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二章
アトス ⑥
最後にちょっとだけ虫ご注意です。
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アトスのギルマスはなんと隅っこにいた地味なおじさんだった。驚愕。
「いゃー、ニコルから聞いていたけど君、面白いねー」
話してみるとギルマスはかなり陽気で全然元の俺属性ではなかった。人を見た目で判断してはいけないとは分かってはいたけど、なんか勝手に仲間意識フィルターで見てしまってたいよ。
ドットたちに連れてこられたのは応接室で、ギルマスは下で様子を見ていてついてきたらしい。
「改めて、僕はアトスのギルドマスター、ウィルソンだ。ウィルでいいよ」
静かだと思っていたのに、実はとても朗らなウィルソンは俺たちに椅子に座るように促した。
「ドット、シャート、ドレイク、クレイバー、昨日は遅くまで賑やかだったみたいだけど早いね」
ウィルソンがからかい交じりに言うとドットが、「こっちにはたまにしか来ないからな、顔出しておかないと」と笑う。
移動中、夜間も見張りの交代とかでしっかり寝ていないのに朝帰りするとは元気な奴らだよ。俺の身体は若くなったものの、気持ち的にはしっかり休めないと辛いぞ。
「さて、ニコルが君のことを危なっかしいから気を配ってほしいと言っていた理由がよくわかった気がするけど、まさかそのクサは怪しい薬草を使っているわけじゃないよね?」
まさかの本当の意味でのやばい方のクサ(・・)疑惑。タバコを咥えていたことを忘れてたので慌てて火を消して携帯灰皿に捨てた。
「俺はそっち(・・)にはまったく興味がないんだ」
そこはしっかり否定する。おい。ドットたちが爆笑しているんだけど。
「俺たちも吸ってるがただのとんでもなくうまいクサだ」
ドレイクが否定してくれた。
「そうなのかい?僕はクサはやらないからわからないけど、その匂いは今まで嗅いだことがない類のものだからねぇ」
こっちのタバコは土の香りっていうか、タバコ草を乾燥しただけのものにハーブなんかをアクセントに程度の味の渋いものが基本で、俺が吸うのは香りがついていたりバニラやワインの芳香が甘い感じのものだから。
ま、昔はタールが強い系を好んでいてフレイバーにこだわりはなかったんだが。今はいろいろ楽しめるから、一番好みのタバコを探しているんだ。
「怪しくないんならうるさく言いたくないんだけど、珍しい物なんかは噂になれば貴族は手段を選ばないからね。うっかり大勢のいる場所で出さないでね。特に香り系には反応が強いから」
貴族は風呂に入るし、魔法の〈洗浄〉も使えるから臭くはないけど、婚活中なんかは男女ともに良い香りで印象付けたりするために香水にやたら金をかけているらしい。良い香りイコール裕福とか洗練されているみたいな。
王都、めっちゃ香水臭い予感……
「高い香水はめっちゃ獣臭いか土臭いんだがふつうの貴族はそんな嗅いだことないだろうしなぁ」
ドットが鼻を鳴らす程度に香水に良い印象がなさそうだ。
獣くさいって麝香(ムスク)のことかな。土はなんだ?木の皮とか??サンダルウッド系なら悪くない香りだと思うんだが。
まぁ、なんにしてもつけすぎないのが一番だ。
「お前、なんかいい香水も持ってそうだから気をつけろよ」
ドレイクにコソッと耳打ちされた。多分、出会った頃のいい香りさせてると言われていたのは香り付きハエールSのことだ。今は無香料を使っているし、洗濯も無香料のものにしているぞ。洗い立ての香りがまったくしないのは物足りないが。
「気をつけるよ」
何も使ってなかったとか言っても信じてもらえなさそうだから頷いておく。
「んで、お前なんでギルドにいたんだ?」
ドットたちこそ。宿に帰って寝てろよ。
「ダンジョンに少しだけ行ってみようと思って」
休暇が何日になるかわからないから半日でいけるだけ。
「なんだぁ?休まないのか」
「どんなのか見たいだけだ。ついでにダンジョンの依頼があればやろうとと思って」
Dランクのダンジョンだから稼ぎは多くないかもだけど。一石二鳥がいい。
「今ならワームとデビュアの捕獲をお願いしたいですね」
ギルマスがにっこり顔で教えてくれたけど、俺はスンッとなる。
「……ん、ダンジョンをちょっとだけ見てくるだけにします(ムリムリムリ)」
一石二鳥なんか狙ってしまって申し訳ありませんでした。っていうか何に使うための依頼なんだ。
「おや、比較的楽で割のいい依頼なんですが」
「やりたい人にお譲りします」
脚が少なくてもなるべくやりたくない系だ。この世界では嫌われていないのか。
「そろそろ熱病が流行るのでワームやデビュア以外のでも薬の材料になるものは全て歓迎ですよ」
エーー……風邪薬かな、内容物を知ってしまうと絶対飲めないぞ。何かあったら〈ネットショッピング〉に頼ろう。いや、魔法でどうにかなるかな。
「ナニカミツケタラモッテキマス」
ノーって言えない元中間管理職の社畜です。
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