絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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キョン

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 どうやら六層~十層の魔獣はキョンが出るらしい。

「それって千葉県で大繁殖してるキョン? それともいくわよキョン! の方?」

「何言ってるが分からねえが、キョンはキョンだ。四足歩行の偶蹄魔獣で、四つ目で気持ち悪い鳴き声と凶暴な性格で冒険者に嫌われてるな」

「でも肉は美味いのよね」

「だな。上質な赤身で脂身が少なくて、煮込み料理に向いてる。ただ落とすのは角とか毛皮ばっかで肉は中々落とさねえんだよなあ」

 ふうむ。聞いた感じ千葉県のキョンっぽいな。でも異世界のキョンだからもっと獰猛だったり、やばい攻撃方法とか持ってるかもしれん。

「分かった、ありがとう。肉落としたら食べてみるよ」

「おう、せいぜいたくさん狩ってくれや」

「今日はありがとうね」

「いえいえ。こちらこそ。じゃあね」

「師匠! また今度!」

「お元気でなんだな!」

「お元気で!」

「またすぐ会えるよ。君らもポーター頑張ってね」

 軽く手を振りその場をあとにする。キョン肉手に入れて、シャールちゃんと食べるのも良いなあ。楽しみだ。

………………

(行ったか)

(そのようね)

(とんでもないやつだったな)

(ええ。地上に戻ったら情報収集しないと)

(ああ。だが、俺たちにもやっと運が回ってきたな。ポーター契約する時には『孤爪のラーズ』に仲介人を頼めば、自然と知己を得れるだろうし、ケイっていう超有望な若手と比較的早く知り合えたのはデカい)

(そうね、ドラゴンソードに対する反応をみる感じ、彼にとってもそれなりに大事な後輩みたいだし、なるべく恩を売っておきましょう)

(だな。だがまあ、それを抜きにしても有望そうな後輩だ。しっかり育ててやらねえとな)

(ふふ。そうね)

「二人とも何を話してるんですか?」

「なあに、今後のことさ。うっし、じゃあオメーら、今日は稼ぎ時だぞ。露払いはしてやるからしっかり素材と魔石を回収しろよ!」

「はい! 宜しくお願いします!」

………………

 んで、あっという間に五層に着いた。

 それまで出くわした魔獣たちはベステルタの指弾と僕の風弾であらかた殲滅したよ。ベステルタも途中からはちょっと楽しくなってきたみたいで、岩をむんずと掴んでバキグシャと握りつぶしたあと、ショットガンのように投げまくって、魔獣を穴だらけにしていた。僕も短期間に風弾をこんな連射することはなかったので、練度もなかなか上がった気がする。

 たまに矢を放ってくるゴブリンやコボルトもいたので、風弾でそれを撃ち落とす。威力とスピードはそのままに、精度を高める訓練だ。それを猛烈なスピードで走りながら行う。もちろん最初はブレブレだったけど、少しずつ照準が合うようになっていった。

(とはいえ、本物の魔法使いには及ばなそうだけど。まだ本職には会ったことないんだよね。学ぶ機会あったらいいなあ)

 しばらくすると後ろが騒がしいなったので、いろんな冒険者が死体の山、もとい素材と魔石の川に出くわしたのだろう。あれは歓喜の声だな。まあせいぜい稼いでくれ。骨喰いやドラソたちがうまく稼げるように祈っている。

 階層ボスのオークはベステルタが影抜きからのモツ抜きで一撃。なんて凶悪なコンボなんだろう。いとも容易く行われるえげつない行為だ。

 五層の認定官であるカークさんに挨拶しようと思ったら、全然別の人だった。どうも急な人事変更があったらしく、さらに下の階層に行くことになったらしい。会えないのは残念だけど、まあ下まで行けばいい話だ。

 新しく五層の認定官に就任した人はめちゃくちゃしんどそうだったので、地上で買った鶏飯を差し入れしたら涙を流して喜んでくれた。賄賂とか言ってられないくらい追い詰められていたようだ。そして愚痴愚痴愚痴……。

 どうも冒険者ギルドはブラックなようだ。公務員だから安定していてそれなりに高給なようだけど、上司と一部の職員によって牛耳られているらしい。そいつらに歯向かうと左遷されたり、虐め抜かれて退社させられるそうだ。ほんま大変やなこの仕事。役に立ったようでよかったよ。こんな職場で働くシャールちゃんが心配だ。

 そして六層。
 草原エリアだ。
 こう、風が語りかけてくる感じがするな。十万石の風が……。

「爽やかね~」

「ねー。ピクニックなんかしたいね。ちょうどほら、あの丘とかでさぁ」

 入ってすぐのとこにある小高い丘を指差す。ちょうど登りやすくて、心地よい風を感じられそうだ。あっ、そう言えばあの丘はこの前来た時も良いなぁって思ったんだっけ。そしたらベステルタが……なんて言ってたっけな。

「あの丘がいいの? あそこから染み付いた血の匂いがするけど……」

「あー……そうだったね」

 うわぁ思い出した。あの丘はデストラップなんだった。デスピクニックになってしまうところだった。

「あっ」

「なに? どうかしたの?」

「うーん、ちょうど今丘の上で何人か死んだみたいだったから」

 げっ、まじかよ。生きてるなら助けてもいいけど、死んでるならどうしようもないもんなあ。

「とりあえず行くだけ行ってみるか。どんなトラップなのかも知りたいし。念の為訊くけど、ベステルタなら切り抜けられるよね?」

「余裕よ」

 だよね。知ってた。

 丘の上はなんというかヒドイもんだった。

 白骨化した人骨と風化した装備やら武器やらが散乱している。さらに、死にたてほやほやであろう冒険者の手足が土の中から飛び出ており、前衛芸術みたいだった。

「でもいい感じの草がたくさん生えてるな」

 人体アートに目を瞑れば、スーホの白い馬でも走ってそうな緑溢れた草原だ。柔らかい草は草食動物が喜んで食べるだろう。

「魔獣の姿は……無いな」

 近くにそれらしき姿は見えない。にも関わらず、濃密な暴力と血の匂いが立ち込めているので気味が悪い。

「ううん、来るわよ。構えて」

 ベステルタがそう言うや否や、ゴッ! っと地面を思い切り踏み鳴らした。

「ンギョオオオオン!」

 すると気持ち悪い声で鳴き叫びながら、地中からキモい生物が飛び出してきた。

 四つ目の偶蹄。気持ち悪い鳴き声。

 間違いない。

「逝くわよキョン!」

「ンキョオオオオン!」

 五層の代表的な魔獣、キョンの頭にフランチェスカを振り下ろす。

 ガシュゴチュペキムチュという嫌な感触と共に、脳髄と目玉が飛び出した。

「ンギョオオー!!!」

「キョオオンンキョオン!」

「ンキョッキョッキョンキョオオオ!」

「キョフキョフキョフッ!」

 茶色い毛皮に身を包んだキョンは、角にある二つの目を交互にギョロギョロ動かしつつ、顔の方の目で僕らをじっと見ている。よだれを振りまいて気味悪く叫び、くねくねとおよそ動物らしくない動作でこちらを威嚇してくる。

 そのうちの一頭はもしゃもしゃとまだ草をはんでいた。

(あー、もしかしてここはキョンの餌場なのかな)

 豊富な草どもが生えたこの丘は、キョンにとって極上のレストランなのかもしれない。で、そこを荒らしに来る冒険者たちを片っ端から殺しまくっていると。

「とりあえずキョンが肉食じゃなくてよかった」

「ンキョオオオンンギョペィッ」

 また近くのキョンを叩き潰す。

 人肉食ってる魔獣なんてあんま食べたくないからな……。あーでも、オーク肉とか屋台で売ってたよな。どうなんだ? オークって何食べるんだろ。あんま深く考えないほうがいいか……。海産物だって、元は何食ってるか分からないもんな。

「ちょっとケイ! 見て! 宝箱よ!」

「おっ、なんだ?」

 ベステルタが興奮した様子で僕を引っ張る。首がガクガクして鞭打ちになりそう。

「うわー、宝箱! すごいわ! 感動よ……」

 ショワワワァーン……。

 丘の真ん中にどころからともなく妙な効果音を伴って宝箱が現れた。といっても豪華なもんではなく、しっかりと封された木箱に金属製の枠組みがしつらえてある感じだ。

 ベステルタがぴょんぴょん跳ねて全身で喜びを表現している。ばるんばるんと亜人っぱいも暴力的に弾みまくる。僕はそれを凝視して種巣棒をふっくらさせた。

「あら……ケイも興奮してるの? 繁る?」

「魅力的な提案だけど止めておこう。先を急がないとね。とりあえず中身を確認しようか」

「そうね!」

 ウキウキしながらベスたんが宝箱を開ける。何気に異世界初宝箱だ。僕もワクワクしている。

 中から出てきたのは……。

「……肉ね」

「それと、なんかキモい目玉だ」

 アイテムは二つ入っていた。

 一つは赤身で脂の少ないお肉だった。アビディの言っていたことを信じるなら、たぶんキョンの肉だな。一応レアドロップらしい。まあ確かに上質そうに見える。

 もう一つは……真っ白でほそーく楕円形の黒目が入ってる目玉。なんかぬちょぬちょしていてキモい。まさか珍味枠とかじゃないよね。

 まあ、それでも宝は宝だ。

「とりあえず、いぇーい」

「そうね。いぇーい!」

 お宝をゲットしたらハイタッチ。これが亜人の星のルールなんすわ。ベステルタは宝でよければ何でもよさそうだ。体験が大事なのだよ体験が。

 
 そっから十層までの道は、なかなか楽しかった。

 草原のど真ん中を僕とベステルタは突っ切る。さすがに五層までより敵は多い。強さも上がってる。

 五層まではゴブリン、コボルト、ダンジョンウルフしか襲ってこなかったけど、六層以降はガラリと変わる。

「キョオオオオーーーンンゴょペッ!」

 目が血走ったキョンがまた血煙に沈む。四方八方六方手裏キョンだ。とにかく全方位から襲ってくる。地中にも潜ってるんだよな。さっきのデストラで予習してなかったら、一回くらいは直撃してたかもしれない。

「ブォォォォ……オォおぉん……?」

 怒りに身を任せて突進してきたオークは、ベステルタの影抜きからのモツ抜きで絶命していた。どうやらこのコンボがお気に入りのようだ。その手並みがあまりにも鮮やかで、オークは一瞬モツが抜かれたことに気付かない。数歩歩いた後、「カエシテ……オデノ、モツ……」とでも言いたげな表情で塵に帰っていった。

 それ以外はいつものゴブリンとウルフだ。ウルフは体毛が緑っぽいので、グラスウルフってやつだろう。なんか冒険者ギルドの教本みたいなやつでチラッと読んだ気がする。ゴブリンはもともと肌が緑なので分からん。

 どいつもこいつも五層までよりは明らかに動きの質が上がっているし、数も増えているので、倒しがいがあった。撃ち漏らしはないと思うけど、一匹くらいいたかもしれない。風弾の制御力もかなり向上したと思う。

 頭と身体と魔力をフル回転させて、一時間くらいは走り抜けただろうか。

 いつの間にか十層の広間に着いていた。

 呼吸を整えるとそれなりに疲労が襲ってくる。

「ふぃ~~疲れた~~」

「お疲れ、ケイ」

 ニコニコ顔で撫でてくれるベステルタ。

「悪く無い功夫だったわよ」

 さらに熱い抱擁と頬へのキス。むほほ、やる気出るね。なんか彼女の身体もうっすらしっとり暖かくなっているし、ふわふわだし、イイ匂いと濃い匂いがするし、筋肉柔らかいしでずっとこうしていたい……。いきなり功夫とか言い出したことへのツッコミを控えてしまうほどに。

「じゃあ十層さっさとクリアしちゃいましょうか」

「うーん、もう少しだけ十層見て回ってもいい? 物なんかも売ってるみたいだし、冒険者もちらほらいるからさ。挨拶しておきたい」

「ケイが言うなら止めないわ。私は瞑想してるわね」

 そういってベステルタは広間の隅っこの方へいって、座禅を組み瞑想を始めた。めちゃくちゃ堂に入っている。フェイさん、短い間でいい仕事してくれたな。本人のやる気がすごいってのもあるんだろうけど。

 十層の広間は五層とはまた少し雰囲気が違った。

 なんというかピリッとした感じだ。ここまで来るとルーキーからは抜け出していて、ある程度経験積んだ人たちが多いからかな。

「よし、今日こそ十層突破して、H級になるぞ!」

「超稼ぐぜ!」

「うおおおおお!」

 という風に士気の高いパーティもいれば、

「今日はキョンの肉が大袋で一つ手に入ったな」

「ああ。高く売れそうだ」

「よし、数日滞在したら換金しに行くぞ」

「了解」

 はなから六~十層をメインに周回しているパーティもいた。なるほど、やっぱみんながみんな上を目指すわけじゃないんだね。やり方は人それぞれか。

 あとは何人かの冒険者が手持ちの物資を売っていた。別に珍しいものはなかったので買わなかったので会話だけだったけど、「冷やかすな!」と怒られることはなかった。むしろ情報収集の一環らしい。

「へー、じゃあ迷宮に商人はいないんだ?」

「そりゃーな。物資を大量に持ち込むすべがねえよ。冒険者に運ばせるって方法もあるが、じゃあ誰が商人の身を守るんだっつー話」

「んーほら、魔法の鞄とかでたくさん持ち込んだり?」

「なんつーかあんちゃん……見たところ無傷だし十層に来るだけの実力はあるんだろうが、頭が悪いな……」

「ひどい」

「魔法の鞄なんていう超レアアイテムがあったらわざわざ迷宮になんてこねーよ。売るだけで一財産だし、ましてや商人ならいくらでもそれで稼げるだろ」

「そりゃそうか……。あっ、そうだ。この素材拾ったんだけど見たこと無い?」

「うえっ、なんじゃこりゃ気味悪いな。……うーん、見たところキョンの瞳っぽいがあれって浅層でドロップしなかったはずだぜ」

「キョンの瞳って何に使うの?」

「魔法の触媒だな。よく知らんが、適切な方法で処理すると魔法の威力や精度を高められるらしい。
 ああ、もしあんちゃんが命知らずなら広間の奥の方にいる黄金の矢ゴールデンアローに尋ねるといいぜ。あそこには現役の魔法使いがいるからな」

「へええ! 分かった。訊いてみるよ!」

「わー、まてまて。冗談だ冗談。あいつらは男子禁制の男嫌いパーティだからな。変に話しかけるとぶっ殺されるぞ。この前も外から来たパーティがウザ絡みして、全員の金玉射抜かれてたよ」

「ヒエッ……」

「E級パーティなんて人外に片足突っ込んでる連中だからな。特にあそこのリーダーと副リーダーはそれ以上の実力者って話だ。気を付けろよ」

「ちなみに男子禁制ってことは、女の子しかいないの?」

「おう。全員が女のパーティだ。しかも全員上玉だ。くうぅ、迷宮の閉鎖空間だとあいつらの色気が目に悪いんだよな。だから向こうも人目を避けてる」

「ほー……。わかった。じゃあ気を付けて話しかけるよ」

「えぇ……話しかけんのかよ。俺は忠告したかんな。無茶すんなよ」

「いえいえ。サンキュね。あ、これ鶏飯。よかったらどーぞ」

「お、おう悪いな。腐ってねえよな?」

「んなわけないでしょ。まあ変な味だったら捨てていいよ。じゃね」

 と、気のいいおっちゃん冒険者からおもろい情報を仕入れたので挨拶がてら向かってみることにした。

 男嫌いってことらしいけど、もしかしたら噂が先行してるだけかもしれないし、実際話してみないと分かんないからなあ。

 あとモノホンの魔法使いと話してみたいという気持ちが強い。

「金玉射抜かれたのはきっとしつこく絡んだからだよね。僕は紳士だからきっと大丈夫だ」

 ジャパニーズ物腰丁寧で接すればヘーキヘーキ!
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