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本編
リルの戦闘力の確認 01
しおりを挟む「……えっ? リルの戦闘力の確認?」
「あぁ。鑑定もそのうちしたいが……どれくらい戦えるのか実技での確認は旅に出る前に必要だろ」
「………あ、う、うん……」
地理のお勉強をたっぷりさせられた翌日。
朝ごはんを食べつつ今日の予定を決めようとしたとき、ロイさんが唐突にそう切り出してきた。
ーちなみに今朝も昨日同様、お腹にリルを突撃させてロイさんを半ば強制的に起こした。
「歯切れ悪いな。なんか問題でもあるのか?」
「……ううん」
……問題、大アリだわ。
私だってまだリルの能力どんなもんなのか確認してないのに、いきなりロイさんの前でってのが不安しかない。
ロイさんはリルのこと子狼だと思ってるわけだし。
フェンリルがどうとか以前に、子狼ってどれくらい戦えるのかすら知らないのに……。
「じゃあ、飯食ったら行くか。魔物に遭遇するのが今日の目的だから、ギルドには寄らずに行くぞ」
「うん」
……隙を見てリルに、ほどほどでお願いねって言わなきゃ……。
と思いつつも、ロイさんにお説教される未来しか見えないんだけどね。そしてそれはたぶん間違ってないと思う。
◇ ◇ ◇
「久しぶりだね。ここ来たの」
ー街を出て、南の方角に歩くことおよそ1時間。
私達はちょっとした森の中にいた。
ーここは、私がストリートチルドレンだったときにロイさんがたまに連れてきてくれて、魔物の倒し方とかを教えてくれていた森。
でも今日はそのときよりだいぶ森の中心の方まで来た。
「街から距離あるからな。ここに来るくらいなら迷宮に行ったほうが近い。それに迷宮なら魔物を倒せばドロップ品を落とすしな。経験値稼ぎも、収入面で考えても、迷宮のほうが断然効率が良い。だからこんなところにわざわざ来る冒険者なんかそういない。
……まあそのせいで、かなり早い周期でスタンピード起きるんだけどな」
「そういうときはどうしてるの?」
「ギルドで緊急依頼としてだされて、とりあえず街にいるDランク以上は強制参加になるな」
「D以上だと結構な数にならない?」
「いや、そうでもない。カタルにAやBランク冒険者はいないからな。Cもそんなに多くない」
「そうなんだ」
たしかに言われてみると、依頼ボート見てもAランクはともかく、Bランクの依頼書もほとんど見ないかも。
「きゃん!」
「どうした、リル」
そんな話をしていたら突然、リルがズボンのすそを引っ張ってきた。
「ロイさん。魔物が近づいてきてるみたいだよ。まだ遠いけど。とりあえずこっち向かってきてるっぽい」
「まだだいぶ距離がありそうだな……。リル、姿が見えたら倒せ」
「きゃん!」
……リルにほどほどでって言い聞かせはしたけど、その“ほどほど”が ロイさんをびっくりさせない程度まで抑えられてるといいけど……。大丈夫、かなぁ?
一抹の不安を覚えつつ、魔物が来るのを待った。
ガサガサッ
「! 来た!」
「きゃうん!」
何の魔物が来たのか、目がそれを認識する前……ついでに言えば魔物は悲鳴をあげる暇もなく、息絶えた。
「「………え??」」
一瞬の出来事に私とロイさんは呆然とする他なかった。
しばらく呆然としてようやく、倒したのはエイプっていう猿の魔物(しかもまだ子供)だったことを認識した。
「きゃう~ん!」
“褒めて褒めてー!” とでも言いたげに足元に近寄ってきて顔をこすりつけてくるリル。
えっと……今、何が起きた??
「リル、今のはウィンドカッター だよね?」
「きゃん!」
………え、これがリルの中での“ほどほど”なの??
強すぎない??
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