異世界からの旅人 〜知識マニアな現場監督の俺は天然資源をチートな使い方で利用して世界を変えてみようと思います〜

山崎リョウタ

文字の大きさ
2 / 30

第二話 異世界からの旅人

しおりを挟む
 おばさんは俺に近付いてきた。

 間近でみるおばさんは、おばさんと呼ぶにはとても失礼なほどの麗人であった。

「あら、起きたの? あなた、そこの草むらで倒れていたのよ」

「──草むらで?」
予想外の言葉に一瞬たじろぐ。

「そうよ。旦那が家畜の世話に向かうときに見つけてね。旦那と私でそこの倉庫まで運んだの。早朝から大変だったんだから」
 そう話すおばさんの顔はいたずらに微笑んでいた。

「そうでしたか......。ご迷惑をお掛けしました」

「気にしないでいいのよ。そうだ、あなたどこか行く場所あるのかしら? ないのならご飯でも食べていきなさいな」

 俺は少し考えたのち、こう答えた。
「──ではお言葉に甘えさせていただきます」

「じゃあ母屋のほうに行きましょう。夫もちょうど帰ってきてるから」

 おばさんはそう言うと倉庫の裏手側へ回っていく。そこには倉庫より一回りも二回りも大きい建物があった。

「こっちよ。入って」

 おばさんに続き俺も中へ入る。

「失礼します」

 中には旦那とおぼしき人物が椅子に腰掛けていた。
 その身体は中肉中背の俺よりもはるかに大きく、圧力を感じるほどだ。だがその圧力の中には優しい雰囲気も感じられ、決して嫌なものではなかった。

「やあ、大丈夫かい??」
 旦那は優しく受け入れてくれた。

「はい、ありがとうございます」

「挨拶が遅れてしまったね。僕はアレク。こっちは妻のサリアだ」

 アレクがそう話すと同時にアレクの背後から黒い影が飛び出した。

「う、浮いてる!?」
 その影は一見すると猫のような姿で、空中に浮かびながら毛繕いをしている。

「そうそう、この子は“テン”のミーアだ。君は“テン”が初めてなのかい?」

 “テン”とはこの猫のような動物名を指すのだろうか。
「はい。羽もなく空中に浮かぶ動物は初めてで」

「そうか」

 アレクが言葉を続けた。
「ところで君の名前は??」

「俺はカズトと言います。よろしくお願いします」

「カズトくんか、この辺りでは聞かない名前だね。でもまあよろしく頼むよ。まずは食事をしようか」

 アレクがそう言うと、すぐさまサリアが食事を配膳してくれた。
 食事はチーズサンドのようなものであった。見た目も匂いも食欲をそそる一品だ。

「こんなものしか用意出来なかったが、どうぞ召し上がっておくれ」

 コンビニ弁当以外のものを食べるのはいつぶりだろうか。職場でもコンビニで買ったパンやおにぎりだけでしのいでいたため、久方ぶりの温かな手料理であった。

「お、美味しい!」

「うちの自家製チーズを使っているのよ」
 おばさんは得意げな顔をして言った。

 だがその顔も伊達ではない。濃厚ながらも食べやすく、後引く美味しさであった。

 食事を堪能したのち、アレクが確信をついた発言をする。
「それでカズトくん、君はなぜ草むらで倒れていたんだい?」

「それが......自分でもよくわからなくて」

「そうか......。おかしな話をして気を悪くしないで欲しいのだが、もしかして君は“異世界からの旅人”なんじゃないかと僕は思っているんだ」

「へ......?」
 俺はアレクに虚をつかれ、間の抜けた返事をした。

「カズトくんはいま“テン”をみて驚いていた。でもこの世界で生活していて“テン”を見たことのない人なんていないんだ。それはつまり、君がこの世界ではないどこかからきたことに繋がる」

「──確かに俺はこの世界の人間ではないと思います」
 俺はアレクから出た異世界の言葉に反応し、自分の置かれている状況を洗いざらい話した。

「うぅん......なるほど。この世界には時たま“異世界からの旅人”が現れるんだ。先ほども言った通り、君がそうなのかもしれない。と言っても、100年に一度とかそれくらいの長いスパンの話だから、本当であったらすごい珍しいことなんだけどね」

 ここまでの話で少し余裕の出てきた俺は、とある疑問をアレクへ伝えた。
「ところで“テン”が浮いていたのは魔法か何かなんですか?」

「ああ、“テン”は精霊だからね。魔法が使えるんだよ。浮いていたのも魔法の一種なんだ」

 俺は目を輝かせながら言った。
「やっぱり! 魔法だなんてすごい異世界感!」

「ははは!期待させてしまったかな? 魔法と言っても出来ることは本当に限られていてね。出来ても軽い物を浮かせる程度なんだ」

「え、それってすごい微妙じゃ......」

 精霊とは一体......と思ったものの言葉を飲み込み本題に話を戻した。
「それで“異世界からの旅人”は今まで何人くらいいたんですか?」

「そうだねぇ......。私が知っている限りでは伝承に残っている2人だけかな。どちらもこの国を救ってくれた英雄なんだよ」

「国を!? どういうことですか??」
 平和な日本で過ごしてきた俺にとって、国を救うとはどういうことなのかさっぱりわからなかった。

「今から500年前、魔物達が今より凶暴だった頃の話だ。その時代は魔物達がそこら中に溢れていて、街や王都に軍勢で侵攻してきていたほどだったらしい。この国の兵と魔物とで戦力はほぼ膠着状態。いやむしろ押され気味だったのかな」

 魔物という言葉に表情が強張る俺。
 だが俺の表情の変化など意に介さずアレクは続けて語る。
「そんな時にどこからともなく現れた2人の戦士が兵達を率いて魔物達を倒したんだ。そして北の地へ追いやった。それ以来、魔物達は沈静化し表立った侵攻は起きていないそうだ」

「魔物って!? 2人はどうやって魔物達を倒したんですか!?」

「少し落ち着きなさい。わからないことだらけで前のめりになってしまうのも理解できるが......。一つずつちゃんと答えていくから安心しなさい」

 アレクは出会ったときと同じ優しい声で俺をたしなめた。そして沢山のことを教えてくれた。

 この世界はアークスといい、この国はハイドランドということ。そして世界にはまだいくつか国があるということ。
 いまいる場所はミズイガハラという街の外れにある牧場だということ。
 アレクにはもう1人家族がおり、ミズイガハラにあるアレクのお店で住み込みで働いているとのこと。
 魔物とは基本的には二足歩行の出来る怪物で、オークやゴブリン、ミノタウロスなど多種族が存在していること。
 伝承の2人は兵達に戦術を教え、組織で戦うことで魔物達を圧倒したということ。
 “異世界からの旅人”は伝承の2人以外にもいたらしいが、一般市民では詳しいことはわからないこと。

 そうして話を聞いているうちに夜も更けていった。行く場のない俺はアレクとサリアの好意により、しばらくの間倉庫を使わせてもらえることになった。

--------

 そして翌朝。

 そう言えばちゃんとお礼できてなかったな。
 俺はそう思いアレクとサリアを探しに外へでる。

 母屋の方へ歩いていると、遠くから俺を呼ぶ声がする。
「カズトくーん」

 声のする方へ目を向けると、そこにはアレクとサリアがいた。なにやら牧師の作業をしているようだ。

 俺は2人に近付きこう言った。
「助けていただいたこと、この世界について教えていただいたこと、本当にありがとうございました」

「いやいや、いいんだよ。牧場で死なれてしまっても困るからねぇ」
 そう言うとアレクはニコリと笑った。

「何かお礼を......俺に何かできることはないですか! できることなら何でもやります」

「うーん、そういうのはいらないんだけどなぁ......と、言っても聞かなそうな顔だね」

 少し考えたのち、アレクが続けて言う。
「──あ、それじゃあ......実はあの倉庫、雨漏りするんだ。それを何とかしてもらいたい」

「雨漏り──わかりました。何とかしてみます」
 この時代で俺の知識がどこまで役に立つか、試してみるか。
 そう思いながら俺は返事をしたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...