鏡節物語

野部 悠愛

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プロローグ

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今は放課後。
保健室を覗くと顔色の悪いあいつの姿がある。
『巽、助けて。保健室教諭の脳内が今日もえげつないよ…』
脳みそに直接届く声は内容ほど深刻そうではない。
顔色もだいぶ落ち着いたように見える。
やっぱり人が少ない環境が良いのだろうか?
『うん。人が少ない方が落ち着くかな。』
返事が返ってきた。

「夜宵、帰るぞ。歩けそうか?」
「うん。まだ本調子じゃないけど大丈夫。」

こいつ、夜宵の能力はテレパシーだ。
だから、教室にいると色々な人の心の声が聴こえてきて落ち着かないようだ。
今日だって無理して教室に長くいたから体調を崩したのだろう。

『どうしたの?今更この力について考えてるなんて。どうせわからないし、わかって貰えないし無駄じゃない?』
「……そうだな。帰るか。」

……

いつもと変わらない帰り道。
二人並んで黙って会話しながら歩く。

″黙って会話″だなんておかしなものだ。
本来ならできるはずもない。

でも、こいつは人の心を見ることが出来る。
そして、心に語りかけることも出来る。

でも、人の心を受信する力は強いのに、どうしてか自分の心を送信する力の弱い夜宵は俺にしか送信はできないようだ。

これは色々な人に対して試したことだから確かだ。

『それにしても、学校ってつまんないよな。先生のギャグとか言う前に何言うかわかるから、リアクションに困るし、疲れる……。』
『そうだね、本当に学校は疲れるよ。みんなが色々なことを考えていて、女の子なんか特に表面上は笑顔なのに目の前の相手を脳内では貶して蔑んでいるから。』
まぁ、悪いことを考えるのも裏表が激しいのも女の子に限ったことじゃないけどね。
そう言う夜宵の顔はいつもと同じように微笑みを浮かべているのに悲しそうだった。
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