仲良くなるとめっちゃ面白いやつなんだよね。大概は。
「絶対?」
プテュエラにも訊いてみよう。
「ああ、私の知ってる彼女なら絶対だ」
ふむ、それなら大丈夫か。さんざん探したのに、徒労に終わったら悲しいしね。そしたらしっぽり慰めるだけだけどね。
「なるほどね。まあ、続きは温泉入ってからにしようか?」
「それもそうね。せっかくの据え膳だしね」
そう言ってペロッと舌を出す。
なんかベステルタはたまにおじさんっぽいんだよなあ。面白いからなんも言わないけどさあ。
「あら……ちょっと荒いけど良い雰囲気じゃない」
「もうちょい見映えよくしたいんだけどね」
「伸びしろがあるってことよ。頑張りなさい」
伸びしろ、いい言葉だ。
現状、いい感じの水温のところを岩や石で囲っただけだからね。湧き水付近はかなり熱くて人には厳しかった。プテュエラは平気そうだったけど。
もっとこう、岩をつるつるにしたり足元を補強したい。元から砂利が多かったから土で濁らなかったのが救いだね。
「プテュエラ」
「心得た」
彼女はそう言うと、例の風魔法を周りに展開し、岩を座れるようにくりぬき始めた。これもあらかじめ打ち合わせしておいたことだ。極力水しぶきを立てず、岩を繊細に刻んでいく様は魔法を知らなくても「これヤバイんじゃね」と思わせる。
「できたぞ。ベス、腰かけてくれ」
「ふふ、ありがとう。でもプテュエラも一緒よ? お世話するのはケイだけでいいの」
さいですか。
「い、いや」
「ほら、わたしたちの仲でしょ。友達なんだから、大切な。主従関係じゃないのよ?」
遠慮するプテュエラを隣に座らせるベステルタ。それがいいね。友達は仲いいのが一番だ。僕にとっても保養になるしね。がんぷくがんぷく。
「それじゃあ入ってみてよ」
「では、お言葉に甘えて。……あああぁー」
ベステルタが艶っぽい声を出して湯に浸かる。教育に悪いな。
「くっ、ふううぅー。これやばいわね」
「だよな? 私も一撃でやられた」
あはぁぁー、といい表情。やっぱ風呂は最高だぜ。
「ケイ、申し訳無いけどお酒出してくれない? 待ちきれないわ。久しぶりなのよ」
「すまない。正直私も待ち遠しい」
これはこれは。二人とも辛抱たまらんという顔だ。よしよし、それじゃあ異世界酒を振る舞っちゃおうかな。
「ちなみに二人が飲んだ酒はどんなの?」
「例の助けた商人がくれた赤とか白のお酒よ。ブドウの味がしたわ」
特徴的にワインっぽさそうだな。よかった。
「渋かったけど飲んでいくうちにうまくなっていったな。いつの間にか無くなっていた」
「あれは悲しかったわね……」
「ああ、フレイムベアに負けるより悲しい」
何もしていない先輩を引き合いに出さないで下さい。そのうち単位にされそう。その街の軍事力がフレイムベア何頭みたいな。
「それは多分僕の世界にもあるやつだね。今から出すやつは同じくらいメジャーなやつなんだ。まずは弱い方から出すね」
魔法の鞄から取りだしたるは、ジャパニーズ・サケ『日本酒』だ。やっぱり温泉には日本酒でしょ。
用意した木のカップに注いでいく。ほんとならお猪口がいいのだけれど、それは仕方ない。がまんがまん。
「すごい澄んでるわね。見てよプテュエラ」
「ああ、すごいな。水にしか見えないのに甘いような独特の香りがある」
ふふ、日本酒は最高だ。二人にも堪能してほしい。
「それじゃあ、皆さんお疲れ」
「疲れてないわよ?」
「そういう挨拶なんだよ」
「ふぅん? お疲れ様」
「おつかれ」
「ぐいっといきましょう」
プテュエラの言い方が様になっていたのはスルーしよう。
くっ。
……ぐびっ。ぷはぁ。
あーっ、うめっ! 酒ウメッ! このために生きてんなぁ!
「くーっ。最高だな。二人はどう?」
「やばいこれ」
「なあこの水どこに流れてるんだ?」
あっ、二人ともいい感じにワケわからなくなってる。二人とも怖いくらいに真顔だ。
「んっんっ。あっこれだめだわ。先に言っておくわね。明日からプテュエラと交代で訓練するから。もうちょっと強くなりましょ。おかわり」
「んぐっ、んぐっ。ふざけた冒険者くらい小指でぶっ飛ばせるくらいにならんとな。こっちもだ」
おちょこではない普通のカップに注いだんだけどもう飲み干してしまった。コス茶みたいに飲むもんじゃないんだよ、それは。
あと、強くなる必要があるのは、まあ分かるけど。どのくらいを目指すのかな。
……まさかフレイムベア単独撃破とか言わないよね。ビル一人で崩せって言ってるようなもんだからねそれ。
「最終的にはそこを目標にしたいわねー」
「男ならフレイムベアくらい一人で狩れないとなぁ」
ゴッゴッゴッ。
麦茶みたいにごくごく飲んでいく。見てて恐ろしいよ。亜人の肝臓は化け物か。
もういい感じに酒が回ってきている。
「んー、でも最初はどこら辺から相手させましょうか? フレイムベア以下の魔獣なんて普段気にしないから分からないわ」
「あんま強くないのでお願いします」
「近距離、遠距離で一体ずつ選ぼうか。私は遠距離を担当しよう」
「となるとわたしは近距離か……。うーん、デイライト周辺だとどこら辺がいいのかしら。難しいわ」
「あ、あの。あんまり強くないのでお願いします」
僕は既にお酒注ぎ機と化している。くっ、このまま酔わせて前後不覚してやらねば。
「あ、私は思い付いたぞ。マスキュラスだ。あの気持ち悪い鳥。確か火魔法使うからな。そこそこ量もありそうだった。決まりだな」
「うっわ。マスキュラスなんて久しぶりに聞いたわ。よく覚えてたわね。うーん、あっ。それならダイオークにしましょう。人間相手ならタフだし、動きも鈍いからちょうどよさそう」
火を使う鳥と、やばそうなオーク。僕生き残れるのか?
「ささっ。お次はウイスキーという強い酒だよ。ぐいっといっちまいましょう」
「あら、こっちも綺麗な色ね」
「琥珀色だ。酒精が強そうな香りだな」
開封したウイスキーは黒いジョニーが歩いてるやつだ。量はけっこうある。……さすがに一本で済むよね?
「! けほっ! げほっ!」
「むぐぐ……。ケイ、これはほんとに飲み物なのか?」
二人とも何も言わずストレートていった。そりゃそうなるよ。
「まだ何も言ってないのに飲むからだよ。一応そのままで飲むのが好きって人もいるけど、基本的には氷や水で割るものだからねそれ」
美味しいウイスキーは水を一滴垂らすだけで随分薫りが変わって素晴らしいんだよね。あの変化が好きなんだ。
「あー、これいいわー。この木みたいな匂い? 今まで味わったこと無いわ。頭がぽやぽやする」
「私これすごくすき」
プテュエラがカタコトになっちゃったよ。
「つまみにジャーキー出すね」
旨い酒にはしょっぱいつまみと相場は決まってるからね。
「むぐむぐ。これも塩が効いてて最高ね。他にも色んな味するけど美味しすぎてもうどうでもいいわ」
「うん」
味わうベステルタと夢中で食べるプテュエラ。酔うと対照的になるなあ。
そんな感じでしばらく飲み食いの音と湯が岩を打つ音しか聞こえない、静かな時間が続いた。
「よし!」
切れ長クールな顔を真っ赤にしたプテュエラが叫ぶ。
「あはは。どうしたのよプテュエラあははは」
ベステルタも唐突に笑い出す。こえーよ。
「仲直り繁りするぞ!」
「あはははは、なによそれ、あははは」
地獄だ。僕しか素面がいない。もう誰にも止められない。僕は運命を覚悟した。
「ケイが恥ずかしがる私に無理やり言わせたんだ! 繁るって言えって!」
「あはははは、最低ね!」
ナチュラルに罵倒しないでよ。
「繁るぞ!」
「繁るわよーあははー」
というわけで繁った。芯まで暖かくなった。湯煙が立ち込め、時折激しく水面が揺れる。どこか夢の中にいるみたいだけど、現実なんだよね。三人、無我夢中で仲直りした。
酔いが冷めると、皆無言になってプテュエラに乾かしてもらい家に帰って寝た。殆ど何も言わなかったけど、寝床では皆いつもよりくっついて寝た。
「分からないです、はい」
物憂げな表情は一転、眉をつり上げてお怒りモードだ。可愛いけど。そりゃ自分ん家の近くの地形が変わればそう思うよね。
「えっと、ケイは何か目的があるって言ってたわよね。これがその目的だったの? それなら一言欲しかったのだけど」
「いや、まさかこうなるとは夢にも思わなかったよ。
最初は湧き水を浄化して、みんなでお風呂に、温かい水浴びができたらいいなって思ったんだ」
こんなことなら、びっくりさせてやろうとか思わずにちゃんと言っておけばよかったよ。
「で、浄化しているうちにこうなった?」
「そうです」
「うーん」
納得できないようだ。僕もまだよく分かってないからね。いやほんと、申し訳ない。
「ベス、ケイの話は本当だ。私も全部見てたし。途中までは普通だったんだ。
でも中央の湧き水のがうまく浄化できなくて近くでやろうって話になってな」
プテュエラが援護射撃してくれる。うう、ありがたい。フレイムベアステーキニンニクマシマシにしてあげよう。
「あっ、違うのよ。ケイの話を疑ってる訳じゃないの。まあ最初は驚いたけどね」
「そうなの?」
「ええ。それよりなんで急に水が吹き上がったのか詳しく教えてちょうだい」
僕は言われるがままに話した。
「つまり、中央の湧き水を浄化するとき妙な手応えを感じたのね?」
「うん。何か押し戻されるというか変な感覚だったよ。それで潰れるような音がしたあと吹き上がってきたんだ」
「なるほどね」
ベステルタは黙り込んでしまった。
「あ、あのベステルタさん?」
「ああ、ごめんなさいね。
その話、たぶんシュレアが訊きたがると思うわ」
「そうなの?」
シュレアさんは研究狂いなんだっけ? いやそれはあんまりだから研究気質とでも言おうか。なんか調査でもしてるのかな。
「あの子はね、絶死の森について一人でずっと調査してるのよ」
「一人で?」
一人で調べるには広すぎないか、この森。
「何度も協力を申し出たけど突っぱねられちゃったのよ」
うーん、癖が凄そうな人だな。
「でもよかったわ。あの子ひねくれてるから来ないって言いそうだったけど、その話なら絶対訊きにくるはずよ」
ひねくれてるけど、使命感ある感じか。あーいるね、そういう人。気難しいけど頭よくて、仲良くなるとめっちゃ面白いやつなんだよね。大概は。
「絶対?」
プテュエラにも訊いてみよう。
「ああ、私の知ってる彼女なら絶対だ」
ふむ、それなら大丈夫か。さんざん探したのに、徒労に終わったら悲しいしね。そしたらしっぽり慰めるだけだけどね。
「なるほどね。まあ、続きは温泉入ってからにしようか?」
「それもそうね。せっかくの据え膳だしね」
そう言ってペロッと舌を出す。
なんかベステルタはたまにおじさんっぽいんだよなあ。面白いからなんも言わないけどさあ。
「あら……ちょっと荒いけど良い雰囲気じゃない」
「もうちょい見映えよくしたいんだけどね」
「伸びしろがあるってことよ。頑張りなさい」
伸びしろ、いい言葉だ。
現状、いい感じの水温のところを岩や石で囲っただけだからね。湧き水付近はかなり熱くて人には厳しかった。プテュエラは平気そうだったけど。
もっとこう、岩をつるつるにしたり足元を補強したい。元から砂利が多かったから土で濁らなかったのが救いだね。
「プテュエラ」
「心得た」
彼女はそう言うと、例の風魔法を周りに展開し、岩を座れるようにくりぬき始めた。これもあらかじめ打ち合わせしておいたことだ。極力水しぶきを立てず、岩を繊細に刻んでいく様は魔法を知らなくても「これヤバイんじゃね」と思わせる。
「できたぞ。ベス、腰かけてくれ」
「ふふ、ありがとう。でもプテュエラも一緒よ? お世話するのはケイだけでいいの」
さいですか。
「い、いや」
「ほら、わたしたちの仲でしょ。友達なんだから、大切な。主従関係じゃないのよ?」
遠慮するプテュエラを隣に座らせるベステルタ。それがいいね。友達は仲いいのが一番だ。僕にとっても保養になるしね。がんぷくがんぷく。
「それじゃあ入ってみてよ」
「では、お言葉に甘えて。……あああぁー」
ベステルタが艶っぽい声を出して湯に浸かる。教育に悪いな。
「くっ、ふううぅー。これやばいわね」
「だよな? 私も一撃でやられた」
あはぁぁー、といい表情。やっぱ風呂は最高だぜ。
「ケイ、申し訳無いけどお酒出してくれない? 待ちきれないわ。久しぶりなのよ」
「すまない。正直私も待ち遠しい」
これはこれは。二人とも辛抱たまらんという顔だ。よしよし、それじゃあ異世界酒を振る舞っちゃおうかな。
「ちなみに二人が飲んだ酒はどんなの?」
「例の助けた商人がくれた赤とか白のお酒よ。ブドウの味がしたわ」
特徴的にワインっぽさそうだな。よかった。
「渋かったけど飲んでいくうちにうまくなっていったな。いつの間にか無くなっていた」
「あれは悲しかったわね……」
「ああ、フレイムベアに負けるより悲しい」
何もしていない先輩を引き合いに出さないで下さい。そのうち単位にされそう。その街の軍事力がフレイムベア何頭みたいな。
「それは多分僕の世界にもあるやつだね。今から出すやつは同じくらいメジャーなやつなんだ。まずは弱い方から出すね」
魔法の鞄から取りだしたるは、ジャパニーズ・サケ『日本酒』だ。やっぱり温泉には日本酒でしょ。
用意した木のカップに注いでいく。ほんとならお猪口がいいのだけれど、それは仕方ない。がまんがまん。
「すごい澄んでるわね。見てよプテュエラ」
「ああ、すごいな。水にしか見えないのに甘いような独特の香りがある」
ふふ、日本酒は最高だ。二人にも堪能してほしい。
「それじゃあ、皆さんお疲れ」
「疲れてないわよ?」
「そういう挨拶なんだよ」
「ふぅん? お疲れ様」
「おつかれ」
「ぐいっといきましょう」
プテュエラの言い方が様になっていたのはスルーしよう。
くっ。
……ぐびっ。ぷはぁ。
あーっ、うめっ! 酒ウメッ! このために生きてんなぁ!
「くーっ。最高だな。二人はどう?」
「やばいこれ」
「なあこの水どこに流れてるんだ?」
あっ、二人ともいい感じにワケわからなくなってる。二人とも怖いくらいに真顔だ。
「んっんっ。あっこれだめだわ。先に言っておくわね。明日からプテュエラと交代で訓練するから。もうちょっと強くなりましょ。おかわり」
「んぐっ、んぐっ。ふざけた冒険者くらい小指でぶっ飛ばせるくらいにならんとな。こっちもだ」
おちょこではない普通のカップに注いだんだけどもう飲み干してしまった。コス茶みたいに飲むもんじゃないんだよ、それは。
あと、強くなる必要があるのは、まあ分かるけど。どのくらいを目指すのかな。
……まさかフレイムベア単独撃破とか言わないよね。ビル一人で崩せって言ってるようなもんだからねそれ。
「最終的にはそこを目標にしたいわねー」
「男ならフレイムベアくらい一人で狩れないとなぁ」
ゴッゴッゴッ。
麦茶みたいにごくごく飲んでいく。見てて恐ろしいよ。亜人の肝臓は化け物か。
もういい感じに酒が回ってきている。
「んー、でも最初はどこら辺から相手させましょうか? フレイムベア以下の魔獣なんて普段気にしないから分からないわ」
「あんま強くないのでお願いします」
「近距離、遠距離で一体ずつ選ぼうか。私は遠距離を担当しよう」
「となるとわたしは近距離か……。うーん、デイライト周辺だとどこら辺がいいのかしら。難しいわ」
「あ、あの。あんまり強くないのでお願いします」
僕は既にお酒注ぎ機と化している。くっ、このまま酔わせて前後不覚してやらねば。
「あ、私は思い付いたぞ。マスキュラスだ。あの気持ち悪い鳥。確か火魔法使うからな。そこそこ量もありそうだった。決まりだな」
「うっわ。マスキュラスなんて久しぶりに聞いたわ。よく覚えてたわね。うーん、あっ。それならダイオークにしましょう。人間相手ならタフだし、動きも鈍いからちょうどよさそう」
火を使う鳥と、やばそうなオーク。僕生き残れるのか?
「ささっ。お次はウイスキーという強い酒だよ。ぐいっといっちまいましょう」
「あら、こっちも綺麗な色ね」
「琥珀色だ。酒精が強そうな香りだな」
開封したウイスキーは黒いジョニーが歩いてるやつだ。量はけっこうある。……さすがに一本で済むよね?
「! けほっ! げほっ!」
「むぐぐ……。ケイ、これはほんとに飲み物なのか?」
二人とも何も言わずストレートていった。そりゃそうなるよ。
「まだ何も言ってないのに飲むからだよ。一応そのままで飲むのが好きって人もいるけど、基本的には氷や水で割るものだからねそれ」
美味しいウイスキーは水を一滴垂らすだけで随分薫りが変わって素晴らしいんだよね。あの変化が好きなんだ。
「あー、これいいわー。この木みたいな匂い? 今まで味わったこと無いわ。頭がぽやぽやする」
「私これすごくすき」
プテュエラがカタコトになっちゃったよ。
「つまみにジャーキー出すね」
旨い酒にはしょっぱいつまみと相場は決まってるからね。
「むぐむぐ。これも塩が効いてて最高ね。他にも色んな味するけど美味しすぎてもうどうでもいいわ」
「うん」
味わうベステルタと夢中で食べるプテュエラ。酔うと対照的になるなあ。
そんな感じでしばらく飲み食いの音と湯が岩を打つ音しか聞こえない、静かな時間が続いた。
「よし!」
切れ長クールな顔を真っ赤にしたプテュエラが叫ぶ。
「あはは。どうしたのよプテュエラあははは」
ベステルタも唐突に笑い出す。こえーよ。
「仲直り繁りするぞ!」
「あはははは、なによそれ、あははは」
地獄だ。僕しか素面がいない。もう誰にも止められない。僕は運命を覚悟した。
「ケイが恥ずかしがる私に無理やり言わせたんだ! 繁るって言えって!」
「あはははは、最低ね!」
ナチュラルに罵倒しないでよ。
「繁るぞ!」
「繁るわよーあははー」
というわけで繁った。芯まで暖かくなった。湯煙が立ち込め、時折激しく水面が揺れる。どこか夢の中にいるみたいだけど、現実なんだよね。三人、無我夢中で仲直りした。
酔いが冷めると、皆無言になってプテュエラに乾かしてもらい家に帰って寝た。殆ど何も言わなかったけど、寝床では皆いつもよりくっついて寝た。
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