魔王討伐後のゴージャスかつ優雅な生活を邪魔された。俺様一人異世界転移させられるのもなんか癪なので他の奴らも異世界転移に巻き込むことにする

コメッコ

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第2章 ドラゴン襲来編

第40話 恋バナ的な

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私は父上直属の諜報文官であるガルドの運転で親衛隊騎士のエミュラ、アイル、カレンと共にルベリ村に向かい高速馬車を走らせていました。



王族である私も高速馬車を利用したのはこれが初めてです。

普通の馬車はただ馬を1頭もしくは2頭つなげて引くのですが、高速馬車には天馬と呼ばれる希少な品種の馬が2頭使われています。



見た目は普通の馬により一回り大きく、背には小さな羽らしきものが1対生えていていますが、空は飛べません。

天馬は実際に存在し、本当に空も飛べる神獣天馬を遥か昔の人間が品種改良して生まれた種らしくその馬力は普通の馬の比ではないそうですが、その分生殖力はかなり弱く、食費もかなりかかるので一般にはほとんど普及していないみたいです。

ドレアス王国はそんな天馬を10頭ほど保有していて、その半数以上は王都の外れの小さな牧場で飼育されています。





「それにしてもなんでエリシア様に白羽の矢が立ったんでしょうかね?」





普通の馬車より少し広い室内でふと思ったのかエミュラがそんな事を言いました。

やはりみんな思う事は同じようですが、そんな事は私が聞きたいくらいです。





「アッシュがやってきたあの場にいた者の心証が悪すぎるからではないですか? ベルゼス様や陛下はそうでもないかもしれませんが、エンデ様やルシード殿下は最悪でしょう」





言われてみれば確かにそれはあるかもしれません。

エンデ様はそのアッシュという者を邪教徒呼ばわりして散々罵ったそうですし、兄上は印象最悪な上にそもそもそれ以前の問題です。

父上とベルゼス様は比較的友好的な対応を取ったと聞きましたが、それでも一度完全に決裂した交渉の場にいた悪い印象は確かに拭いきれるものではないのかもしれません。

それならば少し拙くとも、真摯に交渉が行えそうな私の方がまだ勝算が高いと父上は判断したのでしょう。





「ふふふ、皆さん分かっていませんねー」





エミュラとカレンと私が納得し、次の話題に移ろうかと思っていると、アイラは意味深に笑みを浮かべながらそんなことを言い始めました。





「なにがおかしいのです? アイル」





「だって陛下は仰っていたではありませんかー」





カレンの問いにますますアイルの笑みは濃くなりました。



もしかして私達は父上が言っていた重要なメッセージを聞き逃していたのかもしれません。

交渉の場に着く前にそれに気付けたのは不幸中の幸いです。



絶対に失敗してはならない交渉を父上からのメッセージを聞き逃していたせいで失敗するなどあってはならないことですから。



普段はあまり真面目なことを言わないアイルに私が感心しながら言葉を待っていると、アイルの口から出た言葉は斜め上を行くものでした。





「どんな手段を使っても構わないから絶対にアッシュを口説き落とせ、と」





そう言い終わった後、アイラは何を想像したのか「きゃー!」と黄色い声を上げながら、顔を両手で塞ぎ体をジタバタと左右に激しく揺らし始めました。





「……はぁ?」





私の言葉を代弁するかのようにカレンが冷たい視線をジタバタしているアイルへと向けています。

そんなカレンの姿がアイルには見えなかったのか自信たっぷりに続けます。





「陛下はアッシュ様をエリシア様の将来の伴侶としてお迎えするつもりなのですよ。そしてエリシア様かアッシュ様を次期国王になさるのでしょう。どちらにしても異例な王位継承になるでしょうけど、ドラゴン撃退という歴史的偉業をもって民を納得させるおつもりなのですよ。そうすればあのルシード殿下に王位を継がせずに済みますし、ドレアスも救えてみんなハッピーです」





「み、みんなハッピーって……」





あの兄上にドレアスの王を継がせずに済むという魅力的な言葉に一瞬納得しかけてしまった私ですが、直系男子の継承問題とか民の納得以前に大きな問題があるのです。





「わ、私の意志はどうなります?」





「……えっ? 嫌なのですか?」





まるで予想していなかったとばかりにアイルは目を見開いて私を見返してきました。



なんで私が嫌ではないと思ったのか逆に聞き返したいくらいです。

確かに女の王族である私に自由恋愛がそこまで認められていないのは理解していますが、仮にも私はドレアスの第一王女なのでかなり身分がしっかりとした思想などにも問題のない方を父上はお選びになられるでしょう。





「そんなもん嫌に決まってるじゃない。レイ様や王国の兵1000人をぶっ飛ばして王宮に攻め入った野蛮人ですよ。そんな人がエリシア様を幸せにできるはずないじゃない」





そんな私の思いを代弁したエミュラが呆れた顔でアイラを見返しました。



そうです。私は別に心躍らせてくれる殿方との甘酸っぱい大恋愛までは期待していませんが、それでも人並みの幸せは欲しいのです。

貴族としての格とかそういうのはそこまで気にはしませんが、せめて思想思考がまともな方を希望します。





「えー、有望株だと思うのですけど。レイ様以上に強くてピンクエンパールを所持しているようなお金持ちなのに」





確かにそれだけを聞けば有望株に思えなくもないですが、それを全てぶち壊すほどに行いが酷いのです。



交渉ついでに挨拶しに来たという訳の分からない理由でレイや王国の兵1000を倒して、父上に暴言を吐いた人がまともな感性の持ち主だとは私にはどうしても思えません。



武力や家柄、資金力だけが男性の魅力ではないと私は兄上で嫌と言うほど思い知らされていますから。





「ドレアスの命運がかかっている大事な交渉の前だというのにそんなありえない話で私を混乱させないでください」





「えー、結構結構いい線いっていると思うのですけど」





しつこくそんな妄言を続けようとするアイルを私達3人で窘め、今後の行動を確認したりしながら私達はルベリ村を目指し馬車を更に走らせました。

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