魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

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第1章 異世界転移編

第6話 守銭奴

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「それで私とセラは異世界に呼ばれる事になったと」


俺様とリティスリティアが戦った事。
悪魔の軍勢が数年後、異世界に侵攻を開始する事。
その悪魔達の侵攻から異世界を守るため俺様が選ばれた事。

そして、魔法を知らない異世界人に魔法を教えるのがめんどくさいので俺様がエメルとセラに全部丸投げすることにした事。

この異世界の草原でリティスリティアと俺様が話した全てを俺様は手下ども2人に話してやった。

すると、どうやら再び俺様の手下に選ばれたという事実に感動してしまったのかエメルはプルプルと震え始めた。

何も泣くことはないだろうに。いや、泣く程の事か。それほどまでに俺様は偉大過ぎる勇者だったということだ。

俺様は感動してプルプルと震えるエメルの小さな肩にポンと手を置いてやる。


「嬉しいのは分かるが、泣くでない。まだ冒険は始まってもいないのだからな」


俺様がそう言ってやるとエメルは震えた声で何かを呟いた。


「……て……」


手? 手を繋いで欲しいという事か?
どうやら短い期間とはいえ俺様と離れ離れになった事がそれほどまでに寂しかったのだろう。
手下の寂しさを和らげてやるのも偉大過ぎる勇者である俺様の務めかもしれない。
そう思い俺がエメルに手を差し出すと、エメルは凄い勢いで俺の手を握りしめ——。


「やっぱてめぇのせいじゃねぇかぁぁぁ! 死ぃねぇぇぇ!」


そうエメルが叫び声を上げた次の瞬間、俺様の身体は宙を舞っていた。
それはちみっこい体を巧みに利用した見事な背負い投げだった。
凶悪なのは投げ終わった瞬間の絶妙なタイミングで手を放した事だろう。
普通の者であれば受け身を取る事すら不可能な程に高い位置まで投げ飛ばされた俺様の視界がグルグルと回る。

ふむ、見事だな。賢者のくせにやるではないか。

流石は俺様と共に魔王を討っただけの事はある。
だが、この程度の投げでは偉大過ぎる勇者である俺様を殺すには足りないな。

俺様は空中でクルクルと数回転してからいとも簡単に足で着地して見せると、リティスリティアとセラの拍手がパチパチと送られた。


「どうした? 反抗期か?」


エメルはちみっこいなりだが、確か俺様よりも1個下の16歳だったはずだ。
普通であれば反抗期は既に終わっているはずなのだが何を反抗することがあるというのだろうか?
俺様がそんな事を思っているとエメルは再度プルプルし始めた。


「わ、私の貯金いくらあったと思ってんのよ。せっかく頑張って溜めたのに……」


どうやら貯金が引き出せなくなったのが我慢できなかったらしい。
俺様程ではないにしても賢者ともなれば金などすぐに使いきれなくなるほど溜まるだろうに。
ちみっこい上にみみっちい奴だ。まぁ知ってたが。


「いくらだ?」


「……王国金貨1万枚くらい」


聞いてはみたものの結構な額だったことに俺様ですら正直ちょっと驚いた。
王都などに住む者が一生働いて得る賃金が王国金貨1000枚ほどだと聞いた事がある。
つまり、エメルは賢者になっての2,3年でその10倍もの金貨を溜めたということだ。
魔王討伐の旅に出た最中もエメルが開発もしくは古代遺跡などで発見解読した魔法の詳細を人間界へと送り、それらの魔法の使用料を取ってかなりの額の金を得ていた事は知っていたがまさかこれほどの程とは思ってもいなかった。
これだけあれば流石の俺様でも1年は遊んで暮らせるだろう。
とはいえちょっぴり驚きはしたもののそんなことで動じる俺様ではないのである。


「よし、決まったな」


「なにがよ?」


「お前の悪魔討伐の成功報酬は金貨10万枚だ。これで文句ないだろう」


これは実にエメルが溜めていた10倍にもなる莫大な金貨だ。
恐らくちょっとした国の年間予算にも匹敵しそうな莫大な報酬にエメルは一瞬にして目を輝かせ始めた。


「本当ね!? 嘘だったら絶対に許さないから!」


「嘘? よく考えてみろ? 金貨10万など俺様がこれから成す事を考えれば端金に過ぎん。仮にその程度の誠意すら見せないのならばその世界の王共は永遠に後悔することになるだろうな」


それに俺様は最低でもその10倍の100万金貨はもらうつもりでいるのでそれから考えればそう大した金額ではないしな。

そんな事を知る由もないエメルは子供のようにはしゃぎ俺の手を取ってその場で回り始めた。
エメルは俺様達がいた世界でも俺様が大国の王達から莫大な報酬を約束させたのを知っていたので俺の言った言葉を信じて疑わないようだった。
もちろん具体的な金額は言っていないのであくまで王共が腰を抜かすような莫大な額という認識しかエメルにはないのだが。

そんな俺様をなぜかリティスリティアが少し呆れたような表情で見ている気がしたが、偉大な俺様はそんな事は気にしないのである。

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