キャベツの妖精、ぴよこ三兄弟 〜自宅警備員の日々〜

ほしのしずく

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第4話 ぴよちゃんずと鬼軍曹🐥🐤🐣🕷

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 大阪府に住まいを構える山田家。

 今日もここで摩訶不思議生物であるキャベツの妖精たちは、ひよこ生を謳歌していた。
 
 リビングの窓際、日当たりのいい場所。

 彼らはそこにある黒ゴマ色ソファーの上で、とうもろこし色のモフモフふわふわボディーを寄せ合い座っている。

 いつもと同じ位置。

 右から頭に1本の毛を生やす長男のぴよ太、2本の毛を生やす次男ぴよ郎、3本の毛を生やす三男ぴよ助の順に。

 いつもなら鼻提灯を膨らませているはずのぴよ助が、小さな手足をぴょこんと出して立ち上がった。

「ぺよ! 今日はなにするぺよ?」

「ぺよぺよ、なにするぺよかぁ……うーんぺよ」

 その隣にはまだ眠たいのか、ぴよ郎が糸目のまま首を傾げている。

 一番端にいるぴよ太はゆっくりと小さな手足を出して立ち上がった。

「ぺよっと、お掃除はこないだしたぺよからねー」

 今日は珍しく何も無い日。

 だからこそ、ひよこたちはそれぞれに何をするのか、考えていた。

 まずは、一番初めに立ち上がった甘えた三男坊のぴよ助。
 
「やっぱり、プリンぺよかね……ぷっちんしたいぺよ」

 3本の毛を揺らしながら、ソファーの上をとてとて歩いている。

 その頭の中は、相変わらず冷蔵庫の中身でいっぱいだ。

 次にまだネムネムモードの要領のいい次男ぴよ郎。

「……やっぱり、準備が8割っていうぺよ。備えないとぺよ」

 2本の毛を窓から流れ込む風で揺らしている。

 その頭の中は、ロボット掃除機での失敗をどうやって活かすのかでいっぱいになっていた。

 最後に、ゆっくりと立ったしっかり者の長男ぴよ太。

「ぺよ……頼まれていたことは、他になかったぺよ? ぴよちゃんたち、もしかして忘れてないぺよ?」

 1本の毛をぴーんと立てたまま揺らさず、ソファーで仁王立ちしている。

 その頭の中は、山田夫妻が帰ってくるまでにやっておかないといけないものが、本当になかったのかなどで、いっぱいになっていた。

 3匹がそれぞれに「ぺよぺよ」とくちばしを鳴らしていると、上の辺りから音が聞こえた。


 ――カサカサ。


 だが「ぺよぺよ」とお喋りを続けるひよこたちには届かない。


 すると、その瞬間が訪れた。


 ――ぽとっ。


 着地音を鳴らしたと思えば、人間では生理的に受け付けられない動きをする黒光りするゴキ……いや【G】。


 ――カサ、カサカサ。


 頭に生えた触覚を揺らして、周辺の状況を確認している。


 ――カサカサ。


 その特徴的な音を耳にしたことで、一瞬して固まる3匹。


「「「ぺ、ぺよ!?」」」

 すると、打ち合わせでもしたかのように横並びとなり、抜き足差し足忍び足で距離をとっていく。

「抜き足ぺよ……」

 ぴよ助は一番内側で慎重に歩みを進め、その左を歩くのはぴよ太も足音を立てないようにゆっくりと歩みを進めていく。

「差し足……ぺよ。慎重にいくぺよよ……ぴよ助」

「ぺよ、ぴよちゃんに任せてぺよ!」

 ぴよ太の言葉にぴよ助は元気よく返事をする。

 それを一番外側を歩くぴよ郎が注意した。

「忍び足……ぺよ。大きな声を出したら気付かれるぺよよ」

 ぴよ郎は小さな手をくちばしの前に当てている。

「ぺよ……わかったぺよ……」

 そんなやり取りがありながらも、3匹は順当に歩みを進めた。



 ☆☆☆



 直線距離にして、ひよこ15匹ほど離れたソファーの上。

 ここでひよこたちのコソコソ話が始まった。

「ぺ、ぺよ。ぴよ太、どうするぺよ?」

「ぺよ、逃げたい気持ちあるぺよ。でも、ここでアイツを倒さないと、ママさんが気を失っちゃうぺよ」

「ぺよ……ぴよちゃんは逃げたいぺよ。ママさんには悪いけど、無理なものは無理ぺよ。だって見てペよ」

 ぴよ助が指差す場所には、音を立てながら元気よく動き回る【G】がいた。


 ――カサカサ、カサカサ。


「やばいぺよね……」

 ぴよ太は言葉を失い、立っていた頭の毛にも元気がなくなり倒れている。

 その左に立っていたぴよ郎も悪寒が走ったせいで、全身の毛が逆立ってしまい大きくなっていた。

「ぺ、ぺよ。気持ち悪いぺよー、ぴよ助の考えが合ってるような気がするぺよ」

「ぺよ、だから無理ぺよ。パパさんの帰りを待ったほうがいいぺよ」

 三男坊ぴよ助の的確な答えに上2匹は戸惑っていた。

 ぴよ太はその場でくちばしを紡ぎ。

「ぺよか……」

 ぴよ郎は深く頷き2本の毛を揺らしていた。

「ぺよね……」

 いつもなら、しっかり者の長男ぴよ太がみんなを励まし、要領のいい次男がどうやったら上手くいくのかを考える。

 その後を甘えた三男坊のぴよ助がついていく。

 しかし、今回ばかりは【G】を目の前にしたことですっかり戦意を喪失してしまい、上2匹はどうしていいのかわからなくなってしまった。

 そんな中、素直なぴよ助の意見を耳にしたのだ。

 ぴよ太とぴよ郎の答えはもう決まっていた。

「ぺよ、みんな。一時的に避難するぺよ」

 ぴよ太の言葉にぴよ郎はひょこひょこと頷く。

「ぺよぺよ、ぴよ太の意見に賛成するぺよ」

「ぺよー。ぴよちゃんもぴよ太に大賛成ぺよー」

 ぴよ助は自分の意見が通ったことを喜んでいる。

 こうして、3匹の気持ちは1つになった。


 そんな中。


 今度は階段の方から小気味良い音が聞こえてきた。


 ――カタカタ、カタカタ、カタカタ。


 その謎の音は、物凄いスピードで近づいてくる。


 ――カタカタ、カタカタ。


 ぴよ太は頭を振り1本の毛を左右に揺らしていた。

「ぺよ、なんの音ぺよ?」

「ぺよ、わかんないぺよ。でも、カサカサじゃないから【G】じゃないぺよね」

 ぴよ郎は冷静に耳を澄まして音を聞き分けている。

 そんな2匹を見たせいでぴよ助は、その場で小さな手足をバタつかせ慌てていた。

「でも、近づいてくるぺよー! ちょっと怖いぺよ」


 ――カタカタ。


 そして、その音は急に消えた。

「消えたぺよ……」

 ぴよ太は顔色をとうもろこし色から、ピーマン色へと変えている。

 ぴよ郎はつぶらな瞳をキョロキョロと動かす。

「ぺよ、どこに行ったぺよ? もう音はしないぺよ」

「ぺよ、でも近くまでは来ていたはずぺよ。怖いぺよー!」

 ぴよ助は怖すぎて震えている。

 近付いてきた音が急に消えたことで、全員が警戒モードになり毛が逆立っていた。

 モフモフふわふわボディーから、ボフボフもわもわボディーになっている3匹。

 すると、ぴよ郎がふと【G】の居た方向へとつぶらな瞳を向けた。

「あれぺよ?」

「ぴよ郎、どしたぺよ?」

「ぺよ……Gの姿も消えてるぺよ」

「ぺ、ぺよ!? ほんとぺよ?」

「ぺよ……ほんとぺよ」

「ぺ、ぺよ! ほんとぺよ。いないぺよ!」

 ぴよ太とぴよ郎の会話を聞いたことで、ぴよ助はボフボフもわもわボディーのままソファーで大騒ぎし始めた。

「わー! 怖いぺよー! また急に出てくるぺよー!」

「ぺよ! まだ何か聞こえるぺよ……」

 ぴよ郎の言葉に固まり、耳を澄ませてしまうひよこたち。

「「「ぺよ?」」」


 ――カタ、カタカタカタ。


 ――カタカタ。


 ――カタ。


 そして、3匹の後ろでその音が止まった。

 ひよこたちは息を揃えて振り向く。

「「「ぺ、ぺよ!?」」」

 すると、そこにはアシダカグモがいた。

 右前足を1本、3匹に向けてヒョイっと上げている。

 これがクモの挨拶のようだ。

 そんなフレンドリークモを前にして、ひよこたちは恐る恐る近付いていく。

「どうもですぺよ……」

 しっかり者のぴよ太は、少しマシになったボフボフもわもわボディー、いやポフポフふわふわボディーで丁寧にお辞儀をする。

 次に怖さよりもクモの種類が気になり、モフモフふわふわボディーに戻りかけている次男ぴよ郎が続いた。

「なに蜘蛛さんでしょうかぺよ……?」

 しかし、まだ100%警戒心を解いたわけではない。
 ぴよ助の好奇心が今のところ怖さに勝っているだけだ。

 ただ、今も警戒心MAXのガクブルボフボフもわもわボディーの三男ぴよ助は、やはり怖さが勝ってしまい挨拶すらままならないでいた。

「お、おっきくて怖いぺよー!」

 理由は違えど怯えてしまっている彼らを前にして、クモは必死にジェスチャーで自分が無害だということを伝えた。



 ☆☆☆

 ――しばらくして。


 ジェスチャーのかいあってか、ひよこたちは元のモフモフふわふわボディーへと戻っていき。

 それを確認すると、アシダカグモは素早い動きで姿を消した。


 ☆☆☆
 

 このあと、山田夫妻が晩御飯を食べるテーブルの下で、アシダカ鬼軍曹ごっこという不思議な遊びをするひよこたちの姿が見られましたとさ。

 ぺよぺよ
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