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狂信者こわい
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「フェイさん、病人を集めてくれますか」
「病人を? 突然どうしたのですか?」
美味しそうにダイオーク猟師鍋を食べていたフェイさんが怪訝そうに言う。
「広域浄化魔法で全員まとめて治療します」
「……正気ですか?」
心配されてしまった。いやまあそうなるよね。
「正気です。毎日亡くなっている方が多いんですよね? 特に症状が重い人を優先で」
「……ケイ殿、貴方には既に多大な恩恵を受けております。炊き出しに仕事の斡旋まで。外野から口だけ出す者はいましたが、貴方のような方は初めてです。スラムを代表してお礼申し上げます」
「あ、はい」
すっ、と佇まいを直してお礼をされた。
「ですが、流石にそれは信じられません。病気を治す魔法が存在するのは知っております。しかしそれは非常に高額かつ高位の神官しか使えません。ましてや広域浄化魔法、ですか? そんなもの……神か、神の使徒にしかできませんよ」
なんだ、できるじゃん。
「僕がその使徒ですよ。ジオス神の使徒ですが。それでフェイさん。スラムとそれ以外の境界線って見れば分かりますかね?」
彼は目を白黒させている。混乱しているようだ。なんか楽しくなってきたぞ。
「へ? は、はい。スラムは見た目が古いですし、区別するための柵が設けられていますから一目瞭然ですが……し、使徒?」
よし、そういうことなら問題ないな。ジオス神の評判を高める良い機会だ。
うーん、やっぱり待ってたらいつまでかかるか分からない。やると決めたなら、迅速にやってしまおう。
(そんなこと言って、全然できなかったら笑うけど)
内心ひやひやしながら浄化範囲を頭で念じて指定してみる。お、かなり広く使用できそうだ。これなら大丈夫かな。何回か使えば広範囲をカバーできるだろう。
『プテュエラ、降りてきて僕を空まで運んでくれる? 上空から一気にこのスラムを浄化するよ』
なんか粛清みたいな言い方だけど、もちろん違うからね。
『いいのか? 目立つぞ?』
『この際仕方ないよ。それなら逆に派手にやってジオス神と亜人の名前を高めるさ』
『ふふふ、何だか楽しそうだな。ケイも亜人の契約者としての振る舞いが分かってきたみたいだな』
チャンネル越しにプテュエラの嬉しそうなバサバサ音が聞こえる。契約者ってそういうもんだっけ?
「敵襲かっ!」
速攻でプテュエラが僕の隣に降りてきて、強風とただならぬ気配にフェイさんが臨戦態勢をとった。
「違いますよ。僕の契約亜人です。さっきも説明しましたが僕はジオス神の使徒で複数の亜人と契約しています。後日、入信してもらう時にも説明されると思いますが、アセンブラ関係者には秘密にしておいて下さい」
まあ少なからずバレる気もするけどなー。
プテュエラに言って風をまとい飛ばしてもらう。
「う、浮いた!」
「おいッ! ケイの旦那が浮いてるぞっ!」
「旦那、今助けますっ!」
あっ、ヒャッハーたちに説明してなかったから大騒ぎしている。ミスった。ベステルタに大丈夫だと言ってもらおう。ていうか彼らもちょっと前までめっちゃ僕の事睨んでいたのに今じゃ旦那だからなあ。いいけど。
……ん? 何か契約者チャンネルの雰囲気がいつもと違う。何かこう、いつもより深く繋がっているような。このチャンネル、ここに繋げるんじゃないか?
ぱちっ。
『ん?』
『あら?』
『お?』
うわ、複数チャンネルが開設できた。もしかして、これが亜神の使徒の効果かな。すごい……のか? チャットルームだよね、これ。
『えっ、プテュエラ聞こえる?』
『おお! ベス、聴こえるぞ! これはケイの力か?』
『そうみたいだね』
いやー、これは便利だ。早速ベステルタに言ってヒャッハーたちを宥めてもらう。
「うおっ、な、何ですか姐さん」
「もしかして問題ないってことですかい?」
ベステルタが落ち着くようにジェスチャーをしてヒャッハーたちが戸惑いながらも従った。
ベステルタ、姐さんて呼ばれるのか……。それってどうなんだろう。
『大丈夫よ。ケイ、どうせなら派手にやりなさい。プテュエラ、よろしくね』
『もちろんだ』
そのままぐーん、と上昇してあっという間にスラムの真上に来た。
眼下にはみすぼらしい建物がずらりとならんで、それを囲むように柵ができている。なるほど、これがフェイさんの言っていた柵か。デイライトの光と影、貧富の象徴、境界線。
いつか取り払えたらいいね。
「プテュエラ! あの柵より内側に防音風壁を展開して! あと浄化の様子を外に漏らさないようにも!」
「ああ!」
すると、一瞬だけスラムを巨大な光のドームが包んで消えた。結構無茶なこと言ったけど、これで僕の声と浄化の様子は外に漏れないはず。
「そのまま風壁内に僕の声を響かせて!」
「任せろ!」
プテュエラが生み出した風が僕を包む。よし、これで準備はできた。
「あ、そうだ。カリンたちにも聞かせたいんだけど、ピンポイントで声届けられる?」
「造作も無いな……できたぞ」
プッさん頼もしい。こういう場面での応用力半端ない。
『あー、テステス。聴こえますか?』
『ばっちり聴こえてるわよ』
ベステルタから返答。問題無さそうだ。
今さらだけどこういう演説って何言えばいいんだろう。ちょっと緊張してきたぞ。でも、とにかく下手でも言うしかない。
『こんにちは、スラムの皆さん。突然申し訳ありません。僕はジオス神の使徒です』
ドーム内に僕の声が反響している。これなら大丈夫そうだな。
『我が主ジオスは、このスラムの状況を深く嘆いています。病魔が巣食い、不幸が蔓延っている闇を。我が主は僕に《闇を晴らし、浄化せよ》と仰りました』
まあそんなこと言ってないけど大丈夫だろ。ちょっとはそれっぽく言えているかな? なんとなく聖書をイメージしたんだけど。ただ我が主はなんとなく癪だ。
『これよりジオス神の御業にてこの街に光を取り戻します。少し先の未来、皆さんの病魔は消え去り、家族と笑えるようになります。
ただ、一つお願いがあります。ジオス教徒になってください。我が主ジオスには、ご存じの通り、過去の誤解のせいで信徒が少ないのです。皆さんの信仰心を我が神に分けてください。その代わり、皆さんの心の拠り所と平穏に力添えをするようにジオス神に進言します。どうかよろしくお願いします』
丁寧な口調だけど何も約束していない。まったく、これじゃ詐欺師だな。でも僕の両手には限界がある。いくらかの予防線はさせてもらおう。もちろん援助はするけどね。
『入信の方法はフェイさんに説明しておきます。直接僕のとこに来られても対応できないのでまとまって来てください』
これも言っておかないとな。ばらばらに来られたらさすがに対応できない。フェイさんなら人望ありそうだしうまくまとめてくれるだろう。
おっと、もう一つ言っておかないとな。
『もちろん、この提案を受け入れられなくても皆さんの病魔は浄化します。ただ、スラムの人間以外に話すのは厳禁です。この声も見えない防壁によって外には届いていません。それは他の神に、皆さんを救わなかった神に気付かれないためです。約束を守れない場合、やつらが何をするか分かりません。くれぐれも内密にお願いします』
しっかりアセンブラもディスっておく。
さて、こんなものかな。慣れない演説なんてするもんじゃないね。半ば脅しっぽいけど許してくれ。下からもざわめきが聞こえる。すっごい恥ずかしくなってきた。取り掛かろう。
『今日で病魔におびえる日々とはお別れです。人々に聖殖神ジオスの加護があらんことを。広域浄化!』
パアアアァァァァッ!
まばゆい光と暖かなきらめきががスラムの上空に輝いた。
それはゆっくりと上へ上へと昇っていき、太陽と重なった瞬間、砕けた。
それはまるで流星のように暗いスラムの街に降り注ぐ。
『すっごい綺麗じゃない!』
『ケイ、これでーとでもやってくれ』
二人も喜んでくれたようで嬉しい。ネズミの国みたいだ。
……ていうか派手過ぎないか? これ本当に外に見えてないよね?
やがてきらめきが収まり、静かすぎる静寂がスラムを包んだ。下に降りてみよう。
あれ、誰もいないんだが。食べかけの食器がそこら中に散らばりもぬけの殻。ホラー感さえある。……あ、スラムがめちゃくちゃ綺麗になっている。そうだ、これ汚れも浄化の範囲だった。見た目はボロいのにピカピカの民家。あ、あかん。これは隠せない。う、うーん。どうにでもなーれ。
「……」
一人フェイさんだけが立っている。わ、笑っている。とても晴れやかだ。怖いんですけど。
「えっと、フェイさん。皆さんはどこに?」
「みんな家に帰りました。使徒様の言葉を確認しているのでしょう」
さらっと使徒呼びされた。
「ほら、来ましたよ」
フェイさんが指差した方に、さっきの子供がいた。ベステルタが慰めていた獣人の男の子だ。隣にやつれ気味の女性がいる。
「お、おにーさん」
おっ、今度はちゃんと言えたね。偉いぞ。二十代はおにーさんだからな。
そんなこと考えている間に男の子の目にみるみる涙が溜まっていき、
「おかーさん、治った!!! あ、ありがと!!! う、うわあああああああん!!!」
泣いちゃった。
「う、うおおおおおおお、かあちゃーーーーーん!!!」
「あんた病気治ったのかい!?」
「ぴんぴんだぜェーッ!!!」
「ほ、本当に、治っている……」
「死ぬしかないって言われたのに……治ってる……はは」
「奇跡だ! 神の奇跡だ!」
「うおおお俺はアセンブラ教徒をやめるぞォーッ!」
「おにいちゃあああああんああああああ!!!」
「ジオス教徒だっけ!? どこで入信できるんだい!」
「フェイ様に訊かないと!」
あわわわわ。怒号のような叫び声がスラムから響く。違う。もっとこう、しっとり笑って皆感謝、オレ感謝使徒オマエみたいな展開を予想していたんだけど。こんな暴動みたいになるのは予想外だ。
「使徒様。ここは私にお任せください」
フェイさんがすっと前に立ってくれる。ありがてえ。
「すみません。少しやりすぎたかもしれません。ジオス教の洗礼ですが、パウロに訊けば場所が分かるはずです」
「畏まりました使徒様。後日またその尊いお姿を拝見できればこれ以上嬉しいことはございません」
あ……フェイさんの目が見たことある瞳に変化していく……。
ケイは 狂信者フェイから 逃げ出した!
「病人を? 突然どうしたのですか?」
美味しそうにダイオーク猟師鍋を食べていたフェイさんが怪訝そうに言う。
「広域浄化魔法で全員まとめて治療します」
「……正気ですか?」
心配されてしまった。いやまあそうなるよね。
「正気です。毎日亡くなっている方が多いんですよね? 特に症状が重い人を優先で」
「……ケイ殿、貴方には既に多大な恩恵を受けております。炊き出しに仕事の斡旋まで。外野から口だけ出す者はいましたが、貴方のような方は初めてです。スラムを代表してお礼申し上げます」
「あ、はい」
すっ、と佇まいを直してお礼をされた。
「ですが、流石にそれは信じられません。病気を治す魔法が存在するのは知っております。しかしそれは非常に高額かつ高位の神官しか使えません。ましてや広域浄化魔法、ですか? そんなもの……神か、神の使徒にしかできませんよ」
なんだ、できるじゃん。
「僕がその使徒ですよ。ジオス神の使徒ですが。それでフェイさん。スラムとそれ以外の境界線って見れば分かりますかね?」
彼は目を白黒させている。混乱しているようだ。なんか楽しくなってきたぞ。
「へ? は、はい。スラムは見た目が古いですし、区別するための柵が設けられていますから一目瞭然ですが……し、使徒?」
よし、そういうことなら問題ないな。ジオス神の評判を高める良い機会だ。
うーん、やっぱり待ってたらいつまでかかるか分からない。やると決めたなら、迅速にやってしまおう。
(そんなこと言って、全然できなかったら笑うけど)
内心ひやひやしながら浄化範囲を頭で念じて指定してみる。お、かなり広く使用できそうだ。これなら大丈夫かな。何回か使えば広範囲をカバーできるだろう。
『プテュエラ、降りてきて僕を空まで運んでくれる? 上空から一気にこのスラムを浄化するよ』
なんか粛清みたいな言い方だけど、もちろん違うからね。
『いいのか? 目立つぞ?』
『この際仕方ないよ。それなら逆に派手にやってジオス神と亜人の名前を高めるさ』
『ふふふ、何だか楽しそうだな。ケイも亜人の契約者としての振る舞いが分かってきたみたいだな』
チャンネル越しにプテュエラの嬉しそうなバサバサ音が聞こえる。契約者ってそういうもんだっけ?
「敵襲かっ!」
速攻でプテュエラが僕の隣に降りてきて、強風とただならぬ気配にフェイさんが臨戦態勢をとった。
「違いますよ。僕の契約亜人です。さっきも説明しましたが僕はジオス神の使徒で複数の亜人と契約しています。後日、入信してもらう時にも説明されると思いますが、アセンブラ関係者には秘密にしておいて下さい」
まあ少なからずバレる気もするけどなー。
プテュエラに言って風をまとい飛ばしてもらう。
「う、浮いた!」
「おいッ! ケイの旦那が浮いてるぞっ!」
「旦那、今助けますっ!」
あっ、ヒャッハーたちに説明してなかったから大騒ぎしている。ミスった。ベステルタに大丈夫だと言ってもらおう。ていうか彼らもちょっと前までめっちゃ僕の事睨んでいたのに今じゃ旦那だからなあ。いいけど。
……ん? 何か契約者チャンネルの雰囲気がいつもと違う。何かこう、いつもより深く繋がっているような。このチャンネル、ここに繋げるんじゃないか?
ぱちっ。
『ん?』
『あら?』
『お?』
うわ、複数チャンネルが開設できた。もしかして、これが亜神の使徒の効果かな。すごい……のか? チャットルームだよね、これ。
『えっ、プテュエラ聞こえる?』
『おお! ベス、聴こえるぞ! これはケイの力か?』
『そうみたいだね』
いやー、これは便利だ。早速ベステルタに言ってヒャッハーたちを宥めてもらう。
「うおっ、な、何ですか姐さん」
「もしかして問題ないってことですかい?」
ベステルタが落ち着くようにジェスチャーをしてヒャッハーたちが戸惑いながらも従った。
ベステルタ、姐さんて呼ばれるのか……。それってどうなんだろう。
『大丈夫よ。ケイ、どうせなら派手にやりなさい。プテュエラ、よろしくね』
『もちろんだ』
そのままぐーん、と上昇してあっという間にスラムの真上に来た。
眼下にはみすぼらしい建物がずらりとならんで、それを囲むように柵ができている。なるほど、これがフェイさんの言っていた柵か。デイライトの光と影、貧富の象徴、境界線。
いつか取り払えたらいいね。
「プテュエラ! あの柵より内側に防音風壁を展開して! あと浄化の様子を外に漏らさないようにも!」
「ああ!」
すると、一瞬だけスラムを巨大な光のドームが包んで消えた。結構無茶なこと言ったけど、これで僕の声と浄化の様子は外に漏れないはず。
「そのまま風壁内に僕の声を響かせて!」
「任せろ!」
プテュエラが生み出した風が僕を包む。よし、これで準備はできた。
「あ、そうだ。カリンたちにも聞かせたいんだけど、ピンポイントで声届けられる?」
「造作も無いな……できたぞ」
プッさん頼もしい。こういう場面での応用力半端ない。
『あー、テステス。聴こえますか?』
『ばっちり聴こえてるわよ』
ベステルタから返答。問題無さそうだ。
今さらだけどこういう演説って何言えばいいんだろう。ちょっと緊張してきたぞ。でも、とにかく下手でも言うしかない。
『こんにちは、スラムの皆さん。突然申し訳ありません。僕はジオス神の使徒です』
ドーム内に僕の声が反響している。これなら大丈夫そうだな。
『我が主ジオスは、このスラムの状況を深く嘆いています。病魔が巣食い、不幸が蔓延っている闇を。我が主は僕に《闇を晴らし、浄化せよ》と仰りました』
まあそんなこと言ってないけど大丈夫だろ。ちょっとはそれっぽく言えているかな? なんとなく聖書をイメージしたんだけど。ただ我が主はなんとなく癪だ。
『これよりジオス神の御業にてこの街に光を取り戻します。少し先の未来、皆さんの病魔は消え去り、家族と笑えるようになります。
ただ、一つお願いがあります。ジオス教徒になってください。我が主ジオスには、ご存じの通り、過去の誤解のせいで信徒が少ないのです。皆さんの信仰心を我が神に分けてください。その代わり、皆さんの心の拠り所と平穏に力添えをするようにジオス神に進言します。どうかよろしくお願いします』
丁寧な口調だけど何も約束していない。まったく、これじゃ詐欺師だな。でも僕の両手には限界がある。いくらかの予防線はさせてもらおう。もちろん援助はするけどね。
『入信の方法はフェイさんに説明しておきます。直接僕のとこに来られても対応できないのでまとまって来てください』
これも言っておかないとな。ばらばらに来られたらさすがに対応できない。フェイさんなら人望ありそうだしうまくまとめてくれるだろう。
おっと、もう一つ言っておかないとな。
『もちろん、この提案を受け入れられなくても皆さんの病魔は浄化します。ただ、スラムの人間以外に話すのは厳禁です。この声も見えない防壁によって外には届いていません。それは他の神に、皆さんを救わなかった神に気付かれないためです。約束を守れない場合、やつらが何をするか分かりません。くれぐれも内密にお願いします』
しっかりアセンブラもディスっておく。
さて、こんなものかな。慣れない演説なんてするもんじゃないね。半ば脅しっぽいけど許してくれ。下からもざわめきが聞こえる。すっごい恥ずかしくなってきた。取り掛かろう。
『今日で病魔におびえる日々とはお別れです。人々に聖殖神ジオスの加護があらんことを。広域浄化!』
パアアアァァァァッ!
まばゆい光と暖かなきらめきががスラムの上空に輝いた。
それはゆっくりと上へ上へと昇っていき、太陽と重なった瞬間、砕けた。
それはまるで流星のように暗いスラムの街に降り注ぐ。
『すっごい綺麗じゃない!』
『ケイ、これでーとでもやってくれ』
二人も喜んでくれたようで嬉しい。ネズミの国みたいだ。
……ていうか派手過ぎないか? これ本当に外に見えてないよね?
やがてきらめきが収まり、静かすぎる静寂がスラムを包んだ。下に降りてみよう。
あれ、誰もいないんだが。食べかけの食器がそこら中に散らばりもぬけの殻。ホラー感さえある。……あ、スラムがめちゃくちゃ綺麗になっている。そうだ、これ汚れも浄化の範囲だった。見た目はボロいのにピカピカの民家。あ、あかん。これは隠せない。う、うーん。どうにでもなーれ。
「……」
一人フェイさんだけが立っている。わ、笑っている。とても晴れやかだ。怖いんですけど。
「えっと、フェイさん。皆さんはどこに?」
「みんな家に帰りました。使徒様の言葉を確認しているのでしょう」
さらっと使徒呼びされた。
「ほら、来ましたよ」
フェイさんが指差した方に、さっきの子供がいた。ベステルタが慰めていた獣人の男の子だ。隣にやつれ気味の女性がいる。
「お、おにーさん」
おっ、今度はちゃんと言えたね。偉いぞ。二十代はおにーさんだからな。
そんなこと考えている間に男の子の目にみるみる涙が溜まっていき、
「おかーさん、治った!!! あ、ありがと!!! う、うわあああああああん!!!」
泣いちゃった。
「う、うおおおおおおお、かあちゃーーーーーん!!!」
「あんた病気治ったのかい!?」
「ぴんぴんだぜェーッ!!!」
「ほ、本当に、治っている……」
「死ぬしかないって言われたのに……治ってる……はは」
「奇跡だ! 神の奇跡だ!」
「うおおお俺はアセンブラ教徒をやめるぞォーッ!」
「おにいちゃあああああんああああああ!!!」
「ジオス教徒だっけ!? どこで入信できるんだい!」
「フェイ様に訊かないと!」
あわわわわ。怒号のような叫び声がスラムから響く。違う。もっとこう、しっとり笑って皆感謝、オレ感謝使徒オマエみたいな展開を予想していたんだけど。こんな暴動みたいになるのは予想外だ。
「使徒様。ここは私にお任せください」
フェイさんがすっと前に立ってくれる。ありがてえ。
「すみません。少しやりすぎたかもしれません。ジオス教の洗礼ですが、パウロに訊けば場所が分かるはずです」
「畏まりました使徒様。後日またその尊いお姿を拝見できればこれ以上嬉しいことはございません」
あ……フェイさんの目が見たことある瞳に変化していく……。
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