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第一話 異世界での目覚め
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「ウォオオオォオオオォオォォォ!」
「ウォオォオオォォォ!」
各所から上がる鬨の声。それと同時に立ち上がる砂煙。
俺達の目の前にはゴブリン、オークの魔物連合軍が迫る。
魔物連合軍の士気と勢いは振動となり、城壁の上の俺達にまで伝わっていた。
「カズト、相手の数は1万はくだらないぞ」
和装のような装いの小柄な女性が俺に伝えた。
しかしその言葉とは裏腹に、その顔は愉しげであった。
「ええ。聞いていたより少し多いですね......」
こちらの軍勢は相手に対して半分の5千。しかも個の力で圧倒的に優位に立つのは魔物達である......。俺達の置かれている状況は正しく絶対絶命とも言えるだろう。
通常であれば、だ。
「この程度の数なら予定通りいけるでしょう。例のものは準備できてますか?」
俺は小柄な女性に尋ねた。
「ああ。無論だ」
小柄な女性が火矢を構える。そしてそれに呼応するように弓矢部隊も火矢を構えた。
今から始まるのは人と魔物との激戦だ。
だがそんな一大決戦を前にしても、俺の心は不思議と穏やかなものであった。
それはきっと......俺が思い起こしていたからであろう。この世界にきてからのことを。まるで自分がこの世界で行ってきたことが何を成したのかを振り返るかのように。
--------
建設会社に勤める俺は元請の現場監督として働いていた。
大学や大学院では建築材料や建築の構造について研究していたが、縁あって入社した建設会社で5年ほど勤めていた。
現場の作業自体は18時程度に終わることが大半ではあるが、図面作成や事務処理などをこなしていくと午前様になることも少なくない。
俺は人の気配がない通りをトボトボと歩いていた。街頭と自販機の灯りだけがぼんやりと街を照らす。
俺は家に着くや否やコンビニ弁当を電子レンジにセットした。
そして作業着は脱いだそばから洗濯機に放り込み、そのままシャワーを浴びる。
次に俺は電子レンジから弁当を取り出し寝室へと向かう。
弁当の蓋を開け、一口二口と食べ進めるが、食の感動だとか喜びだとかは感じなかった。ただただ栄養のために食べていた、そんな風に思う。
忙しさだけではなく、毎日ほぼ同じものを食べていたこともそのことを助長させていた。
そして食事という名の栄養補給を終えた俺はそそくさとゴミを片付け、寝る準備を整える。
これが俺の毎日のルーティンであった。
毎日同じ行動、同じ生活で嫌になる......。何が楽しくてこんな生活を送ってるんだろ......。
俺はそんなことを考えながら目を瞑った。
それからどれくらいの時間が経ったであろうか、不意に目蓋の裏に光が走った。
その光は中心部から放心円状に広がっており、その中央には黒い淀みのようなものがユラユラしているようにみえる。
なんだこれは......?
俺は咄嗟に目を開けようとする。しかし、何故だか体に力が入らない。
すると頭の中で何かの声のようなものが聞こえていることに気付く。
「カ......エ............カ?」
「カ......エ......イカ?」
なんだ?なにをいっている......?
「カエタイカ?」
変えたいか?
「カエタイカ?ミズカラヲ、セカイヲ」
ああ、変えたい。こんな単調な毎日はもう嫌だ!!
俺はそう強く念じた。
「ナラバイクガイイ。ソシテカエテミセロ。ミズカラヲ、セカイヲ」
その言葉と同時に目の前が白い光で包まれた。
--------
「......う、うぅん......」
陽の光を感じ目が覚める。
直後、寝坊を直感する。
「やばい!! いま何時だ!?」
すぐさま立ち上がりスマホを探すものの見当たらない。
というよりも、いま目を覚ましたこの場所に見覚えがない。
「なにがおきた......?」
確か......光が見えて......その後に声が......。
そして俺は思い出した。自身で強く念じたことを。
もしかして、本当に世界が変わったのか?
これがTVやインターネットでよくみる異世界というものなのか?
そう考えると俺はいても経ってもいられなかった。
早速部屋の中を見渡してみる。
部屋自体の広さは充分だ。しかし、ほったて小屋と言えばいいのだろうか、柱は地面を掘って埋められており、壁は板張りの簡素な部屋であった。
イメージとしては高床式倉庫に近いものがあるが、この建物は屋根壁ともに木材の板を使用しているなど日本のそれとは若干の相違が見られた。
さらに俺は外がどうなっているのかが気になってしまった。
「ちょっと外も見てみるか」
そう言いながら俺は扉を開ける。
扉の外には見渡す限りの草原が広がっていた。牧場のように広々した場所で、心地いい風が吹いている。
小高い丘もあり、丘の頂上には1本の大きな木が植わっている。
おそらく風光明媚とはこういった景色を指すのだろう。
俺は思わず駆け出した。
これは最高だな。
そう思いながら辺りを見渡す。
すると目に付いたのは、はるか遠くにあるであろう山であった。
その形は切り立った崖のようで、全体が雪景色すれている。間違いなく遠くにあるはずのその山は、まるで間近にあるかのごとく大きくみえ、そして威圧感を放っていた。
そしてその山から左方へと視線を移す。ーーそこには大小2つの月が寄り添うように浮かんでいた。大きい月の一部が欠け落ち小さい月になったのであろうか、大きい月の4分の1程度が欠けてしまっているのがわかる。
これが異世界......これが変わった世界......俺はそう思うと楽しくて仕方がなくなった。
こんな気持ちになるのはいつぶりであろうか。それは長い間俺が忘れてしまっていたものであった。
そんなことを考えていると、どこからか声がすることに気付く。
声のする方へ目を向けると、そこには見知らぬおばさんがこちらに向かった手を振ってるのが見えた。
「ウォオォオオォォォ!」
各所から上がる鬨の声。それと同時に立ち上がる砂煙。
俺達の目の前にはゴブリン、オークの魔物連合軍が迫る。
魔物連合軍の士気と勢いは振動となり、城壁の上の俺達にまで伝わっていた。
「カズト、相手の数は1万はくだらないぞ」
和装のような装いの小柄な女性が俺に伝えた。
しかしその言葉とは裏腹に、その顔は愉しげであった。
「ええ。聞いていたより少し多いですね......」
こちらの軍勢は相手に対して半分の5千。しかも個の力で圧倒的に優位に立つのは魔物達である......。俺達の置かれている状況は正しく絶対絶命とも言えるだろう。
通常であれば、だ。
「この程度の数なら予定通りいけるでしょう。例のものは準備できてますか?」
俺は小柄な女性に尋ねた。
「ああ。無論だ」
小柄な女性が火矢を構える。そしてそれに呼応するように弓矢部隊も火矢を構えた。
今から始まるのは人と魔物との激戦だ。
だがそんな一大決戦を前にしても、俺の心は不思議と穏やかなものであった。
それはきっと......俺が思い起こしていたからであろう。この世界にきてからのことを。まるで自分がこの世界で行ってきたことが何を成したのかを振り返るかのように。
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建設会社に勤める俺は元請の現場監督として働いていた。
大学や大学院では建築材料や建築の構造について研究していたが、縁あって入社した建設会社で5年ほど勤めていた。
現場の作業自体は18時程度に終わることが大半ではあるが、図面作成や事務処理などをこなしていくと午前様になることも少なくない。
俺は人の気配がない通りをトボトボと歩いていた。街頭と自販機の灯りだけがぼんやりと街を照らす。
俺は家に着くや否やコンビニ弁当を電子レンジにセットした。
そして作業着は脱いだそばから洗濯機に放り込み、そのままシャワーを浴びる。
次に俺は電子レンジから弁当を取り出し寝室へと向かう。
弁当の蓋を開け、一口二口と食べ進めるが、食の感動だとか喜びだとかは感じなかった。ただただ栄養のために食べていた、そんな風に思う。
忙しさだけではなく、毎日ほぼ同じものを食べていたこともそのことを助長させていた。
そして食事という名の栄養補給を終えた俺はそそくさとゴミを片付け、寝る準備を整える。
これが俺の毎日のルーティンであった。
毎日同じ行動、同じ生活で嫌になる......。何が楽しくてこんな生活を送ってるんだろ......。
俺はそんなことを考えながら目を瞑った。
それからどれくらいの時間が経ったであろうか、不意に目蓋の裏に光が走った。
その光は中心部から放心円状に広がっており、その中央には黒い淀みのようなものがユラユラしているようにみえる。
なんだこれは......?
俺は咄嗟に目を開けようとする。しかし、何故だか体に力が入らない。
すると頭の中で何かの声のようなものが聞こえていることに気付く。
「カ......エ............カ?」
「カ......エ......イカ?」
なんだ?なにをいっている......?
「カエタイカ?」
変えたいか?
「カエタイカ?ミズカラヲ、セカイヲ」
ああ、変えたい。こんな単調な毎日はもう嫌だ!!
俺はそう強く念じた。
「ナラバイクガイイ。ソシテカエテミセロ。ミズカラヲ、セカイヲ」
その言葉と同時に目の前が白い光で包まれた。
--------
「......う、うぅん......」
陽の光を感じ目が覚める。
直後、寝坊を直感する。
「やばい!! いま何時だ!?」
すぐさま立ち上がりスマホを探すものの見当たらない。
というよりも、いま目を覚ましたこの場所に見覚えがない。
「なにがおきた......?」
確か......光が見えて......その後に声が......。
そして俺は思い出した。自身で強く念じたことを。
もしかして、本当に世界が変わったのか?
これがTVやインターネットでよくみる異世界というものなのか?
そう考えると俺はいても経ってもいられなかった。
早速部屋の中を見渡してみる。
部屋自体の広さは充分だ。しかし、ほったて小屋と言えばいいのだろうか、柱は地面を掘って埋められており、壁は板張りの簡素な部屋であった。
イメージとしては高床式倉庫に近いものがあるが、この建物は屋根壁ともに木材の板を使用しているなど日本のそれとは若干の相違が見られた。
さらに俺は外がどうなっているのかが気になってしまった。
「ちょっと外も見てみるか」
そう言いながら俺は扉を開ける。
扉の外には見渡す限りの草原が広がっていた。牧場のように広々した場所で、心地いい風が吹いている。
小高い丘もあり、丘の頂上には1本の大きな木が植わっている。
おそらく風光明媚とはこういった景色を指すのだろう。
俺は思わず駆け出した。
これは最高だな。
そう思いながら辺りを見渡す。
すると目に付いたのは、はるか遠くにあるであろう山であった。
その形は切り立った崖のようで、全体が雪景色すれている。間違いなく遠くにあるはずのその山は、まるで間近にあるかのごとく大きくみえ、そして威圧感を放っていた。
そしてその山から左方へと視線を移す。ーーそこには大小2つの月が寄り添うように浮かんでいた。大きい月の一部が欠け落ち小さい月になったのであろうか、大きい月の4分の1程度が欠けてしまっているのがわかる。
これが異世界......これが変わった世界......俺はそう思うと楽しくて仕方がなくなった。
こんな気持ちになるのはいつぶりであろうか。それは長い間俺が忘れてしまっていたものであった。
そんなことを考えていると、どこからか声がすることに気付く。
声のする方へ目を向けると、そこには見知らぬおばさんがこちらに向かった手を振ってるのが見えた。
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