蒼き将軍の妻

世羅

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序章

秘密の華

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 その日、千南せんなは兄たちに呼び出されて母屋へと足を運んだ。部屋に入るなり、三兄が全員揃っているのだから千南は驚いた。
 座るように促されると、すぐさま卓に、書簡が長兄の郭嘉かくかから差し出された。
 
 
 千南がそれに目を通す前に、次兄の驪修が盛大な溜息を吐き、塞ぎ込んでしまった。それを少し面白がるかのように一番下の兄の嘉徳が声をかける。異様な様子に千南は眉を顰めた。



 書簡の内容に目を通す前に、書簡の署名を見れば『青 孟徳せいもうとく』とあった。
 
 青孟徳といえば、楊家と並ぶ大貴族の直系男子にして、この国の将軍だ。蒼き将軍とも呼ばれ、王の腹心でもある。
 さらには、国一番の美男子と言われて、世の女性を虜にしているという噂がある。署名から、書簡の内容に目を移せば、千南は瞠目した。
 千南の様子を見た郭嘉は穏やかに「そういうことだよ」とだけ言った。


「あの、くそ野郎に千南をやるものか。こんな縁談は俺が阻止する!!!!」

「兄上、王家に嫁に出すよりかは青家に嫁に出した方がよいかと思いますが……兄上が孟徳を嫌いなのはわかりますが、俺は彼とは友人なので賛成します」

「そうだね、嘉徳。千姫を嫁に出すならば、青将軍が一番いいと私も思うんだ。まあ、驪修は誰の名前を出そうが反対するだろうけどね」

 兄たちの会話に千南はついていくことが出来ずに、ただただ兄たちの表情を伺うことしかできない。そして、自分に縁談が来るなんて思ってもみなかった。




 弓をいらせれば、都随一と謳われた美少年の楊雪峰せつほう
 

 それが千南の世に出る姿なのだ。だから、貴族の青年たちが楊家の後妻が産んだのが若君ではなく姫君だったなどと知るはずがないのだ。



 そう、青孟徳を除いては………ーーー。




 まだ千南が幼い頃に、邸にやってきた一番下の兄である嘉徳の友人である青孟徳にその姿をみられてしまったのだ。

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