【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

文字の大きさ
20 / 49
幼女+紳士さん

19話 〜内密にお願いする〜①

しおりを挟む
「ふふっ。いや、本当に肝が冷えた思いだったぞ……」
 安堵したゼティフォールは、椅子にもたれながらコーヒーを口に含む。
「いや~、これは失礼! しかしながら、こちらもできるだけ早くお連れする必要がありましたから。ガハハハハっ」
 スーツのドワーフが豪快に笑う。
 この髭を蓄えたスーツのドワーフは、トニー・ガバオン。この町の町長の叔父にあたるヒトで、考古学をメインに吸血鬼の事を調べている。魔王国に何度も調査に行っており、その繋がりでチャピランやゼプトとも面識があるのだ。
「貴公がいて本当に助かった。あのままではまた装備も無しに野宿をする事になるところであったわ」
 ゼティフォールは半分ほど飲み進めたカップを、質素ながらも趣のあるテーブルに置く。
「僕もまさか、昨晩までこのような大役をするとは思いませんでした。まさかの連絡だったもので、とるものもとりあえず仕事を放って急いで来ましたよ。それにしても間に合ってよかった」
 昨日魔王国からトニーに、にゼティフォールの保護依頼が届いたのだ。
「そうだな……」
「下手に衛兵や警察、役人等に捕まってしまえば、国際問題ですから」
 他国の王、それもひとりで数百では収まらない程の一般兵を優に倒してしまうモノが、国に無断で侵入し怪しい素振りをみせたとあれば、何かが起きなかったとしても、スパイ、侵略、国家転覆の暗躍等、いくらでも嫌疑をかけられてしまうだろう。そして、実際あの宿屋の店員は通報していた。
 通報を受けて警察が出動しそうになった時に、丁度この町に帰ってきたトニーが機転を利かせ、逸れてしまった自分の客人だからと説き伏せて、信用の置けるモノとゼティフォール確保に向かったのである。
 ちなみに警察と衛兵の違いは、基本的に警察はヒト相手で問題を解決する組織で国ではなく町によって管理されているのに対し、衛兵は基本的に国から派遣された、町や村で起こったモンスターによる問題を解決する組織である。だが、警察を置く余裕がない村などでは衛兵が警察の役割を果たす事も少なく無い。
「ふう、ごちそうであった。しかし、私はこれからどうすれば良いのだろうか? 国を跨ぐにしても身元不明のモノをそのまま出国させるわけにも行くまい」
「そうですなあ……。確保の後の事は僕もまだ聞かせて貰っていないので分かりませんが、仮の身分証明書を用意して出国するか、荷物として送るかですか。身分を隠さずそのまま返すのも、不法入国者として強制送還というのも、これまた大ごとになってしまいますからできませんし……」
「連絡待ちか……」
「ではどうでしょう、お風呂に入られては。着替えも用意しておきますし、今気をもんでも仕方ないですからね」
「良いのか?」
「はい。ラブラドリーテ町長甥っ子は巷で噂の怪物についての会議だとかで数日帰ってこないみたいですし、ごゆっくりなさってください。そのうち魔王国からも返信があるでしょう」
「分かった。言葉に甘えるとしよう」



「ふむ、良い湯であった。そういえば、私の服が見当たらなかったがどうしたのだ?」
 ゼティフォールは風呂から上がり、用意されていた服を身に纏った後、トニーが待っている居間に来ていた。
「今汚れを取っている所です。部分の損傷が激しい為に代りの布が見つからない限り修繕は難しいので、せめてと思いまして」
 ノートパソコンを使って仕事をしていたトニーが、ゼティフォールに気付き返事を返す。
「そうか。置いてあった故この服を着たのだが、問題なかっただろうか?」
「ええ、そのために用意しましたからね。着心地はどうでしょう?」
「ああ、色も大きさも問題ない。しかも、身体をひねったり屈伸をしても突っ張る感じがしない。このまま戦闘ができそうな程だ。……気に入った」
 ワイシャツに、暗めの金色のネクタイ、黒のベルトで、パンツとジャケットはワインレッドのスーツだった。配色はゼティフォールに合わせたのだろう。
「それはそれは、選んだモノに聞かせたら喜ぶでしょうねえ。ちなみにですが、そのスーツは魔法で編まれたものでして、本当に戦闘行為をしても大丈夫なように作られているんですよ」
 トニーはひと段落着いたのか、ノートパソコンを畳んだ。
「ほう。いや、しかし破けてしまったらどうするのだ?」
 ゼティフォールがトニーの前の席に着く。
「魔法装備修繕用の魔機があるんで、それを当てて貰えば、欠片も残さず消滅させられない限りは直す事ができるんですよ」
「ほう、それは良い事を聞いた。だが、そのような事をすれば、装備の複製ができてしまうのではないか?」
「ですから、魔法の装備は基本的に買い取りをしていなかったり、やっていても子どもですら喜ばない値段での取引きになっているんです。まあ、国からまず許可が出ないと売る事もできませんし、所持数や売り上げを報告しないといけませんから、そもそも取り扱っていないお店の方が多いんですけどね」
 トニーがアイスティーをカップに入れてゼティフォールに渡す。
「店で買う場合の値段も、もしや国が決めているのか?」
 ゼティフォールはアイスティーを受け取り一口飲んだ。
「ええ。その場合は高値での取引きにはなるんですが、国、町等、輸入の場合はその輸出国からも、売り上げの一部を税として納めなければならないんで、販売者はあまり儲ける事はできませんね」
「では、何故そこまでして店に並べるのだ?」
「魔法装備を欲しがるヒト達は、例外もあるでしょうが、それを買おうと言うのだからお金を持っています。それに、買い物はできれば一回で済ませたいですよね? ですから、売っているお店は魔法装備と一緒に利益の大きいアイテムも並べているんです。レア魔法装備を注文している店は、利益を出す為にも他の商品に力を入れている事が多いので、全体的に信頼度が高くなり、お客さんも多くなりやすいんですよ。しかしながら、魔法装備を仕入れたは良いが、他の商品に力を入れる程予算が無い、なんてことになれば、普通の商品は買われず魔法装備だけが売れてしまい、魔法装備を再入荷する予算を捻出できないお店は、ただの粗悪な装備しか売っていないお店に早変わり。信頼度は落ちて赤字となって、最悪お店を畳まなければいけなくなるんですよ。ああ、つい語ってしまいましたな、申し訳ない」
 トニーは丁寧にゼティフォールに説明した。
「ふむ、詳しく教えてくれて感謝する」
「いえいえそんな! 僕ばかりが一方的に話してしまいましたが、気を悪くされませんでしたか?」
 トニーは慌てる。
「いや、変に話を省略されるより、長い話の方が好みだな。それに、なかなか興味深かったしな」
 ゼティフォールは口角を上げた。
「そう言ってもらえてありがたい」
 トニーは乾いた口を紅茶で潤した。
「話は戻るが、このスーツは高かったという事だな。急に出させてしまって、大丈夫だったのか?」
 ゼティフォールも紅茶を飲んだ。
「ああ、それは問題ありません。僕もそれなりにお金は持っていますし、ゼティフォール様をもてなしたり、必要になったものの代金は後で魔王国から補填されることになっているんですよ。それに、これも一応仕事になりますので報酬が出ますし」
「そうか、それは何よりだ。もし報酬の面で何か問題があれば言ってほしい。後から話を付けておくからな」
「ありがとうございます。そうだ、何故ここに飛ばされたのかお聞きしてもよろしいですか?」
 トニーは何気ない感じで尋ねた。
「ふむ。一応我が国の大臣に話してもよいか確認してからにしよう。知らぬ方が良い情報があるやもしれぬしな」
「はい、分かりました。せっかくこうして吸血鬼に会う待ちに待った機会を頂いているのですから、ですしね」
 その時、トニーのパルトネルが振動した。
「お、丁度電話が来ましたね」
 ゼティフォールは手で出るように促した。
「では、失礼。もしもし、トニーです。ああはい、無事お連れ致しました。はい、ありがとうございます。いえ、まだ大臣殿にお話しして決めるとのことで……。はい、わかりました」
 トニーはゼティフォールにパルトネルを渡した。
「大臣殿ですよ。替わって欲しいと」
 ゼティフォールはそれを受け取った。
「わかった……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...