【絶対幼女伝説】 〜『主人公は魔王なのに』を添えて〜

是呈 霊長(ぜてい たまなが)

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幼女+紳士さん

27話〜おるにゃんにお任せ〜

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「これは売る訳にはいかぬというに。ああ、なぜ最近、私の周りはこうも残酷なのだ……」
 オルランドは、肩を落としながらプルプルの“結晶”を握りしめる。
 計算したところ結晶以外の素材を売って、手持ちのお金を合わせてもトップハット代1,000ディアには足りなかったのだ。
「おるにゃん……」
 ステラはオルランドの事を心配そうに見つめる。
「足りないんじゃ、しょうがないわね。このお値段でもなかなかの破格よ?」
 この装具店の店主であり、悪魔、もとい魔力より生まれしヒトマジンのベラちゃんは、肩をすくめてトップハットを手に取る。買わないというなら、当然奥に戻すつもりだ。
「これでシロプルに対抗できると思ったが、くくっ、儚き夢であったか……」
 まるで、誰かを看取っているみたいな悲しみようである。
「おるにゃん、それ、だいじなの?」
 ステラはオルランドの服の裾を引っぱって訊く。
「私の初勝利を飾った記念の品であるからな。長き旅路の第一歩と、覚悟の証でもある」
「えと、じゃあトニーにおかねたりないって、いってこようか?」
「……いや、駄目だ! そのような事をすれば、私が絶望的に弱い事がトニーにバレてしまうではないか」
 一瞬迷ったオルランドであったが、ハッとして勢いよく否定した。
「ないしょなの?」
 ステラはきょとんとした顔で言う。
「ああ。トニーだけでなく、他のヒトにも言うでないぞ? 私の威厳が損なわれるからな」
「……」
 ステラはベラちゃんの方をチラと見て、またオルランドの顔を見た。
「……ああ! 普通にヒト前で話してしまった……。ステラ、今度から私が話しそうになった時、直ぐに止めてくれ。いいか?」
 オルランドはやってしまったと、頭を抱える。
「うん、いいよー。……ベラちゃん、このおはなし、ないしょだって!」
 詰めの甘いオルランドの代りに、ステラが釘を刺した。
「アタシはハンサムさんが弱くても気にしないし、わざわざ誰かに話すなんて野暮な事しないわ」
 ベラちゃんは、ステラにウィンクをする。
「ありがと!」
 そう言って、ステラもウィンクしようとする。だが、やり方がよく分からないのか、上手くできないのか、何度も両目を瞑ってしまう。
「初めは手で押さえて、感覚を掴んでみなさい」
「うん」
「そういえばさっきトニーって言ってたけど、貴方達、トニーと知り合いなの?」
「え? ああ、そうだな。今は町長宅で世話になっているのだ」
 オルランドは頭を少し上げて答える。
「なんだ、それならそうと、先に言いなさいよ~!」
 ベラちゃんが楽しそうに笑う。
「何故だ?」
「トニーはアタシの友達でもあり、恩ジンでもあるの。トニーがいなかったら、今頃アタシは邪悪なヒトの使い魔にでもなってたかもしれないわ。だ・か・ら、貴方達がトニーの知り合いっていうなら、売値も買値も良いようにしてあげるわ! それに、特売の情報もいち早くお届けしちゃう! 取り置きもオーケーよ」
 ベラちゃんは両手で丸を作った。
「……ほう! 良いのか?」
 うなだれていたオルランドの姿勢がスッと伸びる。
「ええ」
「では、結晶以外の素材をまず売らせてくれ!」
 オルランドはウエストポーチから“グミボール”を取り出し、レジのあるテーブルに並べていった。
「これで全部かしら?」
「ああ。それと、今あるこの金で足りるであろうか?」
 オルランドはパルトネルで電子マネーの残額を画面に出して、ベラちゃんに見せた。
「……そうね。今回は初回って事で大目に1050ディアで買い取ってあげる。だから、50ディアのお釣りよ」
「良し、良し……! 恩に着るぞ、ベラちゃん!」
 オルランドは嬉しさのあまり、強く拳を握りしめる。
「よかったね、おるにゃん!」
 ステラも一緒に喜び、思わず翼をはためかせた。
「ほら、パルトをここに当てて。お釣りが渡せないじゃない」
 そう言いつつも、オルランド達の喜びようにベラちゃんも口角を上げてしまっている。
「ああ、すまない。……こうか?」
 オルランドは指示された場所にパルトをかざす。レジから伸びたコードで繋がっている、板の様な形状の機械だ。
 ────────ピロン!
「うぉ!?」
 オルランドはおもむろに流れた電子音に驚いて声を出してしまった。
「これでお終いよ」
「おるにゃん、いつもびっくりしてるー」
 ステラが少し呆れたように指摘した。
「仕方ないではないか。私の時代は、電子決済? なるものは一切なかったのだからな」
 オルランドはバツの悪そうな顔で言った。
「そうなの?」
「ああ。基本的に金貨や銀貨、それに銅だ。後は物々交換もよくやっていたな」
「へー。なら、しょうがないね!」
 ステラは納得する。
「これで、このトップハットはハンサムさんのモノよ」
 ベラちゃんがオルランドにトップハットを渡す。
「おお!」
 オルランドは少し目を輝かせて丁重に受け取った。
「ひとつ忠告だけど、このトップハットは魔法装備なの。魔法装備はわかるわよね?」
「ああ」
「それで装備者が魔法的か物理的攻撃を受けそうになった時、掛かっている魔法が発動して、受けるはずのダメージを軽減するの。でも、この魔法は装備者の能力次第で強くも弱くもなるから、過信はしないようにしないとダメよ」
「……つまり、私が装備しても、現状ではあまり効果が得られないという事か?」
 オルランドがさっそくトップハットをかぶる。
「最低限の保証はあるから、気休めにはなるはずよ。……因みに、さっきシロプルにできるっていっていたけど、どれくらい実力に差があるか教えて貰ってもいいかしら?」
 ベラちゃんは、恐る恐る訊いた。
「えとね、ピカってしたら、おるにゃん、いっかいでやられちゃったの! それに、なんか、しろいこなみたいなのもね、ついていたんだよ?」
 オルランドの代りに元気よくステラが答えた。
「白い粉だと……?」
 オルランドは冷や汗を垂らした。
「ああ……」
 ベラちゃんは、オルランドをじっと見て納得する。
「どうしたの?」
 ステラが首をかしげる。
「いや。……ステラ、これからそのについても内緒でもいいか?」
 オルランドは顔をこわばらせながらお願いした。
「ん? わかった」
『……ハンサムさん、その白い粉ってでしょ?』
 ベラちゃんがオルランドに耳打ちをする。
 つまり、完全にオーバーキルな光魔法を受けて、吸血鬼であるオルランドの体が一部になってしまったという事である。
「シロプルの光は、耐えられるであろうか?」
 オルランドは頷きつつベラちゃんに訊いた。
「もし耐えられずにその、全身が灰もっと酷い状態になったら、どうなるの?」
「普通の復活系魔法ではどうにもならぬな……」
「そう……。直撃なら二回が限度、かすっただけでも三回か、多くて四回かしらね。何にしても、受けない方が良いのは確か」
「そうか。だがマシではあるな。……光魔法に耐えられるようになるには、何か方法は無いのだろうか?」
 オルランドはダメ元でベラちゃんに訊く。
「身体が丈夫になれば、相対的に光に強くなるんじゃない? 後は、光の精霊やそれに近い存在に加護を貰うか、光の力をわけてもらうとか。……オススメはしないけど、毒の免疫をつけるみたいに、その光魔法を何度も受けて耐性を付ける方法もあるわ」
「そうか……」
 オルランドはため息をついた。
 何故なら、かの昔勇者一行に破れた後、光の王である神に、契約をして力を手に入れていたからだ。
 つまり、オルランドは既にという事で、新たに加護を貰った所で変わりはしない。もう、戦闘を繰り返して強くなっていくか、光を使う敵が現れる度にやられない程度で受けていくしかないのだ。
「あ! 忘れかけてたけど、お嬢さんにプレゼント持って来てたんだったわ」
 ベラちゃんが手を叩いて、何やら指輪を取り出した。
「きれ~……。これ、なあに?」
 渡された青色の宝石のついたネックレスを、ステラは色んな角度から観察する。
「命のネックレスよ。命の危機に陥った時に助けてくれると云われているわ」
「ありがと!」
「それをどんな時にどう使うかは貴女次第。大事にしてね」
「うん!」
「なあ、ベラちゃん。云われているとはどういうことだ? 確実に効果が得られるモノではないのか?」
 ベラちゃんの言葉に引っかかったオルランドが訊く。
「ほら、アタシこんなだから命の危機とは今のところ無縁で、効果が発動したことないの。それに、貴重な石を使っているから数が出回らなくて、口コミも殆ど無いのよ。ま、理論上は効果が得られるはずだけどね」
「何にせよ過信は禁物か。だが、そんな貴重なモノを貰っていいのか?」
「いいの?」
「ええ。売るとなると国の決めた値段に従わないといけないでしょ? そうなると全く売れないのよね……」
 ベラちゃんは、困った顔でため息をつく。
「なんディア?」
 ステラがベラちゃんに訊いた。
「そのネックレスを売ったらってこと?」
「そう」
「5000万ディア以上で売れって言われているわ」
 ベラちゃんは何のもなく、しれっと言ってのけた。
「……」
 あまりの値段に、オルランドは言葉を失う。
「ん? スナックミートなんこかえるくらい?」
 どれくらいの値段かわからなかったステラは、オルランドに訊いた。
「個はわからぬ。だが、スナックミート一袋で200ディア故、25万袋だな」
「よくわかんない」
「ふふっ。私も25万袋がどれ程か想像できぬわ」
「ま、置いてても宝の持ち腐れだし、持って行ってちょうだい」
「この恩は必ず返す。ありがとう」
「ありがと、べらちゃん!」
 ステラは嬉しそうにネックレスを首にさげた。
「ステラ、基本的にヒトから見られないよう服の内側にしまっておきなさい」
「なんで? みせたいのに……」
 ステラがしょんぼりする。
「高価なモノである上に、見た目も良い。そんなモノを見てしまったら、皆欲しくなってしまうぞ。私も気を付けるが、万が一盗まれたらどうするのだ?」
 オルランドはできるだけ優しく諭した。
「ぬすまれるの、いや」
「で、あらば。やはり内側にしまっておきなさい。それと、無くさないようにな」
「はーい……」
 ステラが渋々ネックレスを服の内側に隠し、ため息をつく。
「……ステラ、アクセサリーが欲しいのか?」
 オルランドはしゃがんで、ステラと目線を合わせた。
「うん……」
「ネックレスか、それとも指輪とか、ブレスレットでもいいのか?」
「……」
 ステラはうつむいたまま答えない。そして、前髪で表情が隠れて良く見えないが、楽しい顔はしていないのがわかる。
「……前髪が目にかかってしまっているな」
 オルランドが前髪を少し分けて、ステラの目に掛からないようにした。
「どうしようか……。高価なモノでは同じだからな」
 オルランドが店内を見渡す。
「比較的買いやすいのはこのあたりよ」
 ベラちゃんが棚を指差す。
「どれ。ふむ、なかなか綺麗だな。おや、もしかしてだが、この指輪についているこれは……」
 オルランドが棚に並んでいた指輪の石に目をつける。
「ああ、プルプルの結晶ね。それはシロプルだけど」
「そうか……。しかしこの値段、この店の結晶の買取価格とあまり変わらないが、加工しやすいものなのか?」
 シロプルの結晶の指輪の値段は、2500と書かれている。シロプルの結晶の買い取り価格が1500、そして加工の手間と他の材料費の事を考えるとかなり破格と言える。
「ええ。道具さえあれば加工自体は誰でもできるわ。ま、センスと器用さがないと上手くできないし、売り物にしようと思ったら相当な技術も必要だけどね」
「ふむ。道具はここにあったりするのか?」
 オルランドが少し考えて、ベラちゃんに訊いた。
 ステラが不思議そうにオルランドを見ている。
「ええ、あるわ。でも、それなりにお値段するわよ? 最低限揃えるだけでも1万ディア近くするし」
「……買えぬな」
 オルランドが唇を噛む。
「……ちゃんと返す事、それと町の外には出さない事が飲めるなら。それと、他にも少し条件があるけど……」
 見かねたベラちゃんがオルランドに言う。
「貸してくれるのか? あ、だが、私は今お金を持っていないぞ……?」
「知ってるわ」
 ベラちゃんがニヤリと笑った。
「な、何だ?」
 オルランドが固唾を飲んだ。
「基本的にお使いよ。そうね、手始めにを倒してもらおうかしら?」
「暴れトゲイモリ?」
 オルランドがベラちゃんに訊いた。
「ええ、両生類型モンスターよ。に最近住み着いたんだけど、あそこは基本的に立ち入り禁止でね」
「立ち入り禁止では入れぬのではないのか?」
「だ・か・ら、バレないように内密にね。あ、でもトニーには教えても大丈夫よ」
「そうなのか?」
「そもそもトニーも困っているはずだから。詳しくは本ニンに訊けばわかるけどね」
「ベラちゃん自身が出すお使いではないのか?」
「今回は。だって、実力も分からない状態でお使いを頼んで、失敗するのイヤでしょ? だから、今回はトニー他のヒトの補助が得られる、所謂お試しね」
「分かった。期限はあるのか?」
「そうね、ハンサムさんがこの町を離れる前まで。急いでるわけでもないしね。ああ、ハンサムさんのちゃんとした名前を教えてくれるかしら? はニックネームでしょ」
「オルランドだ。これから宜しく頼む」
「ベラよ。期待しているわ」
 オルランドとベラちゃんは握手を交わした。
「おるにゃん?」
 真剣な話がひと段落着いたのを見て、ステラがオルランドに声を掛けた。
「ああ、待たせたな。ステラ、私は今お金を殆ど持っていない。故に、アクセサリーを買う事ができないのだ。これは分かるな?」
 オルランドがしゃがんでステラに言う。
「うん……」
 ステラは困ったような顔をして話を聞く。
「この先いつか、十分な金を手に入れたら良いものを買ってやる。だがその前にステラは、アクセサリーが欲しいのだろう?」
「うん」
「そう思ってな、少々不格好になるやもしれぬが、私がアクセサリーを作ることにしたのだ。それで良いだろうか?」
「……うん」
 ステラの顔に少し笑顔が戻る。
「そうか、良かった。きっと気に入るよう精一杯作る故、それまで少し待っていてくれ」
「うん、わかった! たのしみにするね! うふふっ」
 思わずステラは笑顔をこぼしてしまい、ニヤニヤを手で押さえる。
「では、行こうか。アクセサリーの材料を入手せねばならぬからな」
「ふふっ。どんなのになるかな?」
「それは出来上がってのお楽しみ、という事にしておいてくれ」
 オルランドは立ち上がってステラの頭を軽く撫でた。
「ベラちゃん、ありがとう。私達は行く」
「ええ。アタシもオルランドさんの活躍、期待してるわ……!」
 ベラちゃんはウィンクしつつオルランドに手を振った。
「ああ。必ず期待に添えよう」
「ベラちゃん、ありがと! またね、ばいば~い」
「ええ。お嬢さん、……ステラさんね、バイバイ。また会いましょ」
 ステラとベラちゃんは手を振りあった。
「よし、ではシロプルの所へ……」
「しゅっぱ~つ!」
 オルランドとステラは店を後にして、シロプルの待つ草原に向かった。

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