ヒロインは悪役令嬢(姉)の恋を応援したい

野部 悠愛

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プロローグ

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攻略対象(ヒーロー)とヒロインが苦難を乗り越えて結ばれる。ヒロインにだけ優しい世界。
そんな世界に憧れないと言ったら嘘になってしまうけど、でも、違う。
私のヒーローは1人だけ。昔から、ずっと……。

転生、なんて、しかも前世でプレイしたゲームの世界だなんて、きっとみんな信じてはくれないのでしょう。
でも、間違いないのです。
……あの日、目が覚めて転生したことに気づいてから早3年。
高熱を出して寝込んでいた私は3日間に渡って夢を見ました。
この間までの朧気な記憶が少しだけではありますがはっきりしました。
鏡に映る自分の姿を見ながら何回目かの確認をします。
ピンクゴールドの髪にレッドピンクの瞳。
そして、私の名前は「アリシア、もう体調は大丈夫かしら?」
母様が部屋の外から声をかけてきました。
急いでベッドに潜り込んだ私は確信します。
やはり、ここは乙女ゲーム「FlowersLover」の世界で、私はその主人公、アリシアでした。
「アリシア?入るわよ。」
母様がゆっくりとドアを開けて中に入ってくる。
杖を着いた母様はゆっくりゆっくりとこちらに歩いてきます。
母様の杖については設定資料集で見た覚えがあるのだけれども思い出せません。
自分の前世のことも曖昧です。
名前が竹内杏だったということと、お父さんに殺されたことは覚えているけれど、どんな暮らしをしていたかなどは覚えていません。
「熱は下がったようだけれど、少しぼんやりしているわね。」
大丈夫かしら?なんて言いながら私の額に手を当てる母様。
でも、このままでは病弱な母様に熱をうつしてしまいます。
「おかあしゃま、アリシアはだいじょうぶでしゅ。もうしゅこしやしゅんでいりぇばきっとよくなりましゅ。だかりゃおかあしゃまもおへやにもどってやしゅんでくりゃさい。」
回らない舌を使って話したら、拙い喋り方になってしまいました。
でも仕方がないのです。
なぜならアリシアはまだ2歳なのだから。
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