魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

文字の大きさ
8 / 43
第1章 異世界転移編

第8話 第1異世界人の戦い

しおりを挟む
「おい、セラ」


「なんでしょう? アッシュ様」


「なぜ早く言わん。アレはいわゆるピンチというやつではないか?」


俺様とセラが見つめる先には馬車と1人の人間がいて、今まさに複数の狼の魔獣に囲まれている所だった。
俺様の目から見てもピンチ——いや、最早絶体絶命の状況に思える。


「そう思うなら助けてあげなさいよ」


冷静に分析していた俺様にエメルがそんな非難めいた声を上げるが、そう言うならお前が行けよと思った所で俺様はとある事実に気付く。


ん? アレは魔獣じゃないな。只の狼ではないか。


よくよく観察していると馬車を囲んでいたのは魔獣ではなく只の狼だった。
異世界の狼がどういうものかよく分からないが、魔獣に見られる身体的特徴も魔力反応もなく、体調も2mにも満たない正真正銘只の狼だった。

セラとエメルがすぐに助けに駆け付けなかったのはそれが理由だったのだろう。
魔獣ならともかく只の狼程度なら魔法を覚えたての子供でも冷静に対処すれば簡単に撃退する事が可能だ。

今、狼に囲まれている男は30代くらいの青年に見えるので、一人旅に慣れているのなら3,4匹程度の狼ならばそこまで対処は難しくないように思える。
仮に一人旅に慣れておらず戦闘が得意でないのなら冒険者の一人くらいは雇うのが常識なので対処が難しいのならすぐに冒険者が出てくるはずだ。

3人とも同じことを思ったのかエメルが言った言葉を最後に一般的な異世界人の戦闘力がどの程度のものか確認するため俺様達3人は狼に囲まれている青年の事を遠目からじっくりと眺めていた。


「冒険者は雇っていないようだな」


いつまで経っても馬車の荷台から誰も出てこないので俺様はそう判断し、じりじりと青年に迫る狼を見て、青年は狼を引き付けて一気にケリをつける作戦なのかと俺様は予想した。
すると、いつの間にかその場で体育座りをしているエメルが俺様の意見に口を挟んできた。


「あれ? 確か冒険者っていないんじゃなかったっけ?」


エメルのそんな言葉に足を前に投げ出した状態で座り込んだセラが答える。


「そういえばティアちゃんがそんなことを言っていましたねー。でも傭兵か用心棒はいるんじゃないですかー? 雇っていないという事はきっと彼はそれなりに戦闘の心得があるのだと思いますよー」


「だろうな」


狼の3,4匹程度に勝てない程度の実力で魔獣溢れる街の外に出るなど自殺志願者かスリル中毒のギャンブラーくらいしかありえない。


「あっ、剣を持ちましたね」


青年はごそごそと荷台を漁ったかと思うと剣を取り出し、狼へと剣を向け始めた。


「見たことのない構えだな。この世界の流派か? 体が震えているように見えるのは斬り込むタイミングを伺うためか? そんな無駄な事をせんで狼如きさっさと切り殺せばいいものを」


「あっ、斬り込んだ! ってアレ? 避けられたわよ?」


「牽制だろ? 太刀筋うんぬんの前にのろ過ぎる」


その後も青年はブンブンと剣を振り回すが狼に一太刀も浴びせられず、ただ時間だけが過ぎていった。


「狼如きにどんだけ時間かけてんだ。いい加減しろよ」


いい加減俺様の我慢の限界が訪れようとしていたその時、セラが青年に向けて大きな声で声援を送った。


「お兄さん、頑張ってー!」


そんなセラの応援に反応したのか青年がこちらを振り向いた。


「あ、バカ」


俺様が呟いたとほぼ同時に、狼たちは一斉に青年へと襲い掛かる。


「ぎゃぁぁぁー! 助けてぇぇぇー!」


3匹の狼に覆いかぶさられた青年がそう叫んだ瞬間、俺様達はようやく青年がピンチだった事に気付いたのだった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...