4 / 7
第1章
美しき蕾1
しおりを挟む
あれから、百合子は十六歳の美しき娘へと成長を遂げた。街を歩けば、老若男女が振り返るほどその容姿は類い稀なるものであった。それは社交界の華と呼ばれた瑶子よりも美しくもある証だった。透き通るほど白い肌に、花びらのような睫毛、筋の通った小さな鼻。挙げたらきりがないほど、百合子に顔は整っていた。
「百合子、休日だからと言っていつまでも寝ているな」
ピシャリとした仁の声が彼のベッドで寝ていた百合子に降ってきて、百合子は聞こえないように両耳を手で塞いだ。しかし、そんなことをしても軍人である仁には通用しない。仁は百合子を抱き上げて、ソファーに座らせた。そして、手際よくメイドを呼びつけて、百合子の着替えを手伝うようにと言いつけた。
「仁お兄様はこれだから嫌になるのよ」
むっと頬を膨らませて、不満そうに百合子がそう呟いた。百合子が支度を終えると、圭吾と仁が部屋へとやってきた。
しかし、いつもにように二人の仲は険悪だ。
今日も言い合いをしている。
「いいか、仁。お前の言い分は聞かん」
「ふざけるな。俺と貴様はさほど歳が変わらないだろう!!!!」
百合子はまずいと思い、そっと圭吾の腕に抱きついた。そうすると、二人の視線は百合子へと向けられた。ごほんっと仁は咳払いをし、圭吾はいつものように狼狽えていた。
「今日はわたくし、薔薇が見たいわ」
そうわざと言えば、圭吾はなにやらバツが悪そうに視線を泳がせた。こういう時は決まって見合いの時だと百合子は知っているのだ。だから、百合子はいつも決まってこう言うのだ。
「ええ、そうね。お兄様のことはお誘いしないわ」
そう言って、百合子がふんっと言って部屋から出て行った。いつもならば、ここで圭吾がわかった、弟の誰かに行かせると言ってくるのだがそれが今日はない。何かがおかしいと百合子は思い、そっと耳を澄ませた。
(……さすがに百合子を俺たちの嫁にという話だとは本人には言えないだろう)
(……夫が複数となればな、)
(………しかし、清澄も連れ戻すとは)
(……百合子は、元々貴族の娘だから夫は複数認められる。清澄も母親は貴族の出だから、そのためにも必要なんだろう)
百合子は二人の会話を盗み聞きして、ようやく話を理解した。
兄弟たちと一緒にいれることは嬉しいが、百合子が複雑な思いになったのは言うまでもない。
貴族の血を水森家にいれるために、引き取られていずれ兄弟の一人と結婚するのだと百合子自身は思っていたし、そうなれば長男の圭吾を選ぶつもりだった。しかし、勘当された清澄を含めて、五人も夫を持つということがどんなことかと百合子は想像してしまった。
まして、兄弟仲は良好ではないのだ。それが百合子の不安要素であった。
「百合子、休日だからと言っていつまでも寝ているな」
ピシャリとした仁の声が彼のベッドで寝ていた百合子に降ってきて、百合子は聞こえないように両耳を手で塞いだ。しかし、そんなことをしても軍人である仁には通用しない。仁は百合子を抱き上げて、ソファーに座らせた。そして、手際よくメイドを呼びつけて、百合子の着替えを手伝うようにと言いつけた。
「仁お兄様はこれだから嫌になるのよ」
むっと頬を膨らませて、不満そうに百合子がそう呟いた。百合子が支度を終えると、圭吾と仁が部屋へとやってきた。
しかし、いつもにように二人の仲は険悪だ。
今日も言い合いをしている。
「いいか、仁。お前の言い分は聞かん」
「ふざけるな。俺と貴様はさほど歳が変わらないだろう!!!!」
百合子はまずいと思い、そっと圭吾の腕に抱きついた。そうすると、二人の視線は百合子へと向けられた。ごほんっと仁は咳払いをし、圭吾はいつものように狼狽えていた。
「今日はわたくし、薔薇が見たいわ」
そうわざと言えば、圭吾はなにやらバツが悪そうに視線を泳がせた。こういう時は決まって見合いの時だと百合子は知っているのだ。だから、百合子はいつも決まってこう言うのだ。
「ええ、そうね。お兄様のことはお誘いしないわ」
そう言って、百合子がふんっと言って部屋から出て行った。いつもならば、ここで圭吾がわかった、弟の誰かに行かせると言ってくるのだがそれが今日はない。何かがおかしいと百合子は思い、そっと耳を澄ませた。
(……さすがに百合子を俺たちの嫁にという話だとは本人には言えないだろう)
(……夫が複数となればな、)
(………しかし、清澄も連れ戻すとは)
(……百合子は、元々貴族の娘だから夫は複数認められる。清澄も母親は貴族の出だから、そのためにも必要なんだろう)
百合子は二人の会話を盗み聞きして、ようやく話を理解した。
兄弟たちと一緒にいれることは嬉しいが、百合子が複雑な思いになったのは言うまでもない。
貴族の血を水森家にいれるために、引き取られていずれ兄弟の一人と結婚するのだと百合子自身は思っていたし、そうなれば長男の圭吾を選ぶつもりだった。しかし、勘当された清澄を含めて、五人も夫を持つということがどんなことかと百合子は想像してしまった。
まして、兄弟仲は良好ではないのだ。それが百合子の不安要素であった。
0
あなたにおすすめの小説
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる