鏡節物語

野部 悠愛

文字の大きさ
1 / 2
プロローグ

しおりを挟む
いつもと変わらない日常。
毎日同じように繰り返されるそれはきっと「幸せ」というものなのだろうと思う。
……そんなことは誰に言われなくてもわかってる。
毎日毎日おんなじことを繰り返していく日常には新鮮さなんて言うものはかけらもない。

しかも、俺には未来が見える。
先に言っておくが決して中二病なんかじゃない。
本当に中二病だったならどれだけ良かったことか……。
何度もそう考えた。

想像してみてほしい。例えば推理小説を読もうとしたとする。
その小説の表紙をめくる前にどのような事件が起こるのか、犯人はだれなのか、その犯人の動機はいったい何なのかまでわかったとしたら、きっと読もうという気なんかなくなってしまうのではないだろうか?

俺にはそういったことが見えるのだ。
別に見てやろうと思ってみているわけじゃない。
一日に何が起こるのかが見えるというのはとても退屈だ。
誰が何を言うのかがあらかじめわかっていれば、それがどれだけ面白いことであろうとも笑えたものではない。

未来を見ないようにいろいろと試してみたこともある。
視界をふさいでみたり、何にも意識を向けないようにしてみたり、思いつくことは手あたり次第に試した。
でも、それらの試みは全部無駄な徒労に終わった。
未来のことはいつだって文章や映像として頭に浮かんでくる。

制御のできない力ほどいらないものもないだろう。
それでも、投げ出さずに生きてゆくことができているのは幼馴染のおかげだ。

今日もあいつは体調を崩していた。昼休みの時点で未来を見ていなくても倒れるだろうことが容易に想像できたくらいだ。(今日の朝顔を合わせた時にはすでに体調を崩して保健室で横になっている未来が見えていた。)
あいつの能力は本当にたちが悪い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

よくある風景、但しある特殊な国に限る

章槻雅希
ファンタジー
勘違いする入り婿、そしてそれを受けてさらに勘違いする愛人と庶子。そんなお花畑一家を扱き下ろす使用人。使用人の手綱を取りながら、次期当主とその配偶者の生きた教材とする現当主。それをやりすぎにならないうちに収めようと意を痛める役所。 カヌーン魔導王国では、割とよくある光景なのである。 カヌーン魔導王国シリーズにしてしまいました(笑) 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

【完結】アル中の俺、転生して断酒したのに毒杯を賜る

堀 和三盆
ファンタジー
 前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。  それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。

処理中です...