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本編
怒ってる? 呆れた?
しおりを挟む「今日で1週間、かぁ……」
あの日……ちょっとだけ感傷的になったあの朝の日。あの日以来、ロイさんと話すどころか、会うことすらないまま、1週間が経っていた。
「マリアちゃーん。買取の査定終わったわよ~」
「………………」
「マリアちゃん?」
「あ、はい!マリアです!!」
「知ってるわよ? ボーッとしてどうしたの?最近ずっとそうよね。大丈夫?」
「大丈夫、です。で、なんだっけ?」
「買取の査定終わったわよ」
「あ、はーい」
ロイさん怒ってるんだろうなぁ。話しどころか、姿も見えないとは想定外すぎた。
怒りも通り越して呆れられちゃったのかなぁ……。
「マリアちゃん最近ずっと元気もないけど本当に大丈夫なの?」
「うーん、微妙……?」
「私で良ければ聞くわよ?」
「……ううん、大丈夫。ありがとうエミリーさん」
エミリーさんに聞くのはなんかちがう気がする。
「……そう。わかったわ。もし話したくなったらいつでも聞くから言ってね」
「んー……」
「(まぁ大方、ロイとなんかあったとしか思えないけどね~。先週あのあとどうなったのか聞いてないのよね……。一体何があったのよ?) あ、そういえばそろそろ帰ってくるんじゃない?」
「帰ってくる? 誰が??」
エミリーさんが急によくわからない話を始めた。……何の話?
「ロイとルイス」
「……ふへえっ?」
思わぬところでの名前の登場に、思わずマヌケな声がもれた。
「騎士団の迷宮での訓練、予定通りならそろそろ帰ってくるはずよ~」
キシダンノメイキュウデノクンレン???
「もしかしてマリアちゃん、ロイから聞いてなかった?」
「き、聞いてないですね……。なんですか迷宮で訓練って」
「半年に1回、騎士団員の能力向上と普段の鍛錬がしっかり身についているか、連携して魔物の討伐にあたれるか、とかの確認のために近くにある迷宮に5日くらい潜るのよ」
「………迷宮」
「えぇ。騎士団の訓練中とその前後1週間の計3週間以外は誰でも入れるわよ」
なんでも、訓練1週間前からは魔物の量を増やすためにわざと封鎖、訓練後の1週間は魔物がほぼでてこないから開けてても意味がまるで無いとのことで、入口を封鎖してしまっているらしい。……そして1週間ぶりに開放された迷宮内は、度合いは毎回多少異なるものの、スタンピードが起こっているため でてくる魔物の数が普段より多く、少しの間 普段は初心者からDランクまでの冒険者向けの迷宮が、E・Fランク立ち入り禁止のちょっとだけ難易度のアップした迷宮になってしまうのだとか。それが楽しいと感じる者が一定数いるようで、なんだかんだ解放直後の迷宮内は賑わっているらしい。
ーちなみに余談だがこの世界の迷宮は、倒した魔物は死体が残らず、(人が死ねば死体も迷宮に吸収される)そのかわりドロップアイテムを落とすタイプの迷宮のようだ。
◇ ◇ ◇
……なんだ。ロイさんと会わなかったのって別に 避けられてたわけじゃないんだ。普通に街にいなかったってだけか。……良かった。
……って、帰ってきたからっていつもみたいに話しかけてくれるのかはまた別問題か。
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