とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

文字の大きさ
598 / 753
連載

上手く行かなかったときは

しおりを挟む
 そして、二号機の献身のお陰で、三号機が完成した。今日はこの三号機によるテストを行ったら終了かな……二号機で判明した補強が必要な部分は更迭をより頑丈にした物を少々譲ってもらって補強を施してある。

 更に一番変わった所は杭を打ち出した後の爆炎と衝撃を逃がすための穴を今までとは違って強制的に開くようにした点だ。仕組みが動いて火薬が爆発し杭を打ち出す動作の後にスライドさせて普段は穴に蓋をしている部分をスライドさせる形で動かして、開かせた穴から爆炎と衝撃を逃がす形とした。最初からこうしておけば、とは思わない。こっちの方が製作が手間だし、仕組みも少々面倒になる。

 それでも採用したのは確実に爆炎と衝撃を逃がす必要があるからだ。爆炎や衝撃に逃げ道が無いと全体にダメージが入ってあっという間に壊れるなんてのは想像するまでもない。だからこそ初代や二号機のように動きが不完全では困るのだ。最低でも装填されている杭をすべて打ち出すまでは機構が持ってくれないとな。

 ただ、こんな機構を作ったのは初めてだし、きちんと動くかの自信がない。だからこそのテストなのだが……とにかく火薬と杭をセットし、再び距離を取って発射させる。轟音と共に杭が発射される。

 その直後に機構がスライドして爆炎や衝撃を逃がす──計算だったのだが、どうやら機構が上手く動かなかったようだ。火薬の量を抑えているので自壊こそしなかったが、大きく三号機が飛び跳ねて台座から落ち、地面を転がる。

(あっれー? 計算だと十分動くはずなんだけどな……ちょっとばらして中身を見てみるか)

 少し待ってから三号機をある程度解体すると……スライドする内部の仕組みに幾つものヒビが入っていた。んー? どういうことだこれは? このヒビは間違いなく先ほどの実験に際についた物だろう。制作時にはこんなヒビは無かった……つまり、何らかの理由で仕組みが動かず、その影響がこの穴を普段は塞いでいく仕組みに大きなダメージを与えた、と。

(うーん、普段は穴を塞いでいてもらうためにバネを仕込んだのは確かだけど、そのバネだって先ほどの火薬の爆発によって生まれる力に抵抗できるレベルじゃない。こうやって手で軽く押しだけでちゃんと縮むしなぁ……マズイ、原因が分からないぞ)

 何かに引っかかって、本来想定していた動きが阻害された? いや、こうやって分解して調べているが出来るだけ単純にしているからそう言った突起物はない。機構はあまりにも大雑把に言えば筒だ。その筒の内側にもう一つ薄い筒を入れてそれが普段は穴を塞いでいる役割をしている。

 そして火薬の爆発による衝撃でその内側の筒が動き、筒の穴を解放するという動きをするのだ。この内側の薄い筒は杭の打ち出しと連動していて、杭が打ち出される動きが加わったら動くように作ったはずなのだ。なのにこちらの想定した通りに動かなかった。動かなかったと言う事は設計にミスがあると言う事に他ならない。

 だからその原因を見つけなければ先に進めない。なので最終的には全てのパーツを分解してパーツ一つ一つを確認していったのだが、それでも機構が動かなかった原因は不明のままだった。自分以上の技術者がここにいてくれたのであれば理由が分かるのかもしれないが、残念ながらそんな素晴らしい人材はここにはいない。

(ううーむ、どうした物か。これが動かないとなると三号機を作った意味がなくなってしまう。かといって初代や二号機だと仕組みの動きにムラがあったんだよな。あんな不完全な仕組みでは実戦に使う武器としては失格だし……)

 パーツの三割、特に火薬の爆発を杭に伝えて打ち出すパワーにする部分がかなりのダメージを受けている。これは間違いなく余計な爆炎や衝撃を内部から外へと逃がすことが出来なかったからだ。ダメージを受けた部品は再び作り直さなければ実験を続ける事は出来ない。そして今日はもう作業を行う時間がない。

 なのでとにかく部品一つ一つを何度もじっくり見て、機構が動かなかった理由を探り当てる事しか今日は出来ない。だが……残念ながらこれだ! と思い当たる事はなく、この場を片付けてから引き揚げるしかなかった。工房に戻り、想定した結果が出せなかった事で肩を落としているとストラスが話しかけてきた。

「アースさん、どうした? ずいぶんと疲れているようだけど……」

 なので、ストラスには正直に今日やった事を伝えた。試作機を作って何度も実験したが、まともに動く物は作り出せなかった事を包み隠さず。それを聞いたストラスはこう返答を返してきた。

「そりゃ無茶だ。一日でそこそこの物を作るってのは」「しかし、未知の武器ではなくある程度外見や中身が分かっているモノだからなぁ。それがこうも実際に自分で作るとなると形にならないというのはどうにも」

 ストラスに伝えたように、本当に全くの未知の武器を作るとなれば時間がかかるのは仕方がない。だが、パイルバンカーは様々なアニメ、ゲームなどに登場している武器であり一定の見本が存在しているのだ。それがあってなお進捗がよろしくないというのは問題だろう。

「でも、杭を打ち出せるところまでは行けたんでしょう?」「ああ、うん。そこまでは行けたんですよ。ただ、その後機構内部に残る爆炎や火薬の爆発によって生じて杭を打ち出した後に必要なくなった衝撃などを逃がす機構が必須なんですがそこでどうにも……」

 特に問題となっている部分をストラスに伝えると、ストラスもああ、なるほどと頷いた。

「確かに、パイルバンカーは放った後に派手な爆炎とかが同時に発生するもんなあ。アースさんの目指しているのはまさにあれなんですね」「メカ物のゲーム経験者なら、おなじみの光景ですよね。あれを見た目的な意味でも、実用的な理由でも再現したいんですよ」

 自分がパイルバンカーの動力を火薬式にしたかった理由がそこにある。あの爆炎と共に杭が打ち出され、相手の装甲ごと命まで穿つ。その姿こそがパイルバンカーという武器の魅力と恐ろしさだと思うから。

「でも、気持ちはわかりますよ。作るんならとことん突き詰めたいですよね……でも申し訳ないけどそう言った機構を作った経験がないんで、力になれないです。申し訳ない」「いえ、これは自分の担当する部分ですからね。今日はもう時間が無いから無理ですが、明日はまた試作機を作り直してあれこれ試そうと思っています」

 本当のことを言えば、どういう風に作り直せばいいのかのイメージが全く沸いていない。それでも弱音ばかりを吐いていたら周囲の士気を下げる。ある程度吐きだしたら、再び前を見るようにしないと何をやっても上手く行くはずがない。

「そうそう、俺の方なんですが……親方の話も聞いて新しい合金つくりをやっているんですが完成にはもうしばらくかかりそうです。今日も幾つもの形を試したんですが、目指している物には程遠くて……こっちもはっきりとした成果を出すには時間がかかりそうです。ですから、アースさんも焦る必要はないですよ」

 ──本当のこと半分、気遣い半分かも知れないな、出てきたストラスの言葉は。こちらもあまり進んでいないのだから、気にしなくていいみたいな感じを受けた。やれやれ、気を遣わせてしまったか……自分もまだまだだな。まあどんな物事も実際にやってみれば予想以上の困難という物はつきものか……それに今日はまだ初日。ストラスの言う通り焦る必要はまだない、か。

「そうですね、やっぱり実際に作ってみないと分からない事は多々あるものですし……制作によってデータはとれていますから前進はしていますね。確かに、少々焦り過ぎていたかもしれません」

 焦りは視野を狭めて答えから遠ざかってしまう。それを自分は今までの人生でよく分かっているじゃないか。なのに忘れるとは、まさに迂闊だろう、自分。一日で成果を出そうなんて、思い上がりも良い所だろう。何処かで慢心していたのだろう……自分自身に喝を入れて反省しなければならない。

「それならいいじゃないですか。前進しているなら十分な成果ですよ。こっちも失敗したとはいえ改善点は幾つも見つけていますから前進は間違いなくしています。お互いにこうやって前進していれば、必ず完成させられますよ」

 ストラスの言う通りだ。やれやれ、たぶんストラスは自分より年下だと思うが彼の方が年長者みたいだ。何とも情けない気分になるが、それもまた大事だ。情けないと思うなら反省をして、どうすれば良いのかを考えて、実行すればいい。人は死ぬまで学び続ける物だとは工場長が時々口にする言葉だ。そう、自分もまた学べばいい。

「そうですね、では今日はもう遅いのでそろそろ失礼しますね」「俺もそろそろ落ちます。寝ないと明日が辛いんで」「ははは、そこはまさにお互い同じですね」

 そんな会話を交わしてストラスと別れて宿屋にてログアウト。よし、明日もまた頑張ろう。
しおりを挟む
感想 4,923

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

その支払い、どこから出ていると思ってまして?

ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。 でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!? 国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、 王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。 「愛で国は救えませんわ。 救えるのは――責任と実務能力です。」 金の力で国を支える公爵令嬢の、 爽快ザマァ逆転ストーリー! ⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。 しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。 義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。 度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。 そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて? ※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。