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幼女+紳士さん
19話 〜内密にお願いする〜②
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「せっかくこうして吸血鬼に会う機会を頂いているのですから、睨まれたくないですしね」
その時、トニーのパルトネルが振動した。
「お、丁度電話が来ましたね」
ゼティフォールは手で出るように促した。
「では、失礼。もしもし、トニーです。ああはい、無事お連れ致しました。はい、ありがとうございます。いえ、まだ大臣殿にお話しして決めるとのことで……。はい、わかりました」
トニーはゼティフォールにパルトネルを渡した。
「大臣殿ですよ。替わって欲しいと」
ゼティフォールはそれを受け取った。
「分かった。……私だ。そちらはどうなったのだ?」
『おお! これは間違いなく魔王さまですな。いやはや、急にいなくなったもんですから、心配しましたぞい。して、アレッサンドリーテですがな、ゼプトくんが代理として行きましたぞい』
電話に出るとチャピランが嬉しそうに話した。
「すまなかったな。それで、首尾は?」
『勇者の居場所を教えてもらいましてな、今ローランが探しに行っている所なんですな。何故魔王不在なのかについては、先の戦いの怪我が思った以上に大きかったと伝えたら、相手側も仕方なしと受け入れてくれましたぞい』
「そうか。問題にならなかったのならそれでよい。しかし、何故私がここにいるとわかったのだ?」
『それはですな、ダンテ君が魔王様にGPSを付けていたからなんですな。確か、ベルトに付けたとか』
ゼティフォールはベルトを確認する。
「ふむ。この小さなピンのことか? しかし、何故このようなことを」
ゼティフォールはピンをベルトに差し直した。
『一応友好国ではありますが、万が一この外交がおびき寄せる罠だった場合、いつでも駆け付けられるようにと、言ってましたな』
「そうか、偶然とはいえ良い働きだ。して、そのダンテはどうしておるのだ」
『今そちらに向かっとりますぞい』
「何故だ? 私はそちらに帰るのではないのか?」
『いえ。ついでですからな、このままそちら側で目撃された方の勇者を探してもらいますぞい』
「……しかし」
『しかしはないんですな! むふふ~。もう既に仮の身分証明書とパルトネルの用意はできてるんですぞー。あ、ちなみに最低限の装備は用意しますが、基本的に国庫を開く予定はないので悪しからず』
チャピランは楽しそうに話した。
「名前はどうすればよいのだ、不法入国となってしまったのだから偽名の方がよかろう? あと、この辺りのモンスターについても聞きたい」
『名前は好きなのを付けて問題ないですぞい。身分証明書も名前の欄は空けとりますからな。その辺りのモンスターなんて、この世界で最も弱いんで気にするだけ無駄ですぞ~』
「何!? 最も弱いだと……! 例外的に強いモンスターがいるから気を付けろ等もないのか?」
ゼティフォールは聞き捨てならない事を聞いてしまった。
『ん? 今の所ないんですな。怪物の影響で強いモンスターが出たとの報告もありましたが、どれも魔王国周辺に出て来るバイコーンの蹴りでも食らったら、例外なく一撃で消し飛びますぞい』
「で、では、目が三つあるオオカミを見かけたが、あれはどうなのだ……? それに魔法を封じるモンスターがいたりとかは……」
ゼティフォールは恐る恐る訊く。
『む? 三つ目オオカミのことですかな。あれは最弱のモンスタープルプルより少し強い程度で、子どもでも倒せますぞ? あと、その場所で魔法を封印するモンスターなんて、聞いた事もないんですな! ははっ、魔王様は心配性で世話がやけますぞい』
ゼティフォールは一瞬頭が真っ白になってしまった。あの、自分をあそこまで追い詰めたモンスターが子どもでも勝てる程度の相手だったのだ。
「もし、もしだがな……。その三つ目オオカミに手も足も出なかった場合、どれくらい弱いのだ?」
重要な質問だった。
『む~。難しい質問ですなあ。でも、多分ですがプルプルに勝てるかも怪しい弱さですな。それがどうかしたんですかな?』
「いや、何でもない」
何でもない事はないが、その最弱のプルプルに挑むのも少し怖くなってしまったゼティフォールであった。つまり、モンスターが強くなったとばかり思っていたが、ゼティフォールの方が絶望的に弱くなったのだ。
『ああ、忘れる所でしたがな、何故そのような所に飛んだのか、わかりますかな?』
「……え、ああ」
ゼティフォールは放心していたが、チャピランの真面目な声で我に返った。
『一応説明してくれると助かりますぞい』
「ああ、そうだ。トニーにも聞かせるか?」
『そうですな! この際トニー君も共犯ですからな、聞かせてやりましょう。あの子は口が堅いから問題ないんですな。聞こえてますかな、トニー君』
チャピランがトニーにも聞こえるように大きな声で言った。
「ははは……。口が堅いのは認めますが、少し引っかかる言い方ですねえ。まあ、元より口外するつもりはありません」
「なかなか親しいようだが、昔から知っている仲なのか?」
ゼティフォールがパルトネルをトニーに返しながら尋ねた。
「ええ。私が小さい頃に大臣殿がたまたまこの町に来まして、その頃からの付き合いです」
トニーは答えつつ、パルトネルをスピーカーと立体映像に切り替えてテーブルに置いた。
「そうか。それは良いな……」
『して、状況を聞かせて欲しいのですが……』
「ああ、そうだな。私も何故そうなったのか分からぬ故、そのつもりで聞いてくれ。まず私が懐中時計を忘れ────────」
ゼティフォールが自室で時計を探した事や、名も知らぬ灰色の髪の吸血鬼の事、言われた事、そしてその吸血鬼に飛ばされた事をふたりに伝えた。
『なかなか興味深いですな……』
チャピランは何やら考えるような難しい表情をしている。
「ほうほう。まだ他に吸血鬼が存在したとは、嬉しい限りですねえ!」
トニーは嬉しそうだ。
「ああ。あのモノは初めて見たのだが、チャピランは知っているか?」
『灰色の髪に暗い銀色の瞳の吸血鬼は見た事ありませんな』
「そうか。何か分かり次第教えてくれ」
「わかりましたぞい」
「それで、希望の星と鏡でしたっけ、は何を意味するんでしょうか?」
「星は判らぬが、鏡についてはいくつか思うところがある」
「ほう、お聞かせ願えますか?」
「ああ、殆ど私の勘なのだがな。私はどのような存在かと考えた時、大まかに魔王、闇の王、吸血鬼の三つの要素でできている。それで鏡は対象を映すモノ故似ているモノか、若しくは対のモノだ。あと歪みが大きくなるというのが何かは判らぬが、“状況を悪くする”と過程する。そこで本題だ。分かりやすいモノから行けば闇の王。これは似ているのも対も光の王であろう。怪物共が行の王を狙っていたのを思えば、光の王が盃を奪われてしまえば、状況が悪くなる故説得力が増す。“頼れば頼った分だけ”という部分は引っかかるがな」
「光の王は神様の事ですよね? 勇者の選別をしたという……」
「そうだ」
『勇者の力は効いていたみたいですから、もしや無闇に光の王の力を出し過ぎるとその対抗手段を用意されるのやもしれませんな。それに、残っている盃は光だけなのもありますからな』
ゼティフォールの眉間にシワが寄った。
「何? 闇と魔王の盃はどうした……?」
「ああ、ダンテ君が割っちゃったらしいんですな。ははっ』
チャピランは笑う。
「何故そうなるのだ……」
「……割ったらどうなるんですか?」
トニーはゼティフォールの恐ろしい表情を見て、刺激しないように慎重にチャピランに訊いた。
「知るはずがないんですぞい! ああ、でも怒らないでやってくだされ魔王様。怪物に盗られそうになった所であの子なりに考えて、止むを得ず取った選択ですからな』
チャピランの補足で、何とか元の表情に戻ったゼティフォール。
「どうりで呼んでも盃が出てこないわけだ」
「おっかないな……。あまり怒らせないようにしないと……」
トニーは聞えないように呟いた。
「ああそうだ、続きだな。次に魔王だ。これは多分勇者ではないかと思う。嘗ては世界の命運をかけて戦った存在で、今は協力して世界を救うべく動いているわけだ。闇と光でもあるしな。私がその希望の星を手放してしまった時に動いてくれるなら勇者である可能性が高い。まあ、今は誰が勇者かも判らぬがな……」
「ゼプト殿ではないのでしょうか?」
トニーが訊いた。
「それはないな。あの力は神の力を分けるのではなく、自分のモノとして使っているのだ。上に成長もするのでな、鍛え方次第では神をも凌駕すると聞いている。だからこそ使命を果たした後救われたモノに恐れられぬように、能力を一時的なモノにしているのだ」
「では、ゼプトさんはもう勇者の力を使えなくなっているんですね」
トニーは残念そうな顔をする。
「そうだ。しかし、勇者の力を付与した指輪を作っていた気がするが……」
ゼティフォールは腕を組んだ。
『あれは先の戦いで使い果たしてしまったようですな』
「もうないのか。では、勇者探しを急がねばならぬな……」
「そうだ! 確か近くの村で勇者になった男の子がいるって聞きましたし、またお呼びしましょうか?」
トニーが提案した。
「ほう、話が早いな。ではお願いしよう!」
『本モノかはまだ分かりませんがな』
「だが可能性はあるのだ。それに、結局見つかるまでは虱つぶしだ。最初の一歩は早い方が良い」
『確かにそうですな! もう、ローランとどっちが早く本モノを見つけるか競走しますかな?』
ゴキゲンになったチャピランは、どこからともなく煎餅を出してバリバリ食べ始めた。
「それも良いかもしれぬ。……トニー、私達も何か摘まもう。腹が減ったのを思い出した」
「夕飯の時間まで少しありますし、ケーキでもお出ししましょうか、それともしょっぱいものがよろしいですか?」
「……ケーキは夕飯の時にしよう! 今は塩気だ」
「ではすぐに持ってきます」
トニーはそういうと立ち上がり、急いで部屋を出た。
「チャピラン、実は話しておくべきことがある」
ゼティフォールはトニーが部屋を出たのを確認してひっそりと話し始めた。
『なんですかな?』
相変わらず煎餅を食べながらも、チャピランは声を落とした。
「怪物らが奪おうとしたのは盃だけでは無かった。先の戦いで盃を奪うのは阻止できたようだが、私の強さは奪われてしまったようだ」
『なんと! 雷御さんと同じという事ですかな? して、どれくらい弱くなってしまったか、聞いてもよいですかな』
「そうだな。先程言った三つ目オオカミだが、あれに敵わなかった。話を聞く限りプルプルにも勝てないかもしれぬな」
『これはこれは……。あまり無茶できませんな。ダンテ君に急がせますぞい。あの子は硬いですからな、良い盾に使ってくだされ』
「ああ。それまでに少しでも力を取り戻すつもりだが、それでも元に戻すのは時間が掛かりそうだ」
『万が一は避けたいですな……。トニー君には話さないんですかな?』
チャピランは煎餅を三枚一気に頬張った。
「できれば誰にも明かしたくないのだ。もし魔王が最弱モンスターにも劣る弱さだと皆が知れば、不安を煽り混乱を招く。そうなれば最悪、怪物を恐れたモノが暴徒となり、私や勇者の命を奪って怪物に取り入ろうとするだろう」
『できるだけ知っているモノを少なくするんですな?』
「ああ。話したのはお前だけだ。後でぴーころせんせーにも伝えておいてくれ。他は言わなくていい。魔王城は今ヒトが多い上に、正体不明の吸血鬼が侵入してしまった。故に、どこで誰が聞いて広めるか判らぬからな」
「分かりましたぞい」
部屋の外で足音が近づいてきた。
「これくらいにするとしよう。トニーが帰って来る」
「おけですな」
チャピランがOKと書かれたフリップを出した。
「取ってきましたよ! チーズとラスクと生ハムです」
トニーは少し息を切らせながら部屋に入り、皿をテーブルに置いた。
「おお、予想以上に豪華であるな」
『なかなか良いですな!』
チャピランがフリップを回転させて裏にすると、美味以外ありえないと書いてあった。
「何の話をしていたんですか?」
「ああ、ダンテが遅いから急がせると話していたのだ」
「そうですか」
「では、食べながら続きを話すとしよう」
『そうですな』
その時、トニーのパルトネルが振動した。
「お、丁度電話が来ましたね」
ゼティフォールは手で出るように促した。
「では、失礼。もしもし、トニーです。ああはい、無事お連れ致しました。はい、ありがとうございます。いえ、まだ大臣殿にお話しして決めるとのことで……。はい、わかりました」
トニーはゼティフォールにパルトネルを渡した。
「大臣殿ですよ。替わって欲しいと」
ゼティフォールはそれを受け取った。
「分かった。……私だ。そちらはどうなったのだ?」
『おお! これは間違いなく魔王さまですな。いやはや、急にいなくなったもんですから、心配しましたぞい。して、アレッサンドリーテですがな、ゼプトくんが代理として行きましたぞい』
電話に出るとチャピランが嬉しそうに話した。
「すまなかったな。それで、首尾は?」
『勇者の居場所を教えてもらいましてな、今ローランが探しに行っている所なんですな。何故魔王不在なのかについては、先の戦いの怪我が思った以上に大きかったと伝えたら、相手側も仕方なしと受け入れてくれましたぞい』
「そうか。問題にならなかったのならそれでよい。しかし、何故私がここにいるとわかったのだ?」
『それはですな、ダンテ君が魔王様にGPSを付けていたからなんですな。確か、ベルトに付けたとか』
ゼティフォールはベルトを確認する。
「ふむ。この小さなピンのことか? しかし、何故このようなことを」
ゼティフォールはピンをベルトに差し直した。
『一応友好国ではありますが、万が一この外交がおびき寄せる罠だった場合、いつでも駆け付けられるようにと、言ってましたな』
「そうか、偶然とはいえ良い働きだ。して、そのダンテはどうしておるのだ」
『今そちらに向かっとりますぞい』
「何故だ? 私はそちらに帰るのではないのか?」
『いえ。ついでですからな、このままそちら側で目撃された方の勇者を探してもらいますぞい』
「……しかし」
『しかしはないんですな! むふふ~。もう既に仮の身分証明書とパルトネルの用意はできてるんですぞー。あ、ちなみに最低限の装備は用意しますが、基本的に国庫を開く予定はないので悪しからず』
チャピランは楽しそうに話した。
「名前はどうすればよいのだ、不法入国となってしまったのだから偽名の方がよかろう? あと、この辺りのモンスターについても聞きたい」
『名前は好きなのを付けて問題ないですぞい。身分証明書も名前の欄は空けとりますからな。その辺りのモンスターなんて、この世界で最も弱いんで気にするだけ無駄ですぞ~』
「何!? 最も弱いだと……! 例外的に強いモンスターがいるから気を付けろ等もないのか?」
ゼティフォールは聞き捨てならない事を聞いてしまった。
『ん? 今の所ないんですな。怪物の影響で強いモンスターが出たとの報告もありましたが、どれも魔王国周辺に出て来るバイコーンの蹴りでも食らったら、例外なく一撃で消し飛びますぞい』
「で、では、目が三つあるオオカミを見かけたが、あれはどうなのだ……? それに魔法を封じるモンスターがいたりとかは……」
ゼティフォールは恐る恐る訊く。
『む? 三つ目オオカミのことですかな。あれは最弱のモンスタープルプルより少し強い程度で、子どもでも倒せますぞ? あと、その場所で魔法を封印するモンスターなんて、聞いた事もないんですな! ははっ、魔王様は心配性で世話がやけますぞい』
ゼティフォールは一瞬頭が真っ白になってしまった。あの、自分をあそこまで追い詰めたモンスターが子どもでも勝てる程度の相手だったのだ。
「もし、もしだがな……。その三つ目オオカミに手も足も出なかった場合、どれくらい弱いのだ?」
重要な質問だった。
『む~。難しい質問ですなあ。でも、多分ですがプルプルに勝てるかも怪しい弱さですな。それがどうかしたんですかな?』
「いや、何でもない」
何でもない事はないが、その最弱のプルプルに挑むのも少し怖くなってしまったゼティフォールであった。つまり、モンスターが強くなったとばかり思っていたが、ゼティフォールの方が絶望的に弱くなったのだ。
『ああ、忘れる所でしたがな、何故そのような所に飛んだのか、わかりますかな?』
「……え、ああ」
ゼティフォールは放心していたが、チャピランの真面目な声で我に返った。
『一応説明してくれると助かりますぞい』
「ああ、そうだ。トニーにも聞かせるか?」
『そうですな! この際トニー君も共犯ですからな、聞かせてやりましょう。あの子は口が堅いから問題ないんですな。聞こえてますかな、トニー君』
チャピランがトニーにも聞こえるように大きな声で言った。
「ははは……。口が堅いのは認めますが、少し引っかかる言い方ですねえ。まあ、元より口外するつもりはありません」
「なかなか親しいようだが、昔から知っている仲なのか?」
ゼティフォールがパルトネルをトニーに返しながら尋ねた。
「ええ。私が小さい頃に大臣殿がたまたまこの町に来まして、その頃からの付き合いです」
トニーは答えつつ、パルトネルをスピーカーと立体映像に切り替えてテーブルに置いた。
「そうか。それは良いな……」
『して、状況を聞かせて欲しいのですが……』
「ああ、そうだな。私も何故そうなったのか分からぬ故、そのつもりで聞いてくれ。まず私が懐中時計を忘れ────────」
ゼティフォールが自室で時計を探した事や、名も知らぬ灰色の髪の吸血鬼の事、言われた事、そしてその吸血鬼に飛ばされた事をふたりに伝えた。
『なかなか興味深いですな……』
チャピランは何やら考えるような難しい表情をしている。
「ほうほう。まだ他に吸血鬼が存在したとは、嬉しい限りですねえ!」
トニーは嬉しそうだ。
「ああ。あのモノは初めて見たのだが、チャピランは知っているか?」
『灰色の髪に暗い銀色の瞳の吸血鬼は見た事ありませんな』
「そうか。何か分かり次第教えてくれ」
「わかりましたぞい」
「それで、希望の星と鏡でしたっけ、は何を意味するんでしょうか?」
「星は判らぬが、鏡についてはいくつか思うところがある」
「ほう、お聞かせ願えますか?」
「ああ、殆ど私の勘なのだがな。私はどのような存在かと考えた時、大まかに魔王、闇の王、吸血鬼の三つの要素でできている。それで鏡は対象を映すモノ故似ているモノか、若しくは対のモノだ。あと歪みが大きくなるというのが何かは判らぬが、“状況を悪くする”と過程する。そこで本題だ。分かりやすいモノから行けば闇の王。これは似ているのも対も光の王であろう。怪物共が行の王を狙っていたのを思えば、光の王が盃を奪われてしまえば、状況が悪くなる故説得力が増す。“頼れば頼った分だけ”という部分は引っかかるがな」
「光の王は神様の事ですよね? 勇者の選別をしたという……」
「そうだ」
『勇者の力は効いていたみたいですから、もしや無闇に光の王の力を出し過ぎるとその対抗手段を用意されるのやもしれませんな。それに、残っている盃は光だけなのもありますからな』
ゼティフォールの眉間にシワが寄った。
「何? 闇と魔王の盃はどうした……?」
「ああ、ダンテ君が割っちゃったらしいんですな。ははっ』
チャピランは笑う。
「何故そうなるのだ……」
「……割ったらどうなるんですか?」
トニーはゼティフォールの恐ろしい表情を見て、刺激しないように慎重にチャピランに訊いた。
「知るはずがないんですぞい! ああ、でも怒らないでやってくだされ魔王様。怪物に盗られそうになった所であの子なりに考えて、止むを得ず取った選択ですからな』
チャピランの補足で、何とか元の表情に戻ったゼティフォール。
「どうりで呼んでも盃が出てこないわけだ」
「おっかないな……。あまり怒らせないようにしないと……」
トニーは聞えないように呟いた。
「ああそうだ、続きだな。次に魔王だ。これは多分勇者ではないかと思う。嘗ては世界の命運をかけて戦った存在で、今は協力して世界を救うべく動いているわけだ。闇と光でもあるしな。私がその希望の星を手放してしまった時に動いてくれるなら勇者である可能性が高い。まあ、今は誰が勇者かも判らぬがな……」
「ゼプト殿ではないのでしょうか?」
トニーが訊いた。
「それはないな。あの力は神の力を分けるのではなく、自分のモノとして使っているのだ。上に成長もするのでな、鍛え方次第では神をも凌駕すると聞いている。だからこそ使命を果たした後救われたモノに恐れられぬように、能力を一時的なモノにしているのだ」
「では、ゼプトさんはもう勇者の力を使えなくなっているんですね」
トニーは残念そうな顔をする。
「そうだ。しかし、勇者の力を付与した指輪を作っていた気がするが……」
ゼティフォールは腕を組んだ。
『あれは先の戦いで使い果たしてしまったようですな』
「もうないのか。では、勇者探しを急がねばならぬな……」
「そうだ! 確か近くの村で勇者になった男の子がいるって聞きましたし、またお呼びしましょうか?」
トニーが提案した。
「ほう、話が早いな。ではお願いしよう!」
『本モノかはまだ分かりませんがな』
「だが可能性はあるのだ。それに、結局見つかるまでは虱つぶしだ。最初の一歩は早い方が良い」
『確かにそうですな! もう、ローランとどっちが早く本モノを見つけるか競走しますかな?』
ゴキゲンになったチャピランは、どこからともなく煎餅を出してバリバリ食べ始めた。
「それも良いかもしれぬ。……トニー、私達も何か摘まもう。腹が減ったのを思い出した」
「夕飯の時間まで少しありますし、ケーキでもお出ししましょうか、それともしょっぱいものがよろしいですか?」
「……ケーキは夕飯の時にしよう! 今は塩気だ」
「ではすぐに持ってきます」
トニーはそういうと立ち上がり、急いで部屋を出た。
「チャピラン、実は話しておくべきことがある」
ゼティフォールはトニーが部屋を出たのを確認してひっそりと話し始めた。
『なんですかな?』
相変わらず煎餅を食べながらも、チャピランは声を落とした。
「怪物らが奪おうとしたのは盃だけでは無かった。先の戦いで盃を奪うのは阻止できたようだが、私の強さは奪われてしまったようだ」
『なんと! 雷御さんと同じという事ですかな? して、どれくらい弱くなってしまったか、聞いてもよいですかな』
「そうだな。先程言った三つ目オオカミだが、あれに敵わなかった。話を聞く限りプルプルにも勝てないかもしれぬな」
『これはこれは……。あまり無茶できませんな。ダンテ君に急がせますぞい。あの子は硬いですからな、良い盾に使ってくだされ』
「ああ。それまでに少しでも力を取り戻すつもりだが、それでも元に戻すのは時間が掛かりそうだ」
『万が一は避けたいですな……。トニー君には話さないんですかな?』
チャピランは煎餅を三枚一気に頬張った。
「できれば誰にも明かしたくないのだ。もし魔王が最弱モンスターにも劣る弱さだと皆が知れば、不安を煽り混乱を招く。そうなれば最悪、怪物を恐れたモノが暴徒となり、私や勇者の命を奪って怪物に取り入ろうとするだろう」
『できるだけ知っているモノを少なくするんですな?』
「ああ。話したのはお前だけだ。後でぴーころせんせーにも伝えておいてくれ。他は言わなくていい。魔王城は今ヒトが多い上に、正体不明の吸血鬼が侵入してしまった。故に、どこで誰が聞いて広めるか判らぬからな」
「分かりましたぞい」
部屋の外で足音が近づいてきた。
「これくらいにするとしよう。トニーが帰って来る」
「おけですな」
チャピランがOKと書かれたフリップを出した。
「取ってきましたよ! チーズとラスクと生ハムです」
トニーは少し息を切らせながら部屋に入り、皿をテーブルに置いた。
「おお、予想以上に豪華であるな」
『なかなか良いですな!』
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「何の話をしていたんですか?」
「ああ、ダンテが遅いから急がせると話していたのだ」
「そうですか」
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