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連載
番外編 お正月ネタ
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本編とは一切関係ありません。また短めです。なのにかかった時間は普段と変わらず。
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「のう、馬鹿姉」「何よバカ妹」
いきなり剣呑な言い合いをしているのは妖精国女王と龍の国王女である龍姫。本日彼女たちは人族の国にある街、ファストにてちょっとした物をやってくるプレイヤーに対して手渡し配布しているのである。
「何でわらわがこんな白いもこもこっとした服を着て、人族に雑煮を手渡しで配らねばならんのじゃ……」
やってくる人たちには笑顔しか見せていないが、人の視線が向いていない僅かな時間には不満を隠さない龍姫。そんな龍姫を見て妖精女王はため息をつく。
「そんな事も解らないから貴女は馬鹿なのよ。今の私達が住むこの世界ではなく、元々の世界にも正月というイベントみたいな物があるのは知っているでしょう? そしてその日には干支と呼ばれる十二の存在の出番が変わるの。今年は羊らしいわ。だからこんなもこもこの服を私達は着てるの。そう、羊の外見を模しているという訳ね」
妖精女王も、やってくる人には笑顔で応対している。だがその裏では黒い一面を見せて龍姫と言い合いを行っていた。
「ああ、こんな服はあっちの風習なのかえ。ろくでもない記憶しかないから忘れたいんじゃがのう。それはまあ別にして理由は分かったが、なんでわらわがやらねばならんのじゃ。父上を引っ張ってくればよいではないか……」
いくつかの誤解をしていく龍姫。また、新年早々の仕事内容に不満顔の龍姫。だが、そんな龍姫を妖精女王は一蹴する。
「全くこのバカ妹は。良く見なさい、エルフ達も獣人達も出張ってきているのはみんな女性でしょ。エルフとダークエルフは長老の娘でしょうし、獣人は議員の中でもとびきりの美人を出してきているの。こういう場では華やかにするためにも、男性より女性の方が出番が回ってくるものなのよ」
この女王の見立ては正しい。因みに魔族が居ないのは、まだプレイヤーの立ち入れない区域であるという理由でしかない。ちなみに魔王城では餅つきが現在進行形で行われており、魔王様の下につきたてのお餅が献上されていたりする。さらに蛇足になるが、その餅つきに使われている臼と杵は魔王様の趣味で作られた手作りの一品であったりする……。
「で、わらわが龍人の代表か……それ自体には悪い気がせんのだが、人の体を舐めるように物色していく輩がかなりいるのが困るのう。不愉快じゃ」
まあ、どこの世界にもいる『紳士』がここにもいるという解釈で正しいとだけ読者の皆様には申し上げておこう。
「それもしょうがないわ。上に立つものは多くの人から見られるのも仕事、そう割り切りなさい。龍王様から少しだけ聞いたけれど、貴女が次の龍王になるんでしょ? だったらなおさら今から慣れておきなさい。あ、こちらがイベントの品になりますー、あけましておめでとうございます~」
龍姫に話をしている最中にプレイヤーがアイテムの受け取りに来たので、内心大慌てでプレイヤーへの対応を女王は行う。幸い不審に思われることは無かったようだが。
「見られるのも仕事……嫌々でも慣れてゆくしかないのかのう。まあ、それでもあちらが受けている視線に比べれはまだわらわの方はましなのかの……」
そう言って、龍姫はダークエルフの方を見る。自分よりも凹凸がはっきりしているその体つきのため、龍姫よりも周囲に居る男性からねっとりと眺められているのが嫌でもわかる。露出はもこもこのアクセサリーが多分に付属したメイド服を着ているのでほぼ無いのにもかかわらず、だ。
「──あんまり言える事じゃないけど、服装をもうちょっと考えてほしかったわね。私は窮屈な思いをしてこのもこもこの服を着てるのに……これなら着慣れているドレスにもこもこっとしたアクセサリーをくっつけた方がまだ楽だったわ」
メイド服のダークエルフを見て、本日はもこもこ姿の女王も愚痴をこぼす。因みにエルフや獣人の服装も正月を意識したもこもこ服であり、なぜ統一しなかったのだという疑問が出るのは当然だろう……ここの開発者なら、『全員同じような外見では面白くないので、一人だけもこもこメイドにしてみました』とかの言葉を素で言いそうだが。
「で、この仕事はいつまでやるのじゃ? あ、明けましておめでとうなのじゃ。今年もよろしく頼むぞえ」
色々と納得いかないところはあれど、とりあえず仕事は済ませてしまおうと考えなおした龍姫が女王にそう質問する。
「これが大方片付くか、一定の時間になるまでよ」
そう女王は龍姫に返す。その返答を聞いた龍姫が手渡しのプレゼントとして用意された雑煮の在庫を改めて確認する。──どっさりである。大事な事なのでもう一度言う。どっっさりである。
「──本当にそうなのかの?」
その龍姫の声には冗談であってほしいとか、交代要員はこの後それなりの時間が経過したら来るのじゃろう? といった願望が多分に含まれていたのだが。
「本当にそうよ。こんな所でつまらない嘘なんか言わないわ。それにもう少ししたら一気に大勢の人が来るはずだから今のうちに覚悟を決めておきなさい。忙しくなるわよ」
今でもそれなりに忙しいのに、これ以上になるのかの!? 声に出さない悲鳴を上げる龍姫であったが、それから一時間後には女王の言う通り「新年のアイテムをくださーい! ついでに握手してくださーい!」と押し寄せるプレイヤーによってヘロヘロになる龍姫であった。そして龍姫は仕事が終わった後にこうつぶやいたらしい。
「正月なんて嫌いじゃ……」
そしてそんな言葉をつぶやいた龍姫に女王はこう言ったそうだ。
「そのうちこんな仕事の方が楽でいいと言うようになるわよ、王になればね」
その反論に、龍姫がぐぬぬと言ったとか言わないとか。どう転んでも、彼女たちにとって正月とは休む時ではなく働く時であるという事だけは変わらないのである。
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今年もよろしくお願いします。正月という事で朝からお酒が入っている為に頭の思考が普段より働かないので、文章が破たんしていたらごめんなさい。
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「のう、馬鹿姉」「何よバカ妹」
いきなり剣呑な言い合いをしているのは妖精国女王と龍の国王女である龍姫。本日彼女たちは人族の国にある街、ファストにてちょっとした物をやってくるプレイヤーに対して手渡し配布しているのである。
「何でわらわがこんな白いもこもこっとした服を着て、人族に雑煮を手渡しで配らねばならんのじゃ……」
やってくる人たちには笑顔しか見せていないが、人の視線が向いていない僅かな時間には不満を隠さない龍姫。そんな龍姫を見て妖精女王はため息をつく。
「そんな事も解らないから貴女は馬鹿なのよ。今の私達が住むこの世界ではなく、元々の世界にも正月というイベントみたいな物があるのは知っているでしょう? そしてその日には干支と呼ばれる十二の存在の出番が変わるの。今年は羊らしいわ。だからこんなもこもこの服を私達は着てるの。そう、羊の外見を模しているという訳ね」
妖精女王も、やってくる人には笑顔で応対している。だがその裏では黒い一面を見せて龍姫と言い合いを行っていた。
「ああ、こんな服はあっちの風習なのかえ。ろくでもない記憶しかないから忘れたいんじゃがのう。それはまあ別にして理由は分かったが、なんでわらわがやらねばならんのじゃ。父上を引っ張ってくればよいではないか……」
いくつかの誤解をしていく龍姫。また、新年早々の仕事内容に不満顔の龍姫。だが、そんな龍姫を妖精女王は一蹴する。
「全くこのバカ妹は。良く見なさい、エルフ達も獣人達も出張ってきているのはみんな女性でしょ。エルフとダークエルフは長老の娘でしょうし、獣人は議員の中でもとびきりの美人を出してきているの。こういう場では華やかにするためにも、男性より女性の方が出番が回ってくるものなのよ」
この女王の見立ては正しい。因みに魔族が居ないのは、まだプレイヤーの立ち入れない区域であるという理由でしかない。ちなみに魔王城では餅つきが現在進行形で行われており、魔王様の下につきたてのお餅が献上されていたりする。さらに蛇足になるが、その餅つきに使われている臼と杵は魔王様の趣味で作られた手作りの一品であったりする……。
「で、わらわが龍人の代表か……それ自体には悪い気がせんのだが、人の体を舐めるように物色していく輩がかなりいるのが困るのう。不愉快じゃ」
まあ、どこの世界にもいる『紳士』がここにもいるという解釈で正しいとだけ読者の皆様には申し上げておこう。
「それもしょうがないわ。上に立つものは多くの人から見られるのも仕事、そう割り切りなさい。龍王様から少しだけ聞いたけれど、貴女が次の龍王になるんでしょ? だったらなおさら今から慣れておきなさい。あ、こちらがイベントの品になりますー、あけましておめでとうございます~」
龍姫に話をしている最中にプレイヤーがアイテムの受け取りに来たので、内心大慌てでプレイヤーへの対応を女王は行う。幸い不審に思われることは無かったようだが。
「見られるのも仕事……嫌々でも慣れてゆくしかないのかのう。まあ、それでもあちらが受けている視線に比べれはまだわらわの方はましなのかの……」
そう言って、龍姫はダークエルフの方を見る。自分よりも凹凸がはっきりしているその体つきのため、龍姫よりも周囲に居る男性からねっとりと眺められているのが嫌でもわかる。露出はもこもこのアクセサリーが多分に付属したメイド服を着ているのでほぼ無いのにもかかわらず、だ。
「──あんまり言える事じゃないけど、服装をもうちょっと考えてほしかったわね。私は窮屈な思いをしてこのもこもこの服を着てるのに……これなら着慣れているドレスにもこもこっとしたアクセサリーをくっつけた方がまだ楽だったわ」
メイド服のダークエルフを見て、本日はもこもこ姿の女王も愚痴をこぼす。因みにエルフや獣人の服装も正月を意識したもこもこ服であり、なぜ統一しなかったのだという疑問が出るのは当然だろう……ここの開発者なら、『全員同じような外見では面白くないので、一人だけもこもこメイドにしてみました』とかの言葉を素で言いそうだが。
「で、この仕事はいつまでやるのじゃ? あ、明けましておめでとうなのじゃ。今年もよろしく頼むぞえ」
色々と納得いかないところはあれど、とりあえず仕事は済ませてしまおうと考えなおした龍姫が女王にそう質問する。
「これが大方片付くか、一定の時間になるまでよ」
そう女王は龍姫に返す。その返答を聞いた龍姫が手渡しのプレゼントとして用意された雑煮の在庫を改めて確認する。──どっさりである。大事な事なのでもう一度言う。どっっさりである。
「──本当にそうなのかの?」
その龍姫の声には冗談であってほしいとか、交代要員はこの後それなりの時間が経過したら来るのじゃろう? といった願望が多分に含まれていたのだが。
「本当にそうよ。こんな所でつまらない嘘なんか言わないわ。それにもう少ししたら一気に大勢の人が来るはずだから今のうちに覚悟を決めておきなさい。忙しくなるわよ」
今でもそれなりに忙しいのに、これ以上になるのかの!? 声に出さない悲鳴を上げる龍姫であったが、それから一時間後には女王の言う通り「新年のアイテムをくださーい! ついでに握手してくださーい!」と押し寄せるプレイヤーによってヘロヘロになる龍姫であった。そして龍姫は仕事が終わった後にこうつぶやいたらしい。
「正月なんて嫌いじゃ……」
そしてそんな言葉をつぶやいた龍姫に女王はこう言ったそうだ。
「そのうちこんな仕事の方が楽でいいと言うようになるわよ、王になればね」
その反論に、龍姫がぐぬぬと言ったとか言わないとか。どう転んでも、彼女たちにとって正月とは休む時ではなく働く時であるという事だけは変わらないのである。
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今年もよろしくお願いします。正月という事で朝からお酒が入っている為に頭の思考が普段より働かないので、文章が破たんしていたらごめんなさい。
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