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前半の敵を、食い破る
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戦い続けること、さらに二週間。目の前にはもはや何度戦って、何度倒したか分からない四千体の分身を倒した後に現れる最初の中ボス、隊長格的存在である分身が立っている。
「こうやって戦うのも何度目でしょうね」「正直、こちらの自尊心はかなり傷付けられているぞ……確かに分身をまとめ上げている部隊長格としては一番弱いのは事実ではあるが……こうも何度もやられると流石にな」
なんだか向こうから、チクチクとした視線が飛んでくる。それでも前に立ちはだかるのだから、自分としては倒すほかないのだ。
「それをこちらに言われても困りますよ。こちらとしては、先に進むためには倒さなければならない存在なのですから」「分かっている、こっち側の一方的な愚痴に過ぎない事は分かっているのだ……」
とはいえ、不満げな雰囲気を一切隠すつもりはないようで──武器を構える姿も荒っぽい。が、殺る気マンマンだと言う事は間違いないのでこちらも戦闘態勢に入る。
「今日は勝たせてもらう! いざ勝負!」
挑戦者と防衛者が逆転したような言葉と共に突っ込んでくる分身。剣には紫電を纏わせており、もろに攻撃を受ければ斬撃に加えて電撃のダメージを受ける事となるだろう。振り下ろされる剣をぎりぎりまで引き付けてから回避行動をとる。少し肌を焼くような電撃の感触を味わったが、ダメージとしては限りなくゼロだ。
すかさず反撃として、八岐の月の爪で相手の体を切り付ける。向こうはこれを体勢を崩しながらも回避──しきれていない。爪の先に、相手の肉体を引っ掻いた感触が残る。当然相手の体からパッと鮮血が舞い上がった。でも、軽傷だな。この程度の傷、相手からしてみればかすり傷にもなっていないだろう。
「避けきれなかった、だと……戦うたびにお前は確実に強くなっているな……だが、こちらにも意地はある。容易く負けてやるものか! いや、今回は勝つ!」
ますます殺る気満々の闘気と殺気交じりの圧を自分に向けて放ってくる。だが、こちらもそれで怯えたり怯んだりするレベルはとっくに超えている。真っ向からその圧を受け止め、そして放ち返す。その直後に再びお互いの武器が激突する──この最初の中ボス的な分身と戦う時はこの繰り返しが定番となっていた。
「おおおおっ!」「はああああっ!」
お互いの気迫と武器が真っ向からぶつかり合う。火花が散り、紫電が舞い、土が隆起し、風が裂く。武器と魔法が入り乱れた中で、自分の本来のスタイルとは異なる足を止めての真っ向勝負──だが、自分は引かずに戦えるようになっていた。無論相手の攻撃自体は馬鹿正直に受け止めるのではなく受け流して威力を減退させているが、跳躍したり隠れたり道具を使ったりせず、あまり一か所から動き回らない戦い方。
スキルがさらに大幅に上がったなどの理由ではない。ここでの戦いがプレイヤーである自分自身をさらに鍛え上げる修行そのものになっていた。それに目や体が慣れ、対応できるようになっていった結果がこれだ。一方で相手は成長できないらしく、回を重ねるごとに自分に勝てなくなっていった。
「今度こそ、今度こそは勝って見せる──!」
露骨に自分との戦いに勝てなくなったことで、焦りがあるのだろうか? 今日の隊長格である分身は、今まで以上に鬼気迫る感じで自分に対して攻撃を仕掛けてくる。だが、こちらにとってここはまだ通過点。前に進まなきゃいけないのだから──押し通らせてもらう以外の結論はない。自分の体を貫こうとしてきた相手の突き攻撃を、自分は右斜め下に引き倒すような形でいなした。
「なっ!?」
当然そうすると、相手は前に倒れるような形で体勢を崩される形となる。そこに当然、自分は刃を相手の首めがけて躊躇することなくレガリオンを振り下ろす。もはや首を狙う剣の振り方など数えきれないほどにやってきた、それゆえ今回も外す事などありえない。ましてや相手は大きく体勢を崩し、とっさに回避行動をとれない状態だったのだから。
これで決着がつく。戦っていた相手の姿が完全に消失したことを確認した後に休息に入る。今日はかなり消耗を抑えた状態で最初の四千体の分身を退けることが出来た。そろそろいい加減八千体を越えたい……八千体を越えてやっと半分なのだから、まだまだこの試練の終わりは先にある。
(だから済まないね……どんな覚悟できたとしても、こちらも負けてあげられないんだ)
心の中で、先ほど戦った相手に詫びる。もう、塔の登頂に使える時間は三か月弱。残り二五〇階もある以上、もうそろそろここを突破したいのだ。掲示板でも、えぐい試練は幾つもあって、足止め喰らっている嘆きの声は常に上がっている。ただ、流石に自分の様な数か月も一か所で足止めされるような試練はないらしいが……
(言い換えれば、自分にはこれだけの試練を課す理由があるともいえるわけだよな。この塔の天辺にいる存在は、自分を呼んだというミリーの言葉を確かめるためにも、登り切りたい所なんだがな)
だが、ここに来て分厚い壁にぶち当たって進めないで居るのが現状。それでもそろそろ打開しなければいけない頃あいだ。だから、先に進ませてもらう。さて、そろそろ休息の時間は終わりだ。いつでも戦闘状態に入れるように精神を集中し始める。
(今まで、休息時間が終わると同時に一気にこちらに向かって津波のように押し押せて潰そうとしてくるのがこの連中のやり方。その津波を押し返さなければならない。やはり最初の一手は、強化オイルと蛇炎オイルによる範囲攻撃だな、これで少しでも足を落とさせる)
休息終了の合図とともに投げられるように、しかし相手にはオイルを投げるつもりでいる事を気が付かれないように注意を払いつつ戦闘開始の合図を待つ。時間が来て、相手が今回も自分を圧し潰そうと突撃してくる。自分も当然素早くオイルを投げたわけなのだが──ここでひとつ、気が付いたことがある。
(なんだ? 少し冷静になって相手の分身達の雰囲気を感じ取ると、焦りと恐怖心を持っているように感じられるぞ? オイルを投げられたから? いや、そうじゃない。何かこう、自分に対して明確な恐怖心を持ち、その恐怖心から焦りが生まれている様に感じ取れる。そして、こうも明確に感じ取れると言う事は、相当だな。なぜそうなったのか、その理由が分からないが──好機かも知れない)
一定の緊張感、恐怖心は持っていても問題はないし上手く操れるのであればプラスにすらなりうる。だが、言うまでもない事だが過度な緊張、焦りはマイナスでしかない。そして、目の前に迫ろうとして炎に焼かれた分身達からは明確に過剰であると感じられる。何とか炎を踏み越えて自分に迫ってきたが──やはりな。
大ぶりの攻撃が多い、それでいて振りが鈍い。まるで一刻も早く倒したいから、後先考えずに一番威力のある攻撃をがむしゃらに放っているだけにしか感じられない。一体この分身達に何があった? 最初の四〇〇〇体ではこんなことはなかったのに……ま、こっちにとっては都合がいい。攻撃を回避して相手の首を刎ねる行動が非常にやりやすい。
(当たればそりゃ大ダメージだろうが……フェイントも連携もろくにできていない中での大振りの一撃が当たるかって話だよな。なんでこうも急に雑な攻撃ばっかりしてくるようになったんだ? 理由はあるはずだが、まあ今は相手の首を刎ね飛ばして数を手早く減らそう。こいつらの動きが本来の動きに戻る前に)
そのうちに本来の動きに戻るだろうからと考えて、そうなる前に減らそうとサクサク倒していったわけなのだが──何と、元に戻ることなく四〇〇〇体との戦いが終わってしまった。そして自分はその理由を知る事になる。
「私の負けです、進んでくださいー!!」「いや、そう言われても訳が分からないんだけど」
説明を要求すると、どうもこの二番目の部隊長役の分身は自分の力を限りなくゼロに近いところまで削って、四〇〇〇体の分身に分配したらしい。これが、急に分身が強くなった理由だったらしい。ただ、この方法は一つ欠点があったらしく──
「私の心理状況がもろに反映されてしまうんです」
と言う事らしい。毎日折れず諦めず何度も向かってくる自分をどうもこの二番目の文体跳躍の分身は化け物と認識してしまったらしく……更に今日の最初の四〇〇〇体&部隊長格との戦いを見て覚えたんだそうだ。隊長格の分身ですら、首を容易く飛ばされるのかと。
「だから、分身達の動きがああも雑になったと」「はい……」
そして当然、力を分け与え他分身達が倒されちゃったので本人はもはや序盤の序盤で出てくるラビットホーンよりも戦闘力が無い状態らしい。極端な話、道に落ちている医師につまずいて転んだだけで半死半生になるレベルなんだとか。そりゃ、戦えるわけもないよね。
「これ、良いんですか?」「良いわよ? 強化された分身を貴方は見事打ち倒して敗北宣言を出させたのだから立派な勝利よ。休息時間と完全回復を与えるわ」
一応念の為に、ここの守護者に確認を取ったがOKとの事。まあ、それでいいのであれば良しとする。こうして自分はこの日初めて、前半の分身八〇〇〇体+隊長格の撃退を達成した。だが、これでやっと前半クリアなのである──後半に何が待っているのか、自分はまだ知らない。
「こうやって戦うのも何度目でしょうね」「正直、こちらの自尊心はかなり傷付けられているぞ……確かに分身をまとめ上げている部隊長格としては一番弱いのは事実ではあるが……こうも何度もやられると流石にな」
なんだか向こうから、チクチクとした視線が飛んでくる。それでも前に立ちはだかるのだから、自分としては倒すほかないのだ。
「それをこちらに言われても困りますよ。こちらとしては、先に進むためには倒さなければならない存在なのですから」「分かっている、こっち側の一方的な愚痴に過ぎない事は分かっているのだ……」
とはいえ、不満げな雰囲気を一切隠すつもりはないようで──武器を構える姿も荒っぽい。が、殺る気マンマンだと言う事は間違いないのでこちらも戦闘態勢に入る。
「今日は勝たせてもらう! いざ勝負!」
挑戦者と防衛者が逆転したような言葉と共に突っ込んでくる分身。剣には紫電を纏わせており、もろに攻撃を受ければ斬撃に加えて電撃のダメージを受ける事となるだろう。振り下ろされる剣をぎりぎりまで引き付けてから回避行動をとる。少し肌を焼くような電撃の感触を味わったが、ダメージとしては限りなくゼロだ。
すかさず反撃として、八岐の月の爪で相手の体を切り付ける。向こうはこれを体勢を崩しながらも回避──しきれていない。爪の先に、相手の肉体を引っ掻いた感触が残る。当然相手の体からパッと鮮血が舞い上がった。でも、軽傷だな。この程度の傷、相手からしてみればかすり傷にもなっていないだろう。
「避けきれなかった、だと……戦うたびにお前は確実に強くなっているな……だが、こちらにも意地はある。容易く負けてやるものか! いや、今回は勝つ!」
ますます殺る気満々の闘気と殺気交じりの圧を自分に向けて放ってくる。だが、こちらもそれで怯えたり怯んだりするレベルはとっくに超えている。真っ向からその圧を受け止め、そして放ち返す。その直後に再びお互いの武器が激突する──この最初の中ボス的な分身と戦う時はこの繰り返しが定番となっていた。
「おおおおっ!」「はああああっ!」
お互いの気迫と武器が真っ向からぶつかり合う。火花が散り、紫電が舞い、土が隆起し、風が裂く。武器と魔法が入り乱れた中で、自分の本来のスタイルとは異なる足を止めての真っ向勝負──だが、自分は引かずに戦えるようになっていた。無論相手の攻撃自体は馬鹿正直に受け止めるのではなく受け流して威力を減退させているが、跳躍したり隠れたり道具を使ったりせず、あまり一か所から動き回らない戦い方。
スキルがさらに大幅に上がったなどの理由ではない。ここでの戦いがプレイヤーである自分自身をさらに鍛え上げる修行そのものになっていた。それに目や体が慣れ、対応できるようになっていった結果がこれだ。一方で相手は成長できないらしく、回を重ねるごとに自分に勝てなくなっていった。
「今度こそ、今度こそは勝って見せる──!」
露骨に自分との戦いに勝てなくなったことで、焦りがあるのだろうか? 今日の隊長格である分身は、今まで以上に鬼気迫る感じで自分に対して攻撃を仕掛けてくる。だが、こちらにとってここはまだ通過点。前に進まなきゃいけないのだから──押し通らせてもらう以外の結論はない。自分の体を貫こうとしてきた相手の突き攻撃を、自分は右斜め下に引き倒すような形でいなした。
「なっ!?」
当然そうすると、相手は前に倒れるような形で体勢を崩される形となる。そこに当然、自分は刃を相手の首めがけて躊躇することなくレガリオンを振り下ろす。もはや首を狙う剣の振り方など数えきれないほどにやってきた、それゆえ今回も外す事などありえない。ましてや相手は大きく体勢を崩し、とっさに回避行動をとれない状態だったのだから。
これで決着がつく。戦っていた相手の姿が完全に消失したことを確認した後に休息に入る。今日はかなり消耗を抑えた状態で最初の四千体の分身を退けることが出来た。そろそろいい加減八千体を越えたい……八千体を越えてやっと半分なのだから、まだまだこの試練の終わりは先にある。
(だから済まないね……どんな覚悟できたとしても、こちらも負けてあげられないんだ)
心の中で、先ほど戦った相手に詫びる。もう、塔の登頂に使える時間は三か月弱。残り二五〇階もある以上、もうそろそろここを突破したいのだ。掲示板でも、えぐい試練は幾つもあって、足止め喰らっている嘆きの声は常に上がっている。ただ、流石に自分の様な数か月も一か所で足止めされるような試練はないらしいが……
(言い換えれば、自分にはこれだけの試練を課す理由があるともいえるわけだよな。この塔の天辺にいる存在は、自分を呼んだというミリーの言葉を確かめるためにも、登り切りたい所なんだがな)
だが、ここに来て分厚い壁にぶち当たって進めないで居るのが現状。それでもそろそろ打開しなければいけない頃あいだ。だから、先に進ませてもらう。さて、そろそろ休息の時間は終わりだ。いつでも戦闘状態に入れるように精神を集中し始める。
(今まで、休息時間が終わると同時に一気にこちらに向かって津波のように押し押せて潰そうとしてくるのがこの連中のやり方。その津波を押し返さなければならない。やはり最初の一手は、強化オイルと蛇炎オイルによる範囲攻撃だな、これで少しでも足を落とさせる)
休息終了の合図とともに投げられるように、しかし相手にはオイルを投げるつもりでいる事を気が付かれないように注意を払いつつ戦闘開始の合図を待つ。時間が来て、相手が今回も自分を圧し潰そうと突撃してくる。自分も当然素早くオイルを投げたわけなのだが──ここでひとつ、気が付いたことがある。
(なんだ? 少し冷静になって相手の分身達の雰囲気を感じ取ると、焦りと恐怖心を持っているように感じられるぞ? オイルを投げられたから? いや、そうじゃない。何かこう、自分に対して明確な恐怖心を持ち、その恐怖心から焦りが生まれている様に感じ取れる。そして、こうも明確に感じ取れると言う事は、相当だな。なぜそうなったのか、その理由が分からないが──好機かも知れない)
一定の緊張感、恐怖心は持っていても問題はないし上手く操れるのであればプラスにすらなりうる。だが、言うまでもない事だが過度な緊張、焦りはマイナスでしかない。そして、目の前に迫ろうとして炎に焼かれた分身達からは明確に過剰であると感じられる。何とか炎を踏み越えて自分に迫ってきたが──やはりな。
大ぶりの攻撃が多い、それでいて振りが鈍い。まるで一刻も早く倒したいから、後先考えずに一番威力のある攻撃をがむしゃらに放っているだけにしか感じられない。一体この分身達に何があった? 最初の四〇〇〇体ではこんなことはなかったのに……ま、こっちにとっては都合がいい。攻撃を回避して相手の首を刎ねる行動が非常にやりやすい。
(当たればそりゃ大ダメージだろうが……フェイントも連携もろくにできていない中での大振りの一撃が当たるかって話だよな。なんでこうも急に雑な攻撃ばっかりしてくるようになったんだ? 理由はあるはずだが、まあ今は相手の首を刎ね飛ばして数を手早く減らそう。こいつらの動きが本来の動きに戻る前に)
そのうちに本来の動きに戻るだろうからと考えて、そうなる前に減らそうとサクサク倒していったわけなのだが──何と、元に戻ることなく四〇〇〇体との戦いが終わってしまった。そして自分はその理由を知る事になる。
「私の負けです、進んでくださいー!!」「いや、そう言われても訳が分からないんだけど」
説明を要求すると、どうもこの二番目の部隊長役の分身は自分の力を限りなくゼロに近いところまで削って、四〇〇〇体の分身に分配したらしい。これが、急に分身が強くなった理由だったらしい。ただ、この方法は一つ欠点があったらしく──
「私の心理状況がもろに反映されてしまうんです」
と言う事らしい。毎日折れず諦めず何度も向かってくる自分をどうもこの二番目の文体跳躍の分身は化け物と認識してしまったらしく……更に今日の最初の四〇〇〇体&部隊長格との戦いを見て覚えたんだそうだ。隊長格の分身ですら、首を容易く飛ばされるのかと。
「だから、分身達の動きがああも雑になったと」「はい……」
そして当然、力を分け与え他分身達が倒されちゃったので本人はもはや序盤の序盤で出てくるラビットホーンよりも戦闘力が無い状態らしい。極端な話、道に落ちている医師につまずいて転んだだけで半死半生になるレベルなんだとか。そりゃ、戦えるわけもないよね。
「これ、良いんですか?」「良いわよ? 強化された分身を貴方は見事打ち倒して敗北宣言を出させたのだから立派な勝利よ。休息時間と完全回復を与えるわ」
一応念の為に、ここの守護者に確認を取ったがOKとの事。まあ、それでいいのであれば良しとする。こうして自分はこの日初めて、前半の分身八〇〇〇体+隊長格の撃退を達成した。だが、これでやっと前半クリアなのである──後半に何が待っているのか、自分はまだ知らない。
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