長屋で暮らす俺の周りは面倒な奴らばかり(仮)

紫楼

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 仕上げた仕事を依頼主に届けて、トリを連れて戻って来てみれば、俺の家の窓から化粧クセェ香りと女の艶声。
 トリを少し離れた軒下に行かせてから家に入る。

「おい!助左!!テメェ人んちに女連れ込むなって言ってんだろうが!!!!」
 案の定隣に住む助左が女抱えて着物の胸元に手を突っ込んでいる。
 幸いおっぱじめてはいないようだが女の顔は蕩け首元まで赤く火照っている。
「悪りぃ、お前に紹介しようと思って連れて来たんだが待ちくたびれてな」
 全く悪いとは思って無さそうだが姿勢を整えて女も着物の乱れを直した。

「失礼したねぇ。あんた腕の良い細工師だって聞いたんでこれを直してもらいたいと思って来たんだよ」
 口元の色っぽい女だが人んちで盛るような女は好かん。
 が、仕事と言われれば仕方ない。

 見せられたのはかなり高価な紅珊瑚の簪。紅珊瑚に絡みつくような金の細工はかなりの腕のものだ。
 だが珊瑚にヒビと彫り部分に微妙な欠けが出ている。
 こんな名工の作品を粗雑に扱うなぞ阿呆の所業だ。
「これは治せんぞ。これほどの紅珊瑚なんぞ俺には手に入れられんし金も高額だ。そもそもこんな品を長屋の細工師に任せるもんじゃねぇ」

「おい、竜よ」
 俺を嗜めようとする助左に女は、
「この紅珊瑚に変わりはいらないさ。傷が目立たないようにこれ以上酷くならないようにしてほしいのさ」
 少し切なげな顔押して言う。
「金なら多少は持ってるからお願いよ」
 そう言って手付けに小判3枚置いて出て行った。
 
「助左、テメェ今度うちで盛りやがったら堀にブン投げっぞ」
 助左はつい最近隣の部屋に住み始めた浪人だ。ひっきりなしに女がやって来てはおっ始めるもんだから薄い壁の向こうがうるさい。
「誘われたら断れぬだろう?」
 見た目は体格良く硬派な印象の顔立ち、侍の家の出であるのに月代を伸ばしうらぶれて世捨て人のような中身と言う奇妙な男だ。
 
「誘ってくる女みんな手出してたらそのうち刺されるぞ」
「良いんだよ、望まれるのが一番だ。食わせてもらえるしな」
 胸元から小判を2枚出す。さっきの女が懐に入れたらしい。相場は知らんが良いのか?
「竜もモテるんだから適当に遊べばいいさ」
「女は要らん。めんどくさい」

「おーい、お前らうちの小鳥を放置すんな?」
 しまった。忘れてた。トリを連れて蘇芳が入ってきた。
「すまん、トリ」
「良いよ。助左が悪い」
 子供の教育に悪いと思って待たせていたのに全部お見通しのようだ。
「助左、長屋ではあんま連れ込むなよ?」
「押しかけてきちまうからなぁ」

「蘇芳、何か用か?」
「んにゃ、別にー」
 トリを抱き上げながら座る。
 トリは蘇芳が拾った孤児で女郎屋を運営している家に置くのは良くないと幼馴染の銀時(ギンジ)に預けているが銀時は任客なのでどっちもアレだ。
 かと言って貧乏長屋の家でも不便だろうからな。たまに昼間預かる程度の手伝いだ。
 この長屋一帯は銀時の世話で成り立っている。
 俺も銀時に拾われたようなものだな。
 
 だからといって毎日盛るようなヤツを隣に入れたのはちょっと納得いかんのだが。


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