35 / 49
幼女+紳士さん
26話 〜お金の大切さ〜②
しおりを挟む
「暗いな……」
装具店入ってみると開いているにも係わらず中は真っ暗で、外の明るい雰囲気と裏腹に、妙な静けさと暗いジメジメとした空気が不気味さを漂わせていた。
「なんかこわいね……」
ステラは声を小さくして、オルランドの服の裾を掴む。
「ああ。ここは本当に装具店なのか? 一軒隣に間違えてきたのか……?」
オルランドも声を小さくし、ステラの肩に手を置きつつ周囲を警戒する。
「……」「……」
沈黙が訪れる。しかし、今回は先程までの気の抜けたものではなく、一切気の抜けない、今にも戦いの火蓋が切られそうなものであったが。
────ガサ。
「何だ……!?」
何かが奥で動く音がした。
オルランドは杖に手をかけ、ステラは裾を持つ手が強くなった。
────ガサガサ。
「何かいる……」「ごくり……」
店のモノか、それとも別の何かか。店のモノであったとしても、この異様な事態だ、何かあったのかもしれない。オルランドは慎重に近づいた。
────ガサ、ガサガサガサ。
「……」「……」
オルランドはジェスチャーでステラに離れるよう伝え、ステラはゆっくり頷いた。
────────ガサ。
物音がした場所で赤く光がふたつ揺らめいた。
「ふー……」
オルランドは杖を構え、今にでも攻撃できる態勢に入っていた。
────────その時。
「────あっら~ん! お客様ね~?」
「何だ!?」「なになに!?」
──バババッ!
声に反応したのか、突如店内が明るくなる。
「もう、お客様なら、先に言ってよね! 衛兵さん達かと思って、ビクビクしちゃったじゃな~い」
レジに隠れて居たバリトンボイスの声の主が、そう言いながら顔を出した。
「……て、店員なのか?」
オルランドが冷や汗を垂らしながら、恐る恐る訊く。
「そうねえ。店員でもあり、店長でもあり、看板ムスメでもあり、用心棒でもあるわ……」
黒と白のストライプのローブで全身を包み、フードも深々とかぶっているそのジンブツは、オルランドの顔を穴が開いてしまうのではないか、という程に凝視している。
しかし、先程まで赤く光っていた瞳は今は真っ黒になっており、不気味さを演出するのはもはや張り付いたような笑顔だけになっていた。
「えと、おるにゃん。もうだいじょうぶ……?」
陰に隠れて居たステラが顔だけ出し、小さな声でオルランドに訊いた。
「あ、ああ。多分だが……」
歯切れの悪い返事をする。異様な雰囲気は持ち合わせているものの、警戒や敵意といったものはもう皆無といってよかった。
「そか……」
ステラがそれを聞いて出て来くる。
「あっら~ん! 今日は大繁盛! しかも、こんな可愛らしいお嬢さんが来るなんて、いつぶりかしら? いえ、初めてかもしれないわ!」
店のヒトと名乗ったそのモノは、ハイテンションで嬉しがる。が、顔周りはよく動いているのに、身体が微動だにしていないのは不気味であった。
「……念の為確認するが、そなたは店主という事で間違いないだろうか?」
オルランドは杖をしまわず訊いた。
「ええ。だから、そういってるじゃない」
「そうか、それはなによりだ」
オルランドは杖をしまって、ハンカチで汗を拭いた。
「そうだ、なんでこのお店に来てくれたか訊いてもいいかしら? ここね、商品も価格も他に負けないくらいイイはずなのに、お客さんが全然こないのよ~! 来たと思っても、直ぐに帰っちゃうの。冷やかしはごめんだわ!」
店主は憤慨している様子だった。
「……入った時に店が暗かったが、いつもああなのか?」
「ん? そうねえ、お客様がいる時だけね、灯りをつけるのは。アタシ、暗いのがス・キ・ナ・ノ」
店主はオルランドにウィンクし、オルランドは苦笑いで返した。
「おるにゃん、このヒト、わるいヒトじゃないけど、なんかこわい」
ステラがオルランドの後ろに隠れながら言う。
「まあ、底知れなさはあるな……。だが、あまりヒトに怖いとか言わないでおきなさい。傷ついてしまうからな」
オルランドはステラの頭に手を置いて言った。
「このイロオトコ!」
店主が突然大きな声を出した。
「ひゃ!?」「うおっ!」
それに思わずふたりは声を上げてしまう。
「ハンサムなのにオトメ心を気遣えるなんて、そんなの反則よぅ! 惚れちゃいそ……」
店主の頬が、気のせいでなければ赤くなっている。
「そうか。まあ、顔にはそれなりに自信があるからな」
オルランドは得意げな顔になった。
「まあ、アタシはオトメじゃないんだけど! うふぅっ」
店主は楽しそうに笑う。
「そうなのか?」
「ええ、アタシに性別という縛りはないのよ。こう見えて、悪魔だから!」
店主はまたもオルランドにウィンクした。
「悪魔か。通りで中性的だと思ったぞ」
オルランドは納得して頷いた。
「あくま?」
ステラは分からないようで、オルランドに訊いた。
「ああ。そうだな……。まず前提として、ヒトや動物は肉体が有り、肉の心臓がある。モンスターの体は肉であったり無機物であったりエネルギー体であったりするのは勿論の事、基本的に心臓部が魔石になっているのだ。それはわかるか?」
「あれ、でもプルプルはませき、おとさないね?」
「一応あのスライム状の部分が魔石の代りだが、まだ固まる程魔力が濃くなっていないのだ。そして他のモンスターの体に当たる部分が“グミボール”。内と外が逆になっているような感覚だ。それと、“結晶”は、魔力の澱のようなモノがグミボールに付着して固まったもので、それが育つと他のモンスターになることもある」
「へー! どんな?」
「そうだな……。一番多いのは他のプルプルの種類。例えば、シロプルもそうであろうな。後は、ゴーレム、妖精、精霊の類もそうだし、邪鬼、オーガのようなモノにもなるようだ。ああ、ミノタウロスもプルプルの近縁種から変異したらしい」
「すごいね」
「ああ。それで本題の悪魔だ。悪魔は厳密には少し違うが、魔力やマナが意思を持ったモノで、身体が無いから基本的にそれだけでは自由に動けない。故に、何か媒体になるものに宿って行動をとるのだ」
「そう。だから、この身体を壊されてもアタシは倒せないの。ま、この身体は気に入っているし、もし無くなったら泣いちゃうケド」
店主はステラに向かってウィンクをしながら手を振った。
「宿る媒体には性別があったりするが、本体にはない。聞いた話だが身体に使っている媒体の相性によって能力が上下するとか」
「ふーん。なんで、わるいかんじじゃないのに、あくまなの?」
ステラはそう言いながら恐る恐る店主に手を振り返した。
「優しい子ね。確かにアタシは誠実な悪魔と評判だけど、中には悪とついてもおかしくない、とっても悪い子もいるわ。でもね、悪魔って呼び名の由来はそこじゃないの」
店主は腕を組んで腰掛にもたれ、ため息を吐いた。
「アタシ達はね、濃縮された魔力に意思が宿ったモノのようなものだから、まだアタシ達に名前も無い昔、ヒト達は大魔法を使う時に巨大な魔石の代用品として使おうとしたワケ。そんな事されたらアタシ達だってタダじゃ済まないから、勿論抵抗したわ。そしたら魔法が暴走しちゃって、爆発を起こしたり、逆流した魔力が使用者に跳ね返ってモンスターに変わったりしたの」
「こわいね」
ステラの眉の端が下がる。
「そう、魔法を邪魔したりヒトをモンスターに変えてしまう得体の知れないモノとして恐れられた。それでいつからか、邪悪な魔力のモンスター、悪魔と呼ばれるようになったのよ」
店主は一瞬目を細めて、肩をすくめた。
「モンスターとは違うのだがな。昔はヒトや動物とモンスター以外の概念が無く、そう分類されてしまったのだ」
「じゃあステラ、あくまっていわない! なんていったらいい?」
ステラは拳を握り、決心した顔で店主に言う。
「あら、嬉しいわ。そうね、アタシ達もヒトと同じように意思があるわ。だから、マジンと仲間の間では言っているの。良かったら、それを使ってちょうだい」
店主は初めて本当の意味での笑顔を見せ、嬉しそうにステラに言った。
「わかった!」
「あと、アタシ自身の事は、ベラちゃんと呼んでくれたら、もっと嬉しくなっちゃうわね!」
「ベラちゃん?」
「そう! 良い子ね。アタシ今凄く機嫌がイイから、お嬢さんに何かあげちゃおうかしら!」
店主はそう言って店内に良いものがないかし始めた。
「あ、忘れていたがベラちゃん。このチラシに書いてあるトップハットが欲しいのだが、まだ残っているだろうか? それに、素材も売りたい」
オルランドは話に気を取られて、肝心のここに来た理由の方を忘れてしまっていた。
「ん? ああ、あるわよ。ちょっと待っててちょうだい」
そう言うと、商品の山をかき分けて店の奥に入って行った。
「おるにゃん、なにくれるのかな?」
ステラがオルランドを、とんとんと叩いて訊いた。
「さあ……。だが、貰ったらしかと礼を言うのだぞ」
「うん!」
2、3分経った頃、ベラちゃんが奥から騒がしく出てきた。
「おまたせ~!」
「ふむ。思ったより早かったな」
「ね」
「急いだからね!」
ベラちゃんはふたりに1回ずつウインクする。
「それで、あったのか?」
オルランドが手を広げてベラちゃんに訊く。
「あったのか?」
ステラがオルランドのマネをして言った。
「……?」
マネをされると思ってなかったオルランドは少し驚いてしまった。
「あら、せっかちさんなんだから~。ちゃんとイイモノ、見つけて来たわよ!」
ベラちゃんは語尾にハートが付きそうな言い方をする。
「いいもの?! やた!」
条件反射のようにステラが喜び、狭い通路で踊りだす。
「ステラ、商品を壊すといけない故、踊りは外に出てからにしなさい」
オルランドはステラをなだめ、自身の横に連れ戻す。
「まずは、ハンサムさんのトップハット。これは1000ディアよ」
ベラちゃんは、アンティークの木のテーブルに傷ひとつないきれいな黒のトップハットを置いた。
「1000ディアか……。ステラ、パルトさんに入っているお金の残高と、プルプルから手に入れた素材がどれだけあるか見せてくれるか?」
「はい、どーぞ!」
ステラがウエストポーチと、画面を電子マネーの欄にかえたパルトネルをオルランドに渡す。
「ありがとう。ふむ……」
オルランドが、指を曲げて何度も確認する。
「おるにゃん?」
真剣な表情に、ステラが少し困惑する。
「1000ディアだったな……」
ウエストポーチの素材入れと、パルトを何度も見比べる。
「ハンサムさん?」
その姿にベラちゃんまでも困惑してしまう。
「1000ディアか……」
今にもため息が出てしまいそうな表情でオルランドが言う。
「ベラちゃん、おるにゃんどうしたのかな?」
ステラがベラちゃんの所にそっと行き、耳打ちする。
「おるにゃん? ああ、このハンサムさんの名前ね? アタシにもわからないわ……」
ベラちゃんもステラに耳打ちで返す。
オルランドの指を曲げたり伸ばしたりするスピードは、次第に早くなり、もうプロも顔負けのレベルに達する。
そんなオルランドをふたりが遠巻きに観察していた。
────その時。
「せ、せ、1000ディアだとぉー!!?」
「おるにゃん?!」
その声は、店の前まで届いていたという。
装具店入ってみると開いているにも係わらず中は真っ暗で、外の明るい雰囲気と裏腹に、妙な静けさと暗いジメジメとした空気が不気味さを漂わせていた。
「なんかこわいね……」
ステラは声を小さくして、オルランドの服の裾を掴む。
「ああ。ここは本当に装具店なのか? 一軒隣に間違えてきたのか……?」
オルランドも声を小さくし、ステラの肩に手を置きつつ周囲を警戒する。
「……」「……」
沈黙が訪れる。しかし、今回は先程までの気の抜けたものではなく、一切気の抜けない、今にも戦いの火蓋が切られそうなものであったが。
────ガサ。
「何だ……!?」
何かが奥で動く音がした。
オルランドは杖に手をかけ、ステラは裾を持つ手が強くなった。
────ガサガサ。
「何かいる……」「ごくり……」
店のモノか、それとも別の何かか。店のモノであったとしても、この異様な事態だ、何かあったのかもしれない。オルランドは慎重に近づいた。
────ガサ、ガサガサガサ。
「……」「……」
オルランドはジェスチャーでステラに離れるよう伝え、ステラはゆっくり頷いた。
────────ガサ。
物音がした場所で赤く光がふたつ揺らめいた。
「ふー……」
オルランドは杖を構え、今にでも攻撃できる態勢に入っていた。
────────その時。
「────あっら~ん! お客様ね~?」
「何だ!?」「なになに!?」
──バババッ!
声に反応したのか、突如店内が明るくなる。
「もう、お客様なら、先に言ってよね! 衛兵さん達かと思って、ビクビクしちゃったじゃな~い」
レジに隠れて居たバリトンボイスの声の主が、そう言いながら顔を出した。
「……て、店員なのか?」
オルランドが冷や汗を垂らしながら、恐る恐る訊く。
「そうねえ。店員でもあり、店長でもあり、看板ムスメでもあり、用心棒でもあるわ……」
黒と白のストライプのローブで全身を包み、フードも深々とかぶっているそのジンブツは、オルランドの顔を穴が開いてしまうのではないか、という程に凝視している。
しかし、先程まで赤く光っていた瞳は今は真っ黒になっており、不気味さを演出するのはもはや張り付いたような笑顔だけになっていた。
「えと、おるにゃん。もうだいじょうぶ……?」
陰に隠れて居たステラが顔だけ出し、小さな声でオルランドに訊いた。
「あ、ああ。多分だが……」
歯切れの悪い返事をする。異様な雰囲気は持ち合わせているものの、警戒や敵意といったものはもう皆無といってよかった。
「そか……」
ステラがそれを聞いて出て来くる。
「あっら~ん! 今日は大繁盛! しかも、こんな可愛らしいお嬢さんが来るなんて、いつぶりかしら? いえ、初めてかもしれないわ!」
店のヒトと名乗ったそのモノは、ハイテンションで嬉しがる。が、顔周りはよく動いているのに、身体が微動だにしていないのは不気味であった。
「……念の為確認するが、そなたは店主という事で間違いないだろうか?」
オルランドは杖をしまわず訊いた。
「ええ。だから、そういってるじゃない」
「そうか、それはなによりだ」
オルランドは杖をしまって、ハンカチで汗を拭いた。
「そうだ、なんでこのお店に来てくれたか訊いてもいいかしら? ここね、商品も価格も他に負けないくらいイイはずなのに、お客さんが全然こないのよ~! 来たと思っても、直ぐに帰っちゃうの。冷やかしはごめんだわ!」
店主は憤慨している様子だった。
「……入った時に店が暗かったが、いつもああなのか?」
「ん? そうねえ、お客様がいる時だけね、灯りをつけるのは。アタシ、暗いのがス・キ・ナ・ノ」
店主はオルランドにウィンクし、オルランドは苦笑いで返した。
「おるにゃん、このヒト、わるいヒトじゃないけど、なんかこわい」
ステラがオルランドの後ろに隠れながら言う。
「まあ、底知れなさはあるな……。だが、あまりヒトに怖いとか言わないでおきなさい。傷ついてしまうからな」
オルランドはステラの頭に手を置いて言った。
「このイロオトコ!」
店主が突然大きな声を出した。
「ひゃ!?」「うおっ!」
それに思わずふたりは声を上げてしまう。
「ハンサムなのにオトメ心を気遣えるなんて、そんなの反則よぅ! 惚れちゃいそ……」
店主の頬が、気のせいでなければ赤くなっている。
「そうか。まあ、顔にはそれなりに自信があるからな」
オルランドは得意げな顔になった。
「まあ、アタシはオトメじゃないんだけど! うふぅっ」
店主は楽しそうに笑う。
「そうなのか?」
「ええ、アタシに性別という縛りはないのよ。こう見えて、悪魔だから!」
店主はまたもオルランドにウィンクした。
「悪魔か。通りで中性的だと思ったぞ」
オルランドは納得して頷いた。
「あくま?」
ステラは分からないようで、オルランドに訊いた。
「ああ。そうだな……。まず前提として、ヒトや動物は肉体が有り、肉の心臓がある。モンスターの体は肉であったり無機物であったりエネルギー体であったりするのは勿論の事、基本的に心臓部が魔石になっているのだ。それはわかるか?」
「あれ、でもプルプルはませき、おとさないね?」
「一応あのスライム状の部分が魔石の代りだが、まだ固まる程魔力が濃くなっていないのだ。そして他のモンスターの体に当たる部分が“グミボール”。内と外が逆になっているような感覚だ。それと、“結晶”は、魔力の澱のようなモノがグミボールに付着して固まったもので、それが育つと他のモンスターになることもある」
「へー! どんな?」
「そうだな……。一番多いのは他のプルプルの種類。例えば、シロプルもそうであろうな。後は、ゴーレム、妖精、精霊の類もそうだし、邪鬼、オーガのようなモノにもなるようだ。ああ、ミノタウロスもプルプルの近縁種から変異したらしい」
「すごいね」
「ああ。それで本題の悪魔だ。悪魔は厳密には少し違うが、魔力やマナが意思を持ったモノで、身体が無いから基本的にそれだけでは自由に動けない。故に、何か媒体になるものに宿って行動をとるのだ」
「そう。だから、この身体を壊されてもアタシは倒せないの。ま、この身体は気に入っているし、もし無くなったら泣いちゃうケド」
店主はステラに向かってウィンクをしながら手を振った。
「宿る媒体には性別があったりするが、本体にはない。聞いた話だが身体に使っている媒体の相性によって能力が上下するとか」
「ふーん。なんで、わるいかんじじゃないのに、あくまなの?」
ステラはそう言いながら恐る恐る店主に手を振り返した。
「優しい子ね。確かにアタシは誠実な悪魔と評判だけど、中には悪とついてもおかしくない、とっても悪い子もいるわ。でもね、悪魔って呼び名の由来はそこじゃないの」
店主は腕を組んで腰掛にもたれ、ため息を吐いた。
「アタシ達はね、濃縮された魔力に意思が宿ったモノのようなものだから、まだアタシ達に名前も無い昔、ヒト達は大魔法を使う時に巨大な魔石の代用品として使おうとしたワケ。そんな事されたらアタシ達だってタダじゃ済まないから、勿論抵抗したわ。そしたら魔法が暴走しちゃって、爆発を起こしたり、逆流した魔力が使用者に跳ね返ってモンスターに変わったりしたの」
「こわいね」
ステラの眉の端が下がる。
「そう、魔法を邪魔したりヒトをモンスターに変えてしまう得体の知れないモノとして恐れられた。それでいつからか、邪悪な魔力のモンスター、悪魔と呼ばれるようになったのよ」
店主は一瞬目を細めて、肩をすくめた。
「モンスターとは違うのだがな。昔はヒトや動物とモンスター以外の概念が無く、そう分類されてしまったのだ」
「じゃあステラ、あくまっていわない! なんていったらいい?」
ステラは拳を握り、決心した顔で店主に言う。
「あら、嬉しいわ。そうね、アタシ達もヒトと同じように意思があるわ。だから、マジンと仲間の間では言っているの。良かったら、それを使ってちょうだい」
店主は初めて本当の意味での笑顔を見せ、嬉しそうにステラに言った。
「わかった!」
「あと、アタシ自身の事は、ベラちゃんと呼んでくれたら、もっと嬉しくなっちゃうわね!」
「ベラちゃん?」
「そう! 良い子ね。アタシ今凄く機嫌がイイから、お嬢さんに何かあげちゃおうかしら!」
店主はそう言って店内に良いものがないかし始めた。
「あ、忘れていたがベラちゃん。このチラシに書いてあるトップハットが欲しいのだが、まだ残っているだろうか? それに、素材も売りたい」
オルランドは話に気を取られて、肝心のここに来た理由の方を忘れてしまっていた。
「ん? ああ、あるわよ。ちょっと待っててちょうだい」
そう言うと、商品の山をかき分けて店の奥に入って行った。
「おるにゃん、なにくれるのかな?」
ステラがオルランドを、とんとんと叩いて訊いた。
「さあ……。だが、貰ったらしかと礼を言うのだぞ」
「うん!」
2、3分経った頃、ベラちゃんが奥から騒がしく出てきた。
「おまたせ~!」
「ふむ。思ったより早かったな」
「ね」
「急いだからね!」
ベラちゃんはふたりに1回ずつウインクする。
「それで、あったのか?」
オルランドが手を広げてベラちゃんに訊く。
「あったのか?」
ステラがオルランドのマネをして言った。
「……?」
マネをされると思ってなかったオルランドは少し驚いてしまった。
「あら、せっかちさんなんだから~。ちゃんとイイモノ、見つけて来たわよ!」
ベラちゃんは語尾にハートが付きそうな言い方をする。
「いいもの?! やた!」
条件反射のようにステラが喜び、狭い通路で踊りだす。
「ステラ、商品を壊すといけない故、踊りは外に出てからにしなさい」
オルランドはステラをなだめ、自身の横に連れ戻す。
「まずは、ハンサムさんのトップハット。これは1000ディアよ」
ベラちゃんは、アンティークの木のテーブルに傷ひとつないきれいな黒のトップハットを置いた。
「1000ディアか……。ステラ、パルトさんに入っているお金の残高と、プルプルから手に入れた素材がどれだけあるか見せてくれるか?」
「はい、どーぞ!」
ステラがウエストポーチと、画面を電子マネーの欄にかえたパルトネルをオルランドに渡す。
「ありがとう。ふむ……」
オルランドが、指を曲げて何度も確認する。
「おるにゃん?」
真剣な表情に、ステラが少し困惑する。
「1000ディアだったな……」
ウエストポーチの素材入れと、パルトを何度も見比べる。
「ハンサムさん?」
その姿にベラちゃんまでも困惑してしまう。
「1000ディアか……」
今にもため息が出てしまいそうな表情でオルランドが言う。
「ベラちゃん、おるにゃんどうしたのかな?」
ステラがベラちゃんの所にそっと行き、耳打ちする。
「おるにゃん? ああ、このハンサムさんの名前ね? アタシにもわからないわ……」
ベラちゃんもステラに耳打ちで返す。
オルランドの指を曲げたり伸ばしたりするスピードは、次第に早くなり、もうプロも顔負けのレベルに達する。
そんなオルランドをふたりが遠巻きに観察していた。
────その時。
「せ、せ、1000ディアだとぉー!!?」
「おるにゃん?!」
その声は、店の前まで届いていたという。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる