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38:蚊

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「先輩、冒頭ですが失礼します。ほのかパーンチ!」
「ぐほっ!」
「あ、逃げられちゃいました」
「……お前、いきなり何しやがる」
「いや、先輩の横顔に蚊がいたのでつい……本当ですよ?」
「お前は……いい加減にしろ!」
 パチン!
「いひゃい! 両頬をぱっちんしないでください! 女の子ですよ、私」
「やかましい! もし、俺の頬に蚊の死骸がついたら気持ち悪いだろうが! 人として常識的な判断をしろ、愚か者!」
「ううっ……試してみたかったんですよ」
「何をだ?」
「ほら、漫画やアニメでは、人の顔に蚊がいたら、叩くじゃないですか。でも、誰も蚊を仕留めた人はいないんですよね、たぶん。蚊って避けるとき早すぎません?」
「自分で試せ。それと蚊を叩くときは縦に叩いてみろ」
「どうしてですか?」
「蚊の飛び方は独自の空気力学のメカニズムらしくてな、上に飛んでも小さい羽では高度を維持できず、下に落ちるらしい。だから、横から叩くと上下に移動している蚊を仕留めるのは難しいが、縦から叩くと、楽に殺れるらしいぞ」
「なるほど。試してみましょう。都合よく蚊がいました。えいっ!」
 パチン!
 ブゥウウウウウウン~。
「逃げられたな」
「逃げられましたね。どういうことっすかね?」
「伊藤の運動神経がダメってことだろ?」
「ええええっ! 私のせいっすか! そこまで言うのなら、先輩が見本を見せてくださいよ!」
「任せておけ。運良く蚊が現れたな。しかも、壁に止まっている」
「……これってどうやって縦に叩くんですか?」
「まあ、見てろ」
 シュー!
 パタン。
「よし!」
「……今のなんっすか?」
「スプレーだ。別の殺虫剤でなくても制汗スプレーでもなんでもいい。二、三秒かけたら、蚊は地面に落ちる。ただ、死んだわけではない。動きが止まるだけだ。だから……」
 ぶちっ!
「動けないうちに殺すに限る」
「うわ……縦の叩き関係ないっすね。でも、私もお風呂で経験があるんですけど、シャワーの水を蚊に浴びせたら落ちますね」
「羽が濡れて重くて飛べなくなるのかもな。後、蚊は仕留め損ねても、叩いた人の臭いを覚え、危険回避からその人に近寄らないって情報もあるが……俺は刺されたな」
「私もっす。昔、蚊は一度しか血を吸えないって言ってましたけど、今では何度も血を吸って、1mgほど吸ったら吸血を止めるみたいですね。ちなみに、蚊は血が欲しいのではなくて、卵巣を発達させる為にタンパク質を確保してるみたいですね」
「蚊を通じて病原体が体内に入ってくるから、有効な知識を積んで対策していきたいな」
「全くです。ときどき、変なところを刺されるので迷惑なんですよね。あっ、先輩。今、エッチなこと、想像しませんでしたか?」
「するか。いい加減、そのだらしない格好はやめろ。胸元開きっぱなし、スカート丈短すぎ、他にも……」
「あ~あ~聞こえない! 大体、このナイスバディを余すことなくさらけ出しているのは、サービスですから!」
「サービスだと?」
「先輩、知ってます? ヒロインの露出が多くなると人気が上がるって。それに、私くらいじゃないですか。セクシー&キュートな女の子は。ルパン○世で例えるなら、峰○二子さんです。つまり、このお話には必要不可欠な人物なんです! 恥を忍んで体を張って物語に貢献する私、いい仕事してると思いませんか?」
「伊藤……」
「先輩……」
「このドアホ! お前くらいだ! 風紀委員で風紀を乱しているヤツは! 風紀委員にセクシーなんてもの、求めてねえんだよ! お前のはただ可愛く見せるだけに露出してるだけだろうが!」
「ひぃええええ!」
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